翌朝。
私は勇気を出して教室の扉の取手に手をかけた。
教室に入るなり、すぐさま花菜ちゃんのところへ向かう。
きらきらとした目で言うと、抱きついた。
ニッコニコの笑顔で言われると何も言い返せない。
それにしても、眼鏡がないのはなかなか慣れないものだ。
今まで「眼鏡が本体です」という程だったから、不思議な感じがする。
そんな事を考えていると…
背中から声がかかった。
……加賀美さんだ。
どきりとして、スカートをぎゅっと掴む。
緊張して振り返れない。
ギクッとなる。
花菜ちゃんは、躊躇することなく
と、笑顔で問う。
私は仕方なく頷いた。
不思議そうにする加賀美さんを見て、花菜ちゃんはもう、と言いながら私を振り向かせた。
振り返った瞬間、加賀美さんとバチッと目が合う。
加賀美さんは驚いた顔を一瞬浮かべ、すぐさま笑顔になった。
少し照れ笑いしている加賀美さんを見て、こちらも恥ずかしくなってしまう。
思わず顔を覆ってしまった。
いきなり真っ暗な視界が明るくなった。
と、同時に加賀美さんの顔が入り込む。
思わず仰け反ってしまった。
それにしても、加賀美さんの顔が近い。
私は、顔がのぼせたのではないかと錯覚する程熱くなっていた。
加賀美さんの少しひんやりした細い手が頬を触った。
か、顔が近い───。
後ろから塩野くんがグイッと加賀美さんを引っ張って離した。
加賀美さんは初め何も分かっていない顔をしていたが…段々自分のした事を理解したのか、手で顔を覆った。
耳が真っ赤だ。
それを見て、私も再び顔を覆った。
お昼を食べながら花菜は悲痛な声を上げる。
隣に座る塩野がまぁまぁ、と言いながらチョコ菓子を花菜に差し出した。
花菜はチョコ菓子を口に放り投げ、ベンチの上に体育座りで丸くなった。
花菜は慌てて足を下ろした。
実は先程、恋に進展がないと相談した時に、あなたの下の名前が2人でお昼を食べてみたらどうかと勧めてくれたのだ。
あなたの下の名前は加賀美くんとの恋を内気な性格ながら一生懸命頑張っているのだ。
それなら、自分が頑張らなくてどうする。
塩野の声が聞こえ、ハッと我に返る。
花菜がキラキラと目を輝かせながら話すと、塩野はハハハッと笑った。
塩野が空を見上げる。
花菜は食べ終わったお昼のサンドイッチの袋を握りしめ、
塩野をちらりと見る。
少し照れているのだろうか、耳が赤い。
そう言うと、塩野は花菜の顔を覗き込み、
と笑った。
顔を離すと、ベンチから立ち上がり歩き始めた。
花菜は慌てて追いかけた。
──でも…塩野、これって期待していいやつ?
それならちょっとだけ、期待してるから。














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!