…ツムル先生から運ぶか。
なんだかんだ言ってこのヒトにはいろいろお世話になってるし…
私は彼を起こさないよう慎重に背中に乗せた
耳のすぐ近くから静かな寝息が聞こえる
寮を歩き始めて数分。
前に紹介してもらった通路を通り、ツムル先生の部屋の前まで来る
私はそっと音が出ないようにドアを開けた
部屋を見回し、思わず声が出る
…いや、男の子らしくて良いじゃないか。
うん。
なんとか足場を探しつつ私はベッドに彼を横にさせた
気持ちよさそうに寝る彼の顔を見る
家系能力、というやつのせいで見たくもないものが見えてしまう。
そんな状態で生きてきて苦労もしているだろうに、余所者の私を気遣ってくれている
優しい人から死んでいく。
構成員も例外ではない。
私達は構成員である前に列記とした人間だ
脆く、弱い。助け合わないとすぐ死ぬような存在
これ以上優しい人が苦しむのは私としても見たくない
私は彼の顔にかかっていた横髪をそっと除けた
手を掴まれたのは瞬きをする間だった
私は目を見張った
目の前に映るのは一筋の涙を流しているツムル先生。
飲み会でも、他の先生の前でも見せなかった弱々しい顔
気づかれない程度にため息をつき、私はそっと離れようとした
離れようと立ち上がった瞬間、掴まれていた手が彼の方に引き寄せられ、私はバランスを崩した
そっと目を開けるとベッドの奥にあったはずの壁。
ちらりと横に目線を移せば朱色の髪。
コイツ絶対酒癖悪いタイプだ
…どうしたものか…。
相変わらず手を握る力は強いままだし…
いっその事叩き起こす?
いや、乱暴がすぎる。それこそ恩を仇で返すようなものか
…それに、泣いてる顔だったし…。
私は空いていた手をそっと彼の頭にのばして撫でた
意外とふわふわで触り心地が良い
しばらく経ってやっと彼の握る力が弱くなってきた
手を離せるのを確認すると、私はゆっくり彼から離れて部屋を出た
体勢がきつかったせいで体が少し痛い…
大広間へ戻ると、また見たくもない惨状が目に入る
私は一人、また一人と部屋へ運んだ
このヒトだけ。
𝐍𝐞𝐱𝐭













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。