ドアを開けて中に入って来たヴィアル。
…何をしたいんだよ。
だって、俺は…
ただ嘘をついてただけなら良かった。謝れば済んだんだ。先代に騙されたんだって…でも、でも俺は本当に勇者だったんだ。
俺は民衆の前に立つたびに、さも最初からそうであったように振る舞わないといけないんだ。
…そんなの苦しい。
ヴィアルはそれだけ言って、去って行った。
…そんな期待するような目で、俺を見ないでくれ…
入れ替わりに、ロウ(と言ったか)が、部屋の中へと入って来た。
その声色には、俺を嗜めるその意だけでなく、どこか諦めたような、羨むような気持ちが滲んでいた気がした。
誰もいなくなっていた。
何も考えたくなかった。
ただ、ずっと雨に打たれているみたいに、虚しさが漂っていた。
隣に現れたことに気づかなかった。
視線の先には、小さな妖精のように金色の髪を靡かせる、少女の姿。
これが…グロンド?
手を掴まれ、ぐいぐいと引っ張られる。
半ば無理矢理に、俺はグロンドに連れ出された。

その時だった。
いつの間にか忍び寄っていた、一人の男の姿。
紅い目が、捕食者の顔をしていた。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。