第42話

孤独の世界から連れ出して
4
2026/02/06 09:00 更新
ヴィアル
フィラズ
 ドアを開けて中に入って来たヴィアル。
 …何をしたいんだよ。
 だって、俺は…

 ただ嘘をついてただけなら良かった。謝れば済んだんだ。先代に騙されたんだって…でも、でも俺は本当に勇者だったんだ。
 俺は民衆の前に立つたびに、さも最初からそうであったように振る舞わないといけないんだ。
 …そんなの苦しい。
ヴィアル
俺も知らなかったから、言える立場じゃねぇけど…でも、フィラズには立ち上がって、一緒に厄災を倒して欲しいんだ
ヴィアル
過去の二人がそうだったように
 ヴィアルはそれだけ言って、去って行った。
 …そんな期待するような目で、俺を見ないでくれ…
ロウ
…あのさ
フィラズ
 入れ替わりに、ロウ(と言ったか)が、部屋の中へと入って来た。
ロウ
絶対とは言わないけど、あなたに協力してほしい。私は勇者と一緒にいるだけで…勇者では、ないから
 その声色には、俺を嗜めるその意だけでなく、どこか諦めたような、羨むような気持ちが滲んでいた気がした。
ロウ
誰が一番苦しいかなんて、決めることじゃないけど…
ロウ
みんな、苦しいよ
 誰もいなくなっていた。
 何も考えたくなかった。
 ただ、ずっと雨に打たれているみたいに、虚しさが漂っていた。
???
君がフィラズくん?
 隣に現れたことに気づかなかった。
フィラズ
…!?
???
驚かないで。ボクはグロンド
 視線の先には、小さな妖精のように金色の髪を靡かせる、少女の姿。
 これが…グロンド?
グロンド
ちょっとついて来て欲しいんだよね。来て来て
フィラズ
ちょっ、え?
 手を掴まれ、ぐいぐいと引っ張られる。
グロンド
ボク、みんなとお話ししたいの。みんなと旅したいの!みんなって、フィラくんもだから
フィラズ
でも、俺…
グロンド
良いから、早く!!
 半ば無理矢理に、俺はグロンドに連れ出された。
ヴィアル
お、来たな
グロンド
ヴィアくんロウちゃん!連れて来たよ〜
ロウ
まさか、本当にグロンドちゃんが連れ出しちゃうなんて…
グロンド
だってボク、早くみんなと旅したいもん!それに、ウィントお兄ちゃんも早く助けないとね
ヴィアル
確かに、ウィント助けてやんねぇとな
ロウ
ってことは、北の…風の里?
フィラズ
話早いって…
 その時だった。
???
君たちが、勇者様一行…かな?
ヴィアル
!?
 いつの間にか忍び寄っていた、一人の男の姿。
???
少し話があるんだ。もちろん、取って食おうなんてわけじゃないよ
 紅い目が、捕食者の顔をしていた。

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