阿部side
家のチャイムが鳴る
宅急便かな、佐久間が受け取ってくれるはず
そんなことを考えながら気にせず指示を出していると
1階からドスンッという音がして地面が揺れた
続けて佐久間の「あべちゃん」と俺を呼ぶ声が聞こえる
どこか上擦っていた気がした
イヤホンをしていても聞こえるほどの大きな音
佐久間の声
どちらも俺の不安を煽ぐには十分で、
何かあったのかと心配になり佐久間の名前を呼ぶ
返事がないことに焦って
転げ落ちそうになりながら1階まで急いで駆け下りる
虫の知らせのような嫌な予感が頭をよぎるのを必死に振り払いながら
何もありませんように
水こぼしちゃったんだ
笑いながらそう言う佐久間がいますように
そんな希望はすぐに打ち砕かれた
佐久間が何人もの男に囲まれて手足を縛られていたからだ
その体には何かで刺されたような跡があって血が流れている
意識がない、重症だ
襲われた? なぜ?
俺はどうしたらいい?佐久間、
無線の先の違和感に気づいたのかふっかの声が聞こえる
軽いパニックになっている俺
頭が真っ白になって言葉が出てこない
恐怖で動けない
体が動かせない
近づいてくる男
震える唇で助けを求めようとしたその時、
男によって無線がブチッと取られた
元々、非戦闘要員で能力も攻撃に特化したものでない俺
大人しくついて行くしか選択肢がない
男の言う事に従うしかない自分に悔しくなった
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。