ツアーが終わって。
少しだけ、みんなの空気が変わった。
忙しいことに変わりはない。
レコーディングも。
収録も。
打ち合わせも。
毎日はあっという間に過ぎていく。
でも。
以前とは違った。
仁人くんが。
ちゃんと言葉にしてくれるようになったから。
「今日帰り遅くなる。」
「でも終わったら連絡する。」
「明日少しだけでも会いたい。」
そんな何気ない言葉が。
私には嬉しかった。
________
「あなた。」
「ん?」
休日。
仁人くんの部屋。
キッチンで簡単な料理をしていると、後ろから声がした。
振り返る。
「どうしたの?」
「いや。」
仁人くんは少し笑う。
「なんか。」
「不思議だなって。」
「何が?」
「ここ。」
部屋を見渡す。
「前まで俺一人の部屋だったのに。」
「今は普通にあなたのものある。」
確かに。
洗面台には私の歯ブラシ。
クローゼットには少しだけ私の服。
棚には。
黄色のツイードジャケットを着たうさぎ。
「もう半分住んでるみたい。」
「半同棲だもんね。」
そう言うと。
仁人くんは嬉しそうに笑った。
「うん。」
「でも。」
「もっと一緒にいたい。」
その言葉に。
胸が温かくなる。











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。