第3話

 【 第1章 】 懐香・凋落
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2026/03/23 11:00 更新


どんな賛美でも、あなたを語り尽くせない。



______ それは、懐香くれのおも、即ちフェンネルの花言葉。

あの夏はひときわ暑かった。湿気がむわっと身体を包み込む、不快な感触が消えなかった。

けれど酷暑に強いこの花は、あの年の高専の裏庭の隅っこにも、黄色の小さな花を溢れさせてたんだ。

雄くんとそれを見つけた時、妹が喜ぶよと笑ってた。結局、その日の写真は彼女に見せられたのかな。


五条あなた
( あの、夏の幻の思い出だけは )


どんな花だって、時期を過ぎれば枯れ落ちる。

種を繋いだ植物達は巡り巡って新しい花を咲かせるけれど、それは去年までの花とは全く別物だ。

人が産んだ子は、親と同じじゃないんだから。同じ花なんて存在しないし花の栄華は長くない。

なのに、香りが落ちる、なんて花の宿命を知らずに、甘く爽やかなフェンネルの香りは今でも燻っている。


そう。これはもう2度と戻れない、青い日々の物語。



五条あなた
( もし、あんな幸せな夢を見ずに、いられたのなら )



思い出という名のこの結晶に縋ることはなかったよ。

ねぇ、" 最強 " な私のお兄ちゃん。
それはお兄ちゃんも一緒でしょ。



  【第1章】懐香ういきょう凋落ちょうらく




喧嘩後のぎくしゃくとした2人の距離感と、強がる夢主ちゃん、やきもきする周り … 細かな感情の移り変わりが繊細で、帰国後の乙骨くんの柔らかな雰囲気とやはり強がる夢主ちゃんとの掛け合いも最高な作品です✨
交換宣伝ありがとうございました♪

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