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第43話

第三十六の怪 怪異の気を逸らす方法
72
2026/03/26 09:51 更新







─3日前




あなた
はぁ〜


手元にある部品を無造作にぐちゃぐちゃにした

そして机の隅に置かれているナイフに視線を注ぐ


さすがに一ヶ月以内に拳銃を製造することは無茶だと
あの腹黒男でも理解しているらしい

祓い家の息子が渡すものだ
通用はするのだろう

しかし、刺した時に感じる感触は
人間と変わらないのだろうか
あるいは何も感じないのだろうか






…人を刺す感触など知りたくない






急いでトイレを飛び出した私は行くあてもなく
先輩に見つかりたくない一心で走り出した






実は
一ヶ月以内に七番を殺す
というミッションを与えられた時以来
先輩には会っていない

自分の意思が
固まっていない状態で会いたくないからだ









あなた
どこへ行こう…

とりあえず校舎の外へ出てきたが
ここからの策が思いつかない








隠れられる場所を探し回っていると
校舎の裏へと抜けられる小道を見つけることが出来た

すぐさま小道に入り
カニ歩きで進んでいく








 

           グイッ
あなた
ッ!?


       

花子くん
花子くん
しー!
あなた
七番
あなた
なんで

七番は、
小道の途中途中ではみ出ている校舎の柱の影に隠れていた






私を引き寄せたまま
七番は言葉を続ける
花子くん
花子くん
 あなたも源輝から逃げてるんでしょ?
あなた
まぁ…
花子くん
花子くん
じゃー仲間だね
あなた
・・・

『仲間』
という
七番の言葉に
思わず口をつぐんでしまう


そんな私を見て、
七番は小道の奥を指差しながら



花子くん
花子くん
こっち
花子くん
花子くん
良いとこ知ってるから着いてきて

と手招きした



あなた
…ここは?

花子くん
花子くん
園芸部が世話している実習園

あなた
あぁ…なるほど…
あなた
本当に安全なのか?
花子くん
花子くん
んー
花子くん
花子くん
たぶん?
あなた
まぁ
あなた
見つかったらその時は諦める
私が自分都合で逃げているだけだ
会ったからといって
特別何かが起こることはないだろう
花子くん
花子くん
ふーん?

花子くん
花子くん
まーいいや
花子くん
花子くん
とりあえず〜あそこの石段に座ろ
花子くん
花子くん
疲れたや


あなた
怪異でも疲れるんだな

花子くん
花子くん
あったりまえじゃん
花子くん
花子くん
怪異を何だと思ってんだよ
あなた
バケモノ
花子くん
花子くん
ヒドーイ


軽口を叩きながら
二人並んで石段に座った
逃亡中とは思えないくらい空気は穏やかだった

           
            ・
            ・
            ・














花子くん
花子くん
そーいえば

花子くん
花子くん
あなたは

花子くん
花子くん
なんで源輝から逃げてんの?
鋭い質問に
心臓が縮み上がる

適当に言って誤魔化そう
あなた
…しょうもないことで怒らせたんだよ
花子くん
花子くん
だと思った
あなた
はぁ?


ふざけんな、と言い
七番の頭を軽く小突く
花子くん
花子くん
痛いって、ごめんってば笑
ケラケラと七番は笑った


─ふと






こいつは私のことをどう思っているんだろう





なんていう
 質問が思い浮かんだ




面倒臭い質問だな、と我ながら思う
ただ
冗談を言って、楽しそうに笑っているこいつを見たら
そんな疑問を抱かずにはいられなかった




 





あなた
七番

あなた
お前は、私のことをどう思ってる?

不思議と





この質問を投げかけようか投げかけないか





迷わなかった
花子くん
花子くん
え!?

花子くん
花子くん
あなた、俺に告白してほしいの?


あなた
んなわけあるか、馬鹿

花子くん
花子くん
うそうそ笑

花子くん
花子くん
うーん






花子くん
花子くん
俺は、怪異だから








花子くん
花子くん
人間に情とかかけられないんだ












花子くん
花子くん
しょーじき
花子くん
花子くん
特に何も思ってないかな


花子くん
花子くん
もしあなたが死ぬことがあっても












花子くん
花子くん
何の感情も湧かないと思うよ











あなた
…ぁ


  



所詮怪異だ

私たち人間に情をかけられないことくらい
分かっていたはずだろ

なのに
期待なんかして

自分の
甘さが嫌になる








頭の中でぐるぐると考えを巡らしているうちに
まるで合図のように
プツッと何かが切れた音がした




あなた
…花子


花子くん
花子くん
え?


           バッ
花子くん
花子くん
わっ
胸ぐらを掴み、目を逸らさぬまま、ぐっと顔を近づけた

花子くん
花子くん
なになに
花子くん
花子くん
どーしたn



顔を傾かせ
唇が触れそうな距離まで顔を寄せる









間も無くして








七番の口から







真っ赤な液体が流れ出た








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