第29話

簪
2,528
2025/03/13 15:56 更新
朝
鈴(リン)
……
鈴(リン)
(…時間って早いな)
身支度をして、執務室に行く
鈴(リン)
おはようございます
壬氏(ジンシ)
おはよう、元気がない様だが大丈夫か
鈴(リン)
大丈夫ですよ
壬氏(ジンシ)
そうか、なら良いんだが
鈴(リン)
今日は私が見回りをしてもいいですか?
壬氏(ジンシ)
…珍しいな
鈴(リン)
ダメなら別に良いのです
壬氏(ジンシ)
いや、別に見回りをしてもいいが、何かあるのか?
鈴(リン)
いえ、何も
ただの気分です
壬氏(ジンシ)
気分…
鈴(リン)
では私は行ってきます
壬氏(ジンシ)
あぁ…気をつけてな


高順(ガオシュン)
…何かあるのでしょうか
壬氏(ジンシ)
何もなければ良いんだが…
鈴(リン)
(良かった、許可は貰えた
後は挨拶だけ)
鈴(リン)
(まずは、翡翠宮と水晶宮、それから外廷の人達)
鈴(リン)
(…今日は歩き回るな)





翡翠宮
鈴(リン)
ごきげんよう、玉葉妃
玉葉妃(ギョクヨウヒ)
ごきげんよう、今日はどのような用件で?
鈴(リン)
今日、私はこの宮を去りますので挨拶を
玉葉妃(ギョクヨウヒ)
あら、また寂しくなってしまうわね
鈴(リン)
あと、壬氏様にはご内密にしていただけますか?
玉葉妃(ギョクヨウヒ)
良いけど…それは何で?
鈴(リン)
去る事を知ったら、いろんな手で止まらせてくるでしょうから
玉葉妃(ギョクヨウヒ)
ふふっ、確かにあの子は止めるわね
分かったわ、さようなら
鈴(リン)
お元気で過ごせますよう願っております、ではさようなら





玉葉妃(ギョクヨウヒ)
(「止める」って事は大切にされてるって事、彼は分かってるかしら…)
水晶宮
鈴(リン)
ごきげんよう、梨花妃
梨花妃(リファヒ)
ごきげんよう鈴殿
今日はどのようなご用件で?
鈴(リン)
今日、私はこの宮を去りますので挨拶に
梨花妃(リファヒ)
まぁ…それは何故?
鈴(リン)
…少し、疲れてしまったのです
梨花妃(リファヒ)
…ここは人によっては窮屈だものね
鈴(リン)
あと、この件は壬氏様にはご内密にしていただけますか?
梨花妃(リファヒ)
えぇ、分かったわ
今までご苦労でした
鈴(リン)
…貴方様も、元気に過ごせますよう願っております
鈴(リン)
では、さようなら


梨花妃(リファヒ)
(…壬氏殿は寂しくなるだろうな)
馬閃様、水蓮様に挨拶をして、琴を貸してくれた倉庫番の人に琴を返して、自室に戻った
鈴(リン)
(化粧、妓楼で使ってた服、大きい羽衣、後は…)



執務室
宦官
失礼します
壬氏(ジンシ)
?どうした
宦官
中級妃であろう方から壬氏様にと簪を貰いまして
壬氏(ジンシ)
……(引)
引きながら、宦官が机に置いた簪を見ると、なにやら見覚えがあった
壬氏(ジンシ)
……!!
宦官
では、これで失礼します
壬氏(ジンシ)
高順、探しに行くぞ
高順(ガオシュン)
はい
外に出て、鈴の自室に行ってみる
壬氏(ジンシ)
鈴、居るか!
扉を開けると綺麗に整頓されて、琴や鈴の持ち物はなかった
壬氏(ジンシ)
……
唖然としてると、高順が肩を叩いた
高順(ガオシュン)
壬氏様!正門の所に人だかりが…!
壬氏(ジンシ)
分かった!
周りはざわめいてて、自分はその中に居る
中級妃
中級妃…?布で顔が良く見えないわ
侍女
中級妃にあんな人居たでしょうか…
宦官
何か見た事あるような顔立ちだけど分からんな
宦官
俺は何も分からんわ
鈴(リン)
(中級妃のふりして出てっても、人だかりは出来るのか…
宦官の姿だったらこじんまりと終わるだろうな)
鈴(リン)
(でも宦官姿はもう捨てたんだ
これで良い)
言い聞かせながら歩いてると、後ろから腕を掴まれた
壬氏(ジンシ)
鈴!!
鈴(リン)
……!
鈴(リン)
(…予想よりも早いな)
鈴(リン)
…人違いです
壬氏(ジンシ)
なっ、人違いなんかじゃ…
腕を振り払って、急ぎ足で門に向かう
壬氏(ジンシ)
……
鈴(リン)
(…あんな顔は見たくなかったから秘密裏にやってたのに…)
門の外に待ってた馬車に乗り込んで、後宮から去る
馬車内
梅梅(メイメイ)
お疲れ様
鈴(リン)
本当に姉様が居るとは…
梅梅(メイメイ)
ふふっ…後宮はどうだった?
鈴(リン)
…窮屈でしたが、楽しかったですよ
梅梅(メイメイ)
そう、楽しかったなら良かった
鈴(リン)
(…本当は窮屈なんて思ってない、ただただ楽しかった)
窓から後宮内を見ると、さっきまでの人だかりと、寂しそうな壬氏様の後ろ姿があった
鈴(リン)
(……)
梅梅(メイメイ)
…あれが手紙にあった上司?
鈴(リン)
はい、良く覚えてますね
梅梅(メイメイ)
だって鈴がその人の話を良く書くんだもの、覚えるわ
鈴(リン)
そんなに書いてました…?
梅梅(メイメイ)
えぇ
梅梅(メイメイ)
もしかして、あの人の事好きなの?
鈴(リン)
え、そんな事ないですよ
子供っぽくて面倒な人です
梅梅(メイメイ)
あらそう?昨日花町に帰ってきた時もあの人いたし、手紙にも出てたからそうかなって
鈴(リン)
……
鈴(リン)
(時々モヤっとするけど、恋愛感情じゃないはず…)
梅梅(メイメイ)
もしかして心当たりでも?
鈴(リン)
ないですよ、それにもう後宮を出たのですから会う事もありません
梅梅(メイメイ)
そう、残念
そうやって話してると、馬車が動き始めた
鈴(リン)
(…思い残す事はないはず…)

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