第13話

11・清明さん、猫を助ける
3
2026/01/28 22:37 更新
言っている意味がわからない
清明
清明
君の家とこの家は、同じ植物でできた生け垣で囲まれている
そこから猫が出ないように結界を張った
わたしは、緑の生け垣を見回した
確かに、同じヒイラギの木を使っているようだ
清明
清明
実際に見せた方が早いか
清明は男の子の手からミオを抱き上げると、地面に置いた
ミオはトコトコと歩きだし、今度は生け垣から東側の細道へ出ようとする

待って、と大声で叫ぼうとしたわたしは、慌てて口を押さえた
生け垣に頭をつっこんだミオは、すぐに身を翻して戻ってきたからだ
清明
清明
生け垣を利用した、あの猫専用の結界
あの猫にだけ有効な壁を作ったわけだから、この二軒の敷地から出ることはない
わたしは、まばたきをして清明を見た
清明の表情は落ち着いていて、嘘をついているとは思えなかった
戻ってきたミオを、清明が抱き上げる
清明
清明
自分で猫を飼うとなると十数年は面倒を見てやらねばならないが
こうして隣の家の猫が出入りするのは嬉しいからな
清明
清明
そちらの家も含めて結界を張らせてもらった
わたしがじっと見つめていると、清明は薄く笑った
清明
清明
……というのは冗談だ
清明
清明
猫が嫌う薬品をこの二軒の周囲にいた
大学でそういう研究をしている知り合いがいてな
(なまえ)
あなた
あっ、そういう薬があるんですか?
(なまえ)
あなた
なーんだ、真顔で冗談言うから、信じそうになっちゃいました!
わたしは腕を差しだして、ミオを受け取った

あの夢はきっと、清明神社の思い出や、もらったお札が効いてほしいという願望が
ごちゃごちゃになった結果なのだろう
それはそれで、残念な気もする
(なまえ)
あなた
朝早くからおさわがせしてすみません
またミオを連れてきますね
清明は「ああ」と応え、男の子は小さく手を振ってくれた
ミオを抱えて家に入り、玄関を閉める
お札を拾い上げた時、ようやく自分の着ているものに気づいた
(なまえ)
あなた
あっ、パジャマのままだ…
ミオを見つけた驚きと安堵あんどで、着替えるのをすっかり忘れていた
ボタンはきちんと留っているが、これは恥ずかしい
腕の中でミオが、餌を求めるように盛んに鳴く
起き出した両親が、「おおっ、ミオ!」「良かった!」と口々に言いながら
廊下を走ってきた
ミオがいつものキャットフードを元気に食べるのを確認すると
家族三人はようやく安心して朝食をった
ベーコンエッグとトーストと切ったトマトだけの、いつもに比べて簡単な朝食だ
トマトのみずみずしさとトーストの香ばしさが引っ越しの疲れを拭い去り
ベーコンエッグのあたたかさが力を与えてくれる
母親
母親
張り紙を剥がしてこなきゃね
あちこちのお店に頼んでしもたから
(なまえ)
あなた
わたしが行く!
(なまえ)
あなた
ついでに、京都の街も見てくる
高校も入学前にちょっと見ておきたい
母親
母親
あ、そう?
ほなお願い
母親
母親
お店の人にようお礼言うといて
父親
父親
お礼を言えば
父親
父親
お隣の清明先生、一緒に探してくれたんだろう?
親戚の男の子と
(なまえ)
あなた
うん。おまじないのお札も書いてくれたし
父親
父親
そっちは、気休めに書いてくれたんだろう
お父さんがそう言いながら、苦笑した
父親
父親
蕎麦を持っていったばかりだけど、何かお礼を渡そうか
父親
父親
気を使わせないように、日本酒のちょっといいのを小さい瓶で
お母さんは軽く、お父さんをにらみ返す
母親
母親
さっそく京都のお酒を色々飲んでみよう、なんて思ってるやろ
父親
父親
ははは、分かるか、やっぱり
母親
母親
分かる分かる
ほな、生活用品を揃えがてら、清明先生へのお酒も買いに行こ!
お母さんが楽しそうに宣言する
実のところ、お母さん自身も酒はいける口なのだった

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