第82話

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2026/01/16 12:00 更新
——I.N side——










最初から、勝ち目がある恋だとは思っていなかった










高校の頃からずっと、僕は一段後ろにいる側だったから









同じダンス部で、同じ体育館で、同じ音楽を聞いていた








リノヒョンのほうが目立っていて、ヒョンジニヒョンの方が要領が良くて







スンミニヒョンはいつも少し離れた場所にいた









でも、完全に輪の外ってわけじゃない








誰かがミスをしたら一番最初に大丈夫と言う人で、空気が張り詰めたときはさりげなく力を抜いてくれる










その距離感がずっと変わらなかった








だからこそ、気づいたときにはもう遅かった






尊敬なのか憧れなのか、それともただの執着なのか、最初は分からなかった








ただあの人がリノヒョンを見ている視線だけは、高校の頃から分かっていた











言葉にしないぶん、余計にはっきり見えた








大学に入って、スンミニヒョンが軽音に行ったと聞いた時、少しだけ安心した









ダンスをやめたわけじゃないとどこかで信じていたけど





それでも同じ場所に立ち続けるリノヒョンと、別のステージに立つスンミニヒョンとの隙間が、はっきり見えた気がしたから















学園祭が近づいて準備が本格的になった頃











ヒョンは忙しそうだった









軽音の練習、機材の確認、スケジュール調整








僕ははダンスサークルで、リノヒョンやヒョンジニヒョン達と同じ空間にいる時間が多かった 
 










リノヒョンは幸せそうだった







ヒョンジニヒョンと並んでいるときの表情が、高校の頃とは違う








前を向いて、迷いがない










それを見て、胸がざわつかないわけがなかった









あの人も、きっと見ている









見ないふりをしても、視界に入ってしまう距離だから








だから近づいた









露骨なアプローチはしない







それは、あのヒョンが一番苦手なやつだ











ただタイミングが合えば一緒に歩く





  


練習終わりに少しだけ話す    








“疲れてないですか”





それくらい








あの人は、最初は少し戸惑っていた









でも拒まなかった







それだけで僕は満足だった













学園祭前日、軽音の最終確認が長引いた夜








偶然を装って、スンミニヒョンと帰るタイミングが重なった






 

夜風が涼しくて、話題も特別なものじゃなかった







高校の頃の話。ダンス部のバカみたいな練習








ヒョンは少し懐かしそうに笑った    








その表情を見て確信した  












ああ、まだ終わってない












リノヒョンへの気持ちは、形を変えて残っている









でもそれを抱えたまま、前に進めずにいる











だから僕ははそこに立った







奪うつもりなんてない。比べる気もない









ただ忘れたいなら、僕はここにいる














学園祭当日















ダンスステージに立つ僕とヒョン達。軽音のステージに立つスンミニヒョン










それぞれの場所で、それぞれが輝いている



 
 
 







終わったあと、スンミニヒョンは少しだけ疲れた顔をしていた









I.N
I.N
お疲れ様です





そう声をかけると









SM
SM
ありがとう







と返ってきた






 







僕はまだ諦めていない









この人が過去を忘れたいなら、その手段に選ばれても構わない


    






優しい選択じゃないことは分かっている。逃げだと言われても仕方ない








 

それでも、この距離を手放すつもりはなかった













、、告白は、もう少し先










でも、もう引き返す気はない

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