——SM side——
僕はリノヒョンを忘れるために、わざと忙しくした
バンドも人一倍頑張って、バイトも詰めて
予定を埋めることで気を逸らそうとした
でも生活の中からリノヒョンが消えることはなかった
同じマンションに住んでいるという事実は、思っていたよりずっと重い
エントランスの自動ドアが開く音
エレベーターを待つ時の微妙な間
そこにリノヒョンがいなくても、いるかもしれないという予感が常に頭のどこかに残っていた
忘れようとするほど意識が向いてしまう
一番避けたいのは、リノヒョンとヒョンジナ一緒に見ることだった
けれど現実は、避けたいものほど簡単に目の前に現れる
バイト帰りに見かけた二人
並んで歩くだけなのに、距離の近さがはっきり分かる
胸がぎゅっと縮まない前に、その場を離れる
部屋に戻っても落ち着かない
シャワーを浴びても、布団に入っても
頭の中に残るのは二人が並んでいた光景だった
もう、終わったことだ
そう思うたびに、好きだと認めた気持ちだけがはっきりと残る
そんな日が何日か続いた頃
元々仲が良かった後輩のイエナと話す機会が増えた
きっかけは本当に些細なことだった
いつものグループでの集まりの前
そんな一言から自然に隣に座るようになる
リノヒョンもヒョンジナも、楽しそうに飲んでる
その様子を見て少しだけ安心して、少しだけ傷つく
自分だけが、取り残されている
その感覚をイエナは気付いているのかもしれない
集まりが終わった後、自然と一緒に帰る流れになる
それだけの理由
最近あったこと、どうでもいい愚痴
他愛のない話ばかり繰り広げる
イエナは深く踏み込まない
でもちゃんと聞いている
ある日、何気なく言われる
否定しようとして言葉に詰まる
その言葉が静かに刺さる
少しずつ自分の調子が悪い理由を、誤魔化せなくなっていく
慰めもしないし、正しいことも言わない
ただ隣にいる
それが想像以上に楽だった
リノヒョンとヒョンジナを見て、胸が苦しくなった帰り道
何も言わずに、歩く速度を落としてくれる
沈黙が続いても、イエナは気にしない
ぽつりと前を見ながら言ってくる
その言葉に、胸の奥が少し緩む
忘れなきゃ、前に進まなきゃ
そう思っていた自分を否定しなくていい気がした
それからイエナは少しずつ、特別な位置に入り込んでくる
二人きりになる回数が増える
連絡も自然に増える
でも距離は守ったまま
イエナはリノヒョンの話題を出さない
でも出さないことで、全部分かっているのが伝わってくる
ある夜、別れ際にイエナが言う
その言い方が家族みたいで、恋人みたいで、どちらでもない
その曖昧さが一番危険だった
部屋に戻ってからふと思う
このままこの人の隣にいたら…
そんな邪悪な考えはすぐに振り払う
まだ誰かを好きになる資格なんてない
イエナはまだ何も言わない
けれど掃き出し口だけは静かに用意している
それが後で告白になることを、この時はまだ分かっていなかった














編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。