どうしてもどちらの鏡も割ることは出来なくて、呆然と立ちつくす。
黒い鏡を割った方がいいのは分かってはいるが、なぜか割ってはいけない。と直感で感じている。だからこそ、僕は割る判断には至れなかった。
ふと、ガラスの床に目を落とす。
そこからは、過去の僕らの会話が聞こえてきた。
なんて事ないただの日常のお話。
だけど、僕にはとてつもなく虚しい会話に聞こえた。
辺りの景色は移り変わって、灰色の背景にペンタスとウィットがいる。
ただし、ペンタスの姿形は、透けていて真っ黒になっていた。
「死んじゃ嫌……」
弱々しい声で、ウィットは呟く。
ペンタスとウィットネスが見える、とは言ったものの、周りには倒れているウォルフと、今にも命の灯火が消えそうなアウィンがいた。
服がおそらく血で真っ赤になっており、息が浅い。
景色が灰色なせいで、赤いのかどうかもよく分からない。
僕の体が勝手に動く。
僕の意思じゃないのに。視界も、急にウィットネスの方を向いた。
ごめんね、みんな……。
そう呟きながらウィットネスは禁断の魔法を使う。
そう大きな声で呼びかけるも、聞こえる素振りのない姿に僕は気づいた。
「死んでる」んだ、僕も。
1つ目の契約は、2つ目の契約は、3つ目の契約は。
そう淡々と言っていくウィットを、僕は見ていることしか出来なかった。
悪魔が何を言っているのか、ザザーッと音が邪魔をしてききとれない。
信じられない言葉を聞いた。
それと同時に、僕の体は勝手に動いて言葉を発する。
意識は暗転し、目の前の黒い鏡からスピーカーのようにして音声が流れる。
そしてもう一度頭に語りかけられる。
「お前はどちらの鏡を割るんだ?」
その問いに、僕は行動で示した。
パリン、とガラスが割れる音がする。
アンケート
どちらを割る?
透明な鏡(ハッピーエンドルート)
59%
真っ黒な鏡(バッドエンドルート)
41%
投票数: 1133票












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!