本番当日。
朝から、あなたの下の名前の体は重かった。
喉も少し痛いし、熱っぽさもある。
でも今日は公演日。
楽しみにしてくれているファンがいる。
鏡の前でそう呟いて、何もない顔を作った。
楽屋。
Kがふとあなたの下の名前を見る。
即答だった。
嘘だった。
でも、これ以上は聞かれなかった。
あなたの下の名前はほっとしながらステージへ向かう。
本番が始まる。
歓声、ライト、音楽。
アドレナリンで一瞬体調の悪さを忘れる。
けれど中盤。
フォーメーション移動のとき、足元がふらついた。視界が一瞬揺れる。
倒れそうになった瞬間、隣にいたKがさりげなく腕を支えた。
パフォーマンスの流れを崩さないまま、ほんの一瞬だけ体を預けさせる。
歌いながら、ほとんど口の動きだけで聞いてくる。
あなたの下の名前も同じように返す。
次の曲。
呼吸が荒くなる。立ち位置に着いた瞬間、今度はFUMAがそっと背中に手を当てた。
フォーメーションの一部のように自然に。
低く、小さく。
あなたの下の名前は笑う。
その笑顔が少しだけ無理していることを、FUMAは見逃さなかった。
サイドに移動したタイミングで、EJが一瞬近づく。
短く、それだけ。
NICHOLASもすれ違いざまに、
と小声で言う。
二人ともそれ以上は言わない。
今は止めるより、支えるほうが優先だと分かっているから。
ラスト曲。
ジャンプの振りがある。着地の瞬間、膝が少し崩れた。
その隙間を埋めるように、Kが横にぴたりと寄る。FUMAも立ち位置を半歩調整する。
誰にも気づかれないくらい自然に。
あなたの下の名前はその中央で、なんとか呼吸を整える。
ライトの熱と歓声の音が混ざる。
体は限界に近いのに、不思議と一人じゃない感覚があった。
最後のポーズが決まる。
暗転。
歓声がさらに大きくなる。
その瞬間、緊張が切れた。ぐらりと体が傾く。
Kがすぐ腕を掴む。
FUMAも反対側を支える。
二人の声は叱っているようで、どこか安心していた。
袖に戻ると、EJがタオルを持って待っている。
NICHOLASはスタッフに何かを伝えに走った。
あなたの下の名前はようやく力を抜く。
Kが即答する。
FUMAも頷く。
あなたの下の名前は小さく笑う。
Kが言い、FUMAが肩を軽く叩く。
みんなに囲まれながら、あなたの下の名前はやっと安心して目を閉じた。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。