伝えたかった、だけ……。
きっと私に気を使って
そう言ってくれてるんだろうな。
よく私のこと見てるんだね、
黒瀬くんは……。
そう言えば、理由を聞いていない。
おだやかな笑顔のまま、
黒瀬くんが言葉を重ねていく。
そう、だったんだ……。
今の話を聞いて、
私はもっと黒瀬くんを好きになった。
完ぺきな黒瀬くんよりも、
今のほうがもっと親しみやすい感じがする。
だから、
私も俊に、本音を伝えてみて気づいた。
ちゃんと話さないで
関係を悪化させてしまうのは、
すごくもったいないことだと。
俊に嫌われることを恐れてばかりいたけど、
うち明けてみたら意外な反応だった。
心を素直にさせることも、
必要なんだよね。きっと。
黒瀬くんと話していると、
いつの間に入ってきたのか
男子生徒に声をかけられる。
貸し出し用の機械を準備してから、
相手の顔を見ると……
目の前にならぶのは、
本を持った俊で
おどろきのあまり目を見張る。
えぇ……なんでっ!?
さっき教室に戻ったんじゃ……。
少し興奮気味に、
俊からブックカードを受け取る。
俊が本を読むなんて!!
あんまり、というか
ぜんぜん見たことない。
私がそう言うと、
すぐ近くのテーブルに座って
本を読み始める俊。
なんかこういうの嬉しいっ。
図書委員の活動してても、
俊を見れるなんて!!
嬉しさを隠しきれず、
思いっきり顔がゆるんでしまう。
そんな私を見て、
黒瀬くんもほほ笑ましそうに笑っていた。
2人から交互に呼ばれて、大いそがしの私。
これって何気に、
俊と黒瀬くん対抗してる……!?
図書室では当分、
三角関係が始まりそうな予感!?です。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。