後ろから抱きしめてくれるけど、
なかなか眠れない…
目を閉じると、
ドンドンドン! ドンドンドン!
ドアを叩く音が聞こえてきて。
その度に身体が硬直し、
怖くて目を開けてしまう…
照史お兄ちゃんはその度に、
ギュッと強く抱きしめてくれるけど…
鼻歌で子守唄を歌ってくれた。
それを聞きながら目を閉じる。
ドアの音も子守唄には勝てないようで、
いつの間にか、眠っていた。
目を開けると朝だった。
頭がぼーっとして、布団から出られない。
隣にいたはずの照史お兄ちゃんがいない。
すると、部屋に向かってくる足音…
とっさに私は目を閉じた。
照史お兄ちゃんはそのまま私の横に座ると、
頬に手を乗せ、優しく撫でた。
と…
その言葉が嬉しすぎて…
笑ってしまう。
と勢いよく布団に入ってきて、
私をギューっと抱きしめた。
布団の中でくすぐられる…
顔を洗ってキッチンへ行こうとした時、
玄関が目に入った。
昨日の事が蘇る。
すると、手が震えだし、
心臓がバクバクしてきた。
頭では、もう大丈夫って思ってるのに、
身体が反応してしまう…
深呼吸をする。
すると、私の手を取り、
朝ごはんを食べた後、
食器を洗っていると、
瞳さんから電話が来た。
きっとガラスを割った時に怪我したんだ…
照史お兄ちゃんが電話に出た。
と、話しながら部屋を出て行った。
千佳さん、昨日帰ったんだ…
よかった…
心の底からホッとした。
しばらくすると、照史お兄ちゃんが戻ってきて、
瞳さんの優しさに泣きそうになる。
私は本当に幸せ者だ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。