千切×玲王
千切の熱我慢です
嘔吐表現あり
苦手な方は回れ右でお願いします 💧
-夕方のトレーニングルーム-
空気が重くて千切はさっきから息が浅い。
額に触れる前髪がじっとりしてて、
いつもより動きが半拍遅い。
そんなの、玲王が気づかないわけない。
千切は目線だけ寄越して、
つんと顎を上げた。
声の奥が擦れてる。
玲王は眉をひそめたが、それ以上は追及しなかった。
千切が“触れられたくない時”の空気、
玲王はよく知っている。
けれどこの日は違った。
千切の歩き方が不安定で、
喉を押さえるしぐさがやたら多い
練習後のロッカーで、
千切はしゃがみこんで肩を震わせた。
玲王が覗き込むと、
千切はわざとらしいほど早く顔をそむけた。
その言葉の強さと裏腹に、
千切の声が小さく震えてるのがわかる。
玲王は胸がざわついた。
語尾が掠れてる。
明らかに嘘なのに、
玲王はその一言で引くしかない。
千切は弱さを見られるのが何より嫌いだから。
―――
寮に戻る帰り道。
千切はほとんど喋らない。
歩幅も小さいし、息が乱れている。
その“クラクラ”が、すでに危険な合図だとわかってても。
千切が言う「平気」は絶対に平気じゃない。
玲王は腕を伸ばしかけて、
でも触ると千切が強がるのを知ってるから、
拳をぎゅっと握って我慢した。
──次の瞬間。
千切の足がふらつき、
壁に片手をついて止まった。
声が震えてる。
呼吸が跳ねて、喉の奥がつまるみたいに苦しそうだ。
玲王の心臓が跳ねた。
腕を取ると、千切の身体がびくっと揺れる。
言葉とは逆に、
千切の指は玲王の袖を掴んでた。
玲王が支えようと身体を寄せると、
千切はもう耐えきれなかった。
喉が詰まったみたいに息が乱れて、
胸が上下に震える。
顔を伏せた千切の肩が大きく震えた直後、
込み上げる呼吸がひとつ乱れ——
千切は、隠しきれない限界に飲まれた。
玲王は千切の背をすぐに支え、
髪が汚れないように手で押さえ、
身体を前に寄せた。
千切は苦しげにうずくまり
千切は力なく玲王の胸に額を預け、
呼吸が落ち着くまで、
ずっと玲王に支えられていた。
―――
しばらくして落ち着いた千切は、
小さな声で呟いた。
玲王はその頭をそっと撫でた。
返事はなかった。
でも千切の指が、弱々しく玲王の服を掴んだ。
強がりのくせに、
一番弱る時だけ玲王を頼る。
そんな千切を、玲王は全部受け止める。
顔を真っ赤にして抗議する千切を支えながら、
玲王は小さく笑った。
その笑いは優しくて、
千切も笑みを零した














編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。