第2話

平気じゃないくせに / 千切×玲王
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2025/12/09 17:45 更新
千切×玲王

千切の熱我慢です

嘔吐表現あり

苦手な方は回れ右でお願いします 💧‬




-夕方のトレーニングルーム-

空気が重くて千切はさっきから息が浅い。

額に触れる前髪がじっとりしてて、
いつもより動きが半拍遅い。

そんなの、玲王が気づかないわけない。
玲王
玲王
千切、さっきから変だぞ。呼吸荒くね?
千切は目線だけ寄越して、
つんと顎を上げた。
千切
千切
……別に。少し疲れただけ。
声の奥が擦れてる。
玲王は眉をひそめたが、それ以上は追及しなかった。

千切が“触れられたくない時”の空気、
玲王はよく知っている。

けれどこの日は違った。
千切の歩き方が不安定で、
喉を押さえるしぐさがやたら多い
玲王
玲王
(本当に疲れただけか、?)
練習後のロッカーで、
千切はしゃがみこんで肩を震わせた。
玲王
玲王
おい、大丈夫かって……千切?
玲王が覗き込むと、
千切はわざとらしいほど早く顔をそむけた。
千切
千切
なんでもない。放っとけって。
その言葉の強さと裏腹に、
千切の声が小さく震えてるのがわかる。

玲王は胸がざわついた。
玲王
玲王
お前顔赤いけど熱あるんじゃね?
千切
千切
ねぇよ。大丈夫だって
語尾が掠れてる。
明らかに嘘なのに、
玲王はその一言で引くしかない。

千切は弱さを見られるのが何より嫌いだから。
―――
寮に戻る帰り道。
千切はほとんど喋らない。
歩幅も小さいし、息が乱れている。
玲王
玲王
おい。お嬢ほんとに大丈夫か?
千切
千切
……うん。平気。ちょっと…クラクラするだけ。
その“クラクラ”が、すでに危険な合図だとわかってても。

千切が言う「平気」は絶対に平気じゃない。

玲王は腕を伸ばしかけて、
でも触ると千切が強がるのを知ってるから、
拳をぎゅっと握って我慢した。

──次の瞬間。

千切の足がふらつき、
壁に片手をついて止まった。
千切
千切
……っ、ちょ、待って……
声が震えてる。
呼吸が跳ねて、喉の奥がつまるみたいに苦しそうだ。

玲王の心臓が跳ねた。
玲王
玲王
え、千切!? 
腕を取ると、千切の身体がびくっと揺れる。
千切
千切
触んな……っ
言葉とは逆に、
千切の指は玲王の袖を掴んでた。

玲王
玲王
いいから。こっち見ろ。
玲王が支えようと身体を寄せると、
千切はもう耐えきれなかった。

喉が詰まったみたいに息が乱れて、
胸が上下に震える。
千切
千切
っ……や……やだ……っ、見んな……
顔を伏せた千切の肩が大きく震えた直後、
込み上げる呼吸がひとつ乱れ——

千切は、隠しきれない限界に飲まれた。

玲王は千切の背をすぐに支え、
髪が汚れないように手で押さえ、
身体を前に寄せた。
玲王
玲王
大丈夫、大丈夫だから…千切、吐いていい。袋あるからもう我慢すんな。
千切は苦しげにうずくまり
千切
千切
ウッ、ゴホゴホ 、オェ
千切
千切
っ……ごめ……っ…
玲王
玲王
謝んな。俺が気づけなかった。
千切は力なく玲王の胸に額を預け、
呼吸が落ち着くまで、
ずっと玲王に支えられていた。

―――

しばらくして落ち着いた千切は、
小さな声で呟いた。
千切
千切
……見んなって、言ったのに……
玲王はその頭をそっと撫でた。
玲王
玲王
大丈夫だよ。それに放っとけるわけないじゃん。
返事はなかった。
でも千切の指が、弱々しく玲王の服を掴んだ。

強がりのくせに、
一番弱る時だけ玲王を頼る。

そんな千切を、玲王は全部受け止める。
玲王
玲王
歩けないなら抱えるよ? 笑 恥ずかしがるなって。
千切
千切
や、やめろ……っ……///
顔を真っ赤にして抗議する千切を支えながら、
玲王は小さく笑った。
玲王
玲王
はいはい。わがままお嬢様
その笑いは優しくて、
千切も笑みを零した

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