夜蛾さんは壁によりかかって、
腕を組んで考えている
右腕を夜蛾さんの前に出すと、
夜蛾さんは制服の袖を無理やり捲った
無理やり袖を捲られたことで
腕に擦れてしまって、肌が少しだけヒリヒリする
夜蛾さんは何も言わず、静かに腕を見ていた
懐かしい
そんなこともあったっけ
夜蛾さんは足を大きく広げて、
深く椅子に座って私に体を向けた
私は右手で頬を包んで、しばし考える
本当に死ぬかもしれないと思った
あれほどまでの恐怖を抱いたことはない
それに比べてしまったら……
後ろで手を組んで、首を傾げて聞いた
机をドン! と殴りながら、
いきなり説教モードが始まった
戦国時代に行ってるなんて言えば、
多分「ふざけるな」とか言われると思う
だって普通無理でしょ?
時代移動してるなんて思えないじゃない?
夜蛾さんは足と腕を組んで背もたれに寄りかかった
なんだか偉そうな座り方
きっとこの一年以上私を放っておいたのは、
私が変化していく様を見ていたかったから
合理主義な夜蛾さんらしい回答
少しガッカリしてしまったかもしれない
あの合理主義な夜蛾さんが、情を理由にした
情けをかけて私を助けた
その事実がどうしようもなく、私の感情を昂らせた
声が裏返るのを我慢できない
目の奥が熱くなっていく
視界がぼやけて夜蛾さんがよく見えない
ようやく見えたかと思えば、頬が濡れた

先生を失っても涙を流せなかった私は、
ようやく涙を流すことができた













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。