惹き込まれるように彼について行ってしまった
暫く彼が入っていった店の前でボーっとしていると
店の中から怒号が聞こえてくる
なんだろうと思い店の中を覗く
すると女将さんらしき人が少年に向かって
手を上げようとしていた
慌てて店の中に入り女将さんと少年の間に割り込む
怪しがるようにジロリと此方を睨む
少年は黙ったままでジッと下を見ている
意外にもここで反応したのは少年
女将さんは渋々ながら承諾してくれた
女将さんからお釣りを受け取りながら思わず苦笑
してはしまう
全然関係ないんですけどね
そして少年の手を引いて店を出る
少年が口を開いたのは店を出て少し歩いた所にある
公園のベンチに座らせたとき
かつては賑わってたであろうその公園は今は
人っ子一人おらず廃れている
ギリギリ聞き取れるくらいの小さな声でぼそっと呟く
それは素朴な疑問だった
そりゃあそうだ
はじめましての子供をそう庇う人間なんて
ほとんど居ないであろう
しかしらっだぁは違う
意外と面倒見のいい性格なのだ
何を言っているんだとでも言いたげな目
しかしらっだぁは本気なのだ
それが伝わったのか少年はさらに不審な顔をする
ご尤もである
少年が盗もうとしたのは一個50ベルの林檎と
一個60ベルの缶詰
金を払うときに驚いたのは言うまでもない
そう言うと少年はバッと顔を上げる
少年は俯いてしまう
そして暫く無言の時間がすぎる
そう聞こえた
しかし隣に座っていたはずの少年は
跡形もなく消え去ってしまっていた












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!