ガラリ、と教室の空気が少しだけ変わる。
入ってきたのは現代文の教師だった。
教室が一瞬、静まり返る。
誰かが小さく笑う。
この学校で、そのテーマ。
皮肉みたいだ。
ざわ、と机を動かす音
元気な声。
私は少しだけそちらを見る。
同じ班になれないかな
と思った次の瞬間。
自分の名前。
そして。
静かに椅子を引く音。
蒼井凪...表情は薄く、視線は冷たい。
赤沼が小さく
と呟くのが聞こえた。
私は何も言わず、指定された机へ向かう。
蒼井はすでに座っていた。
目が合う。
一瞬。
氷のように平坦な瞳。
小さく言う。
蒼井は数秒黙ったまま、視線を逸らす。
歓迎があるわけもない。
同じ班の内部生二人は、蒼井に自然と体を向ける。
中心は、彼
蒼井が言う。
それは私に向けた言葉だった。
淡々。
距離を取るような声。
一瞬、喉が乾く。
でも、テーマを見る。
“特権と努力は両立するか”
視線が集まる。
言い終える。
蒼井は少しだけ目を細めた。
静かな声。
でも、刃物みたいだ。
内部生の一人が苦笑する。
「まあ、そうだよな」
蒼井は続ける。
こちらを見る。
逃げ場のない視線。
空気が凍る。
私は数秒、黙る。
答えない。
蒼井の目がわずかに動く。
小さく返す。
蒼井は無表情のまま言う。
正論。
でも、優しさのカケラもない。
その一言は、同情でもない。
分析。
ただの事実として。
私は机の上で拳を握る。
蒼井は視線を外し、淡々と言う。
まるで私を材料にしたみたいに。
冷たい。
距離がある。
赤沼の班から笑い声が聞こえる。
対照的な空気。
先生が声をかける。
「あと十分。まとめろ」
蒼井は紙にすらすらと文章を書き始める。
無駄がない。
完璧。
私の方は一度も見ない。
まるで、ただのデータみたいに扱われた気がする。
発表者を決めるとき。
班の一人が言う。
「蒼井でいいよな?」
蒼井は首を横に振る。
視線がこちらに向く。














編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!