素直な感想。
赤沼はもう一口噛んで、少し目を細める。
あまりにも自然に言うので
心臓が一瞬だけ跳ねる。
平坦な声を保つ。
赤沼は弁当箱を覗き込む
これは完全に気に入っている。
その問いに、手が一瞬止まる。
階段の踊り場は静かだ。
遠くの声だけが響く。
短く答える。
赤沼の動きが止まる。
言い直す。
赤沼はあなたをまじまじと見る。
本気で驚いている顔。
少し面白い。
数秒の沈黙。
それから——
笑いながら言う。
私は少し視線を逸らす。
そんなことで驚かれるとは思っていなかった。
即答。
意味が分からない。
真面目な顔で語る。
それはそれで作った人に失礼な気が...
その言い方があまりにも本気で。
少しだけ、胸が熱くなる。
誰かに“すごい”と言われたことなんて、ほとんどないから
小さく言う。
赤沼は首を振る。
そして少しだけ笑って、
一瞬、言葉に詰まる。
家に呼ぶわけにはいかない。
バレるかもしれないから。
赤沼は一瞬固まる
視線を合わせない。
赤沼は数秒私を見てから、ふっと笑う。
それ以上踏み込まない。
でも最後にもう一度、卵焼きを見て言う。
真っ直ぐな声。
階段の窓から差し込む光が、やけに明るい。
胸の奥が、少しだけ温かい。
キーンコーン、カーンコーン――。
昼休みの終わりを告げるチャイムが、校舎いっぱいに澄んだ音を響かせた。
階段の踊り場に差し込んでいた柔らかな光が、少しだけ傾いている。
窓の外では、手入れの行き届いた中庭の木々が風に揺れていた。
赤沼が呟いて、慌てて弁当箱の蓋を閉める。
私はこくんと頷きながら、自分の小さな弁当箱を包み直す。
さっき無理やり口に放り込まれた高級そうなお肉の味が、まだ舌に残っている気がして、なんとなく落ち着かない。
さっきまで余裕そうだったのに、急に眉を寄せる。
全然自信がない声。
思わず私は小さく瞬きをした。
いや私も見てなかったんだけど...
両手で空中をわしづかみにするジェスチャー。
さっきまで正義感の塊みたいな顔してた人と同一人物とは思えない。
階段を駆け上がりながら、赤沼が小声で続ける。
廊下に出ると、すでにほとんどの生徒が教室へ向かっていた。
誰も理科室や音楽室に向かう様子はない。
赤沼がきょろきょろと辺りを見回す。
教室の扉を開けると、何人かはもう席についている。
赤沼が胸をなで下ろした。
私は自分の席に腰を下ろす。













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。