第10話

第10話
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2026/02/23 08:22 更新
素直な感想。

赤沼はもう一口噛んで、少し目を細める。
赤沼凛太郎
赤沼凛太郎
俺これ好き
あまりにも自然に言うので

心臓が一瞬だけ跳ねる。
あなた
……ふーん
平坦な声を保つ。

赤沼は弁当箱を覗き込む
赤沼凛太郎
赤沼凛太郎
甘さちょうどいいし。出汁入ってる?
あなた
……少し
赤沼凛太郎
赤沼凛太郎
へえ
これは完全に気に入っている。
赤沼凛太郎
赤沼凛太郎
これ、家の人が作ってんの?
その問いに、手が一瞬止まる。

階段の踊り場は静かだ。

遠くの声だけが響く。
あなた
……自分で
短く答える。

赤沼の動きが止まる。
赤沼凛太郎
赤沼凛太郎
は?
あなた
自分で作った
言い直す。

赤沼はあなたをまじまじと見る。

本気で驚いている顔。

少し面白い。
赤沼凛太郎
赤沼凛太郎
え、マジで?
あなた
うん
赤沼凛太郎
赤沼凛太郎
毎日?
あなた
だいたい...
数秒の沈黙。

それから——
赤沼凛太郎
赤沼凛太郎
すげー
赤沼凛太郎
赤沼凛太郎
俺、包丁まともに使えねえ
笑いながら言う。
赤沼凛太郎
赤沼凛太郎
卵焼きとか焦がす未来しか見えない
私は少し視線を逸らす。

そんなことで驚かれるとは思っていなかった。
あなた
別に普通だし
赤沼凛太郎
赤沼凛太郎
普通じゃねえだろ
即答。
赤沼凛太郎
赤沼凛太郎
高級肉より卵焼きのほうがレベル高いぞ
意味が分からない。
あなた
なんで
赤沼凛太郎
赤沼凛太郎
肉は焼くだけだろ。でも卵焼きってバランスじゃん
真面目な顔で語る。
それはそれで作った人に失礼な気が...
赤沼凛太郎
赤沼凛太郎
甘さとか火加減とか。俺、無理
その言い方があまりにも本気で。

少しだけ、胸が熱くなる。

誰かに“すごい”と言われたことなんて、ほとんどないから
あなた
別に大したことない
小さく言う。

赤沼は首を振る。
赤沼凛太郎
赤沼凛太郎
いや、普通に尊敬するわ
そして少しだけ笑って、
赤沼凛太郎
赤沼凛太郎
今度教えろよ
一瞬、言葉に詰まる。

家に呼ぶわけにはいかない。

バレるかもしれないから。
あなた
それは無理
赤沼は一瞬固まる
赤沼凛太郎
赤沼凛太郎
即答二回目だぞ
あなた
無理なものは無理
視線を合わせない。

赤沼は数秒私を見てから、ふっと笑う。
赤沼凛太郎
赤沼凛太郎
そっか
それ以上踏み込まない。

でも最後にもう一度、卵焼きを見て言う。
赤沼凛太郎
赤沼凛太郎
でもさ
あなた
うん
赤沼凛太郎
赤沼凛太郎
これ、マジでうまい
真っ直ぐな声。

階段の窓から差し込む光が、やけに明るい。

胸の奥が、少しだけ温かい。
キーンコーン、カーンコーン――。

昼休みの終わりを告げるチャイムが、校舎いっぱいに澄んだ音を響かせた。

階段の踊り場に差し込んでいた柔らかな光が、少しだけ傾いている。
窓の外では、手入れの行き届いた中庭の木々が風に揺れていた。
赤沼凛太郎
赤沼凛太郎
……やば
赤沼が呟いて、慌てて弁当箱の蓋を閉める。
赤沼凛太郎
赤沼凛太郎
もうそんな時間かよ。話してたら一瞬だな
私はこくんと頷きながら、自分の小さな弁当箱を包み直す。
さっき無理やり口に放り込まれた高級そうなお肉の味が、まだ舌に残っている気がして、なんとなく落ち着かない。
あなた
午後、何だっけ
さっきまで余裕そうだったのに、急に眉を寄せる。
赤沼凛太郎
赤沼凛太郎
確か……数学?いや、英語?……え、待て
赤沼凛太郎
赤沼凛太郎
....忘れた!移動教室ではなかったはずたぶん。いや、きっと
全然自信がない声。

思わず私は小さく瞬きをした。
あなた
時間割、見てないの?
いや私も見てなかったんだけど...
赤沼凛太郎
赤沼凛太郎
見た!見たけどな?見たけど記憶が……こう、ふわっと飛んだ!
両手で空中をわしづかみにするジェスチャー。
さっきまで正義感の塊みたいな顔してた人と同一人物とは思えない。
あなた
……教室、戻ろう
赤沼凛太郎
赤沼凛太郎
それが安全だな
階段を駆け上がりながら、赤沼が小声で続ける。
赤沼凛太郎
赤沼凛太郎
いやでもさ、もし移動だったらどうする?俺ら二人だけ教室でポツンとかだったら地味に恥ずいぞ
あなた
その時はすぐ移動して元からいましたよっていう顔しとこう
廊下に出ると、すでにほとんどの生徒が教室へ向かっていた。
誰も理科室や音楽室に向かう様子はない。

赤沼がきょろきょろと辺りを見回す。
赤沼凛太郎
赤沼凛太郎
…よし。大丈夫そうだな
教室の扉を開けると、何人かはもう席についている。

赤沼が胸をなで下ろした。
赤沼凛太郎
赤沼凛太郎
セーフ……!
私は自分の席に腰を下ろす。

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