こちらを向くこともせずつかつかと進んでいくドストエフスキーになんとかついて行く。
帰っていいと言われたゴーゴリはそれを聞かずに私の横を歩いている。
ドストエフスキーもゴーゴリも歩くのが早い。
私が遅いということも、まああるかもしれないが、それにしても、だ。
身体能力の問題というよりかは、ただ単にこちらを気遣っていないだけなのだろうと思う。
仮にも協力してあげるのだから、もっとこっちを気にしてほしい。
怖いので絶対にその不満を口に出すことはしないが。
「……なんですか?」
「えっ!?」
いきなりドストエフスキーが立ち止まり、顔だけをこちらに向けて言う。
なんですか、って何が。
「なにか不満がありそうでしたので」
怒ってそうではないが、笑ってもいない。
そんな顔で淡々と喋るドストエフスキー。
なんで分かったの。そりゃあ不満はあるけれど。
言いたいことが頭の中でぐるぐると駆け巡るけど、どれを言うか、どんな風に言うか、それらを迷っているうちにドストエフスキーはまた前の方を向いた。
「まあいいです、はい、ここが貴女の部屋です」
「えっ」
私は昨日から驚いてばかりだ。
もうちょっと冷静にいたいのだけれど。
それでも、驚くのも無理はない。流石に、これは。
先程までの不満なんてどこかに飛んでいってしまった。
ドストエフスキーがどうぞ、と言いながら開いた扉の向こうには、どこか外国の、権力を持つものしか泊まれないような、そんな厳かで綺麗なホテルを思い浮かべるような部屋が広がっていた。
家具も今まで見たことのないような煌びやかなものばかりだし、そもそも部屋自体が広い。
「なっ、え、なんですかこれ」
「部屋ですよ、貴女の」
「いやそれは聞きました、けど......。なんでこんな大きな、え?」
何度見たって変わらないと頭では理解しつつ、それでも目の前に広がる光景が信じられなくて、キョロキョロと辺りを見渡して、また部屋を見るという無意味な行動を繰り返す。
ここに来るまではどちらかと言うと殺風景で、たまに本が散乱していたり、よく分からないコンピューターが大量にある部屋が見えただけだった。
「あなたさん、こういう部屋好きでしょう?違いましたか?」
「ち、違わない、ですけど......!」
そう。正直私はこういう部屋が大好きだ。
一度も住んだことも、泊まったこともないけれど、昔絵本や漫画で見た時から憧れていた。
きらきらしていて、私には不釣り合いだけれど、でもそんな私を丸ごと変えてくれそうな、そんな空間。
私のこういうささやかな趣味や好みでさえ知られているのかという驚嘆やちょっとした恐怖は感じつつ、憧れていたものが目の前にあるという事実への興奮の方が大きくなってきた。
「いいんですか?ほんとになんで」
「はい。......あの、ゴーゴリさん、もしかして言ってないんですか?」
「うん!まだ言ってない!!そっちの方が楽しいかな〜?と思って。想像通りの可愛い反応見れたからもういいや!あなたちゃん」
「はい?」
「あなたちゃんはもう基本この家から出られないの。だから部屋はいいの用意してあげたの!!どう?ビックリした〜!?」
「……はい?」
家から出られない?
……どういうこと?
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留駄さんスポットライトありがとうございます...😭😭
しかも2回...!めちゃめちゃビックリしました本当に嬉しいです!!更新頑張ります!!!












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!