次の日
新人が来る日
私はどんな人が来るのか気になって仕方がなかった
私みたいな舐められタイプだったらどうしよう、とか色々。だって同じ思いされたくないからね
なに…これ。
私のロッカーの前はゴミで溢れかえっていた
誰の仕業?そんなこと思うまでもなくすぐにわかる
どうやらロッカーにある名前がみえてなかったらしい
まあこんな悪戯、慣れるしかないと思ってるので適当に流すくらいしかない。
周りのおばさん達も私のことを見ている
どの顔をみても、みんなこのおばさんと同じような思いをしているような顔だった。
普通に私なにか悪いことしましたか?って感じ
通勤早々これはキツイ。
わかりません。
上下関係とかなくなってしまえ。
私は働きに来てるだけで、ネチネチおばさんにこんなことを言われに来てるんじゃない
今日は慣れない指導をしなきゃいけないのに今の時点で疲れそうだよ。
と思うやいなや、店長が入ってきた
おばさん達はざわついていた。
私くらいの人がもう一人増えると思って、頼る人が増えることにワクワクしてるんだろうなー
ドアが開いた。
全員の目がそこに行く。
年齢はたぶん同じくらい。
背はとても高く細く、それに顔立ちも良い。
声や話し方はこれといった特徴はなく普通だった
「よろしくお願いします」という言葉と共に頭を下げる彼。真面目そうな人だ。
うーわ、態度急変しやがった。
顔立ちがいいから惹かれたんだろうなー
ってことはこの人は私みたいな扱いされなくて済むってことじゃん、羨ましい
私も顔立ちの良い男に産まれてみたかったよ
あ、そうだ。この人のこと指導するんだった
話しかけなきゃ
近くに寄るともっと身長が高かった
この距離感だと見上げなきゃいけないくらい
清川さんはこくりと頷き、私の方を見つめていた。
少し不安そうな顔をしている。緊張しているのかな
私もこの人を育てなきゃいけないと思うと不安になってくる。
品出しは一番最初に教える仕事だった。
そういうと清川さんは黙ってうなずき
一つ一つ商品を並べていった
動きは丁寧で、一つ一つ確認するように棚に置く
遅いけど、それは決して雑ではなかった
その時、清川さんの手が止まった。
ん?もしかして聞こえなかったかな、
おばさんとストレスの溜まる会話をする以外で声を出してなかったからちゃんと聞こえる声出せてなかったかな…
あ、聞こえてた…よかったー
清川さんは数秒経ってから返事をした。
真面目そうなその横顔は、少し自信のなさそうな気持ちも混ざっている感じがした。
それから清川さんは、さっきより少しだけ早くなった
けれど、さっきと変わったところが出てきた
商品を置いたあとすぐに必ず、一度私のことを見る。
「顔になんかついてますよ」??
いや、私を見つめるその顔はそれを伝えている顔をしているようにはみえない
というよりも、
「合ってますか」と聞いているような顔をしていた。
口には出さずに、視線だけで聞いてくる
そう答えると清川さんは安心したのか、
次の商品を取り、並べ続けた。その繰り返し
品出しはそれから完璧にこなすことができた。早すぎて私は少しびっくりしたけど
教えたことが為になっているならよかった
次はレジ打ち。これは覚えることが多くて少し大変なところがある
そう言って清川さんの隣に立ち、レジ打ちのお手本を見せる。
レジ台は狭くて自然と距離が近くなる
ピッ
できてる、ちゃんと説明できてるよ自分
後でコンビニに寄って自分にご褒美しよう。
私が説明をするたびに、清川さんは頷きながら聞いていた。
そう言って私は一歩だけ下がった
清川さんの指は少し震えていた。
バーコードを通し、音が鳴る
画面を見る
震えながらもしっかりと作業をこなしていたが、全て合っていた。
そう言うと、清川さんは小さく息を吐き
声が思ってたより小さかった。
にしても、良い声してるなー
清川さんの表情が少し和らいだような気がした
自信がないのなんか当たり前。だからこそこれからのために今のうちに、自信がつくまで頑張ってほしい。
私みたいな舐められる人にはなってほしくないよ
私は画面を指さそうとした
そのとき、清川さんの手とぶつかりそうになった
ぎりぎりで止めて、向こうも止まった
一瞬時間が止まったような感覚になった
清川さんの視線が、私の手を追って離れなかった
なんか…気まずい、
微妙な空気をかき消すために話し出す
けれど少し距離を取って話してしまった
あーもう悪化させてどうするんだよ自分…ばかばか
…?何に対してかな
わからないけど。
そう言った
けど、そのあと清川さんはさっきよりも
すごく慎重になったような気がした。しかもさっきと同じような感じ
ボタンを押す前に、一度私のことを見る
お釣りを渡す前に、一度私のことを見る
やっぱり不安にさせてしまった。こっちが謝るべきだよホントに…
けどごめんねなんか言えない、この人の感じだと、なぜ謝らせてしまうようなことをしたのだろうと思い
また今よりも悪化しそうな気がしたからだ。
その工程を何度も続けて、できそうなところまできた。
びっくり。向こうから珍しく声が出た
やっぱり気にしてた。でも自信のないことに対してじゃなくて距離のことだった
清川さんはさっきよりも話してくれるようになった
少し心を開けてくれたのか、それとも話す自信がついたのか
何にせよ私からしたら接しやすくなったからうれしかった
やっぱ年上っぽいと思った
身長のせいかな?けど顔立ち的にも高校生というよりも大学生っぽいし
この顔だったら絶対モテモテじゃん
そんなかんだで私たちは色んな会話をした
キヨくんはどうやら近くの大学に通っているらしい
そこで、これから自立をしていくためにもまずはアルバイトからということでココを選んだらしい
話している間に時間は進み、退勤時間が近づいてきた
こんな良い気分で終われるの初めてだ。キヨくんに感謝しないといけないな。
そう思った時
おばさんは私の存在などありませんかのように、キヨくんだけを見て話をしている
ご飯?ここに働く人たちと??
いや、私誘われてないんですけど…
まぁ誘われてもこんなおばさん達の中に入るつもりないけど
キヨくんは存在が消えかけてた私に問いかけてきた
おばさんもこちらを見つめていたが、「来るな」と訴えるような目をしていた
では、その目(言葉)に応えます
おばさんはそう言って私を睨むなり、ガチャンと大きな音でドアを閉め、部屋から出ていった
優しい、この人優しすぎるよ…
うわぁ、性格まで神だなんて素晴らしいよホントに
なんか、ちょっと悲しそうな目をしてる⁇
気のせいかな。











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。