その日、学校の空はどんより曇っていた。
あなたの下の名前の心も同じように重かった。
数学の小テストはボロボロ。
友達と話すときも、どこか上の空。
そして放課後が近づくにつれ、胸の奥で何かがぎゅっと締めつけられる。
――行きたい。
でも……行けない。
そんな気持ちがぐちゃぐちゃに混ざっていた。
体育館の前まで来たものの、扉を開ける手が震える。
そう呟いた瞬間――
ガラッ。
『あなたの下の名前?』
ちょうど扉を開けて出てきたのは、
阿部くんだった。
言い訳を探す間もなく、阿部くんはあなたの下の名前の顔をじっと覗き込んだ。
その言葉に、胸の奥のどこかがぐらりと揺れた。
軽く笑って言うけれど、その目は優しくて、真剣だった。
阿部くんの言葉が、じん、と胸に染みた。
そのとき。
向井くんが中から顔を出した。
ラウールくんまで来る。
視線が一気に集まる。
優しい気遣いなのはわかってるのに、胸が苦しくなる。
――心配させるのが、怖い。
そう言うと、向井くんは一歩引いて微笑んだ。
その距離感が優しくて、逆につらくなる。
あなたの下の名前は少し迷ってから、そっと頭を下げた。
阿部くんは決して追いかけてこない。
その“優しさ”が、胸の奥の痛みに触れた。
体育館を離れたあと、涙がこぼれそうになった。
みんなが悪いわけじゃない。
本当は、あの場所が大好き。
でも、だからこそ――
“あの輪の中に、本当に私、いていいのかな”
その不安が、消えなかった。
家に帰って部屋に入ると、ようやく涙が落ちた。
胸が苦しくて、息がしづらい。
Snow Manといる時間は楽しいのに、
ふとした瞬間、急に怖くなる。
嫌われたらどうしよう。
迷惑だったらどうしよう。
必要じゃなかったらどうしよう。
そんな言葉ばかりが頭をめぐる。
ぽつりとこぼれた声は震えていた。
言いたいのに、言えない。
言ったら嫌われる気がして。
携帯を見ると、Snow Manのグループからメッセージがきていた。
《あなたの下の名前、無事帰れた?》
《また明日な!》
《おやすみ〜》
その優しさが刺さる。
返事を打とうとして、手が止まった。
――どう返せばいいかわからない。
既読だけがついていく。
胸がまたぎゅっと痛んだ。
その夜、あなたの下の名前はずっと眠れなかった。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。