第5話

こぼれ落ちる音
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2025/12/20 06:49 更新
その日、学校の空はどんより曇っていた。
あなたの下の名前の心も同じように重かった。

数学の小テストはボロボロ。
友達と話すときも、どこか上の空。
そして放課後が近づくにつれ、胸の奥で何かがぎゅっと締めつけられる。

――行きたい。
でも……行けない。

そんな気持ちがぐちゃぐちゃに混ざっていた。

体育館の前まで来たものの、扉を開ける手が震える。
あなた
...今日は、やめようかな
そう呟いた瞬間――

ガラッ。


『あなたの下の名前?』
ちょうど扉を開けて出てきたのは、


阿部くんだった。
あなた
あ、あの……今日、ちょっと――
言い訳を探す間もなく、阿部くんはあなたの下の名前の顔をじっと覗き込んだ。
阿部亮平
...元気、ないね?
その言葉に、胸の奥のどこかがぐらりと揺れた。
あなた
大丈夫です。私、全然――
阿部亮平
“全然”って言うとき、大丈夫じゃない確率が高いんだよ
軽く笑って言うけれど、その目は優しくて、真剣だった。
阿部亮平
無理してたら、言ってね? 俺ら、気づくの遅いからさ
阿部くんの言葉が、じん、と胸に染みた。

そのとき。
向井康二
おーい、阿部ちゃーん! ……って、あなたの下の名前もいたん?
向井くんが中から顔を出した。
向井康二
今日ちょっと様子変やで。あなたの下の名前、どうしたん?
ラウール
なんかあった?
ラウールくんまで来る。

視線が一気に集まる。
優しい気遣いなのはわかってるのに、胸が苦しくなる。

――心配させるのが、怖い。
あなた
ほんとに大丈夫!今日はちょっと疲れてるだけで……!
そう言うと、向井くんは一歩引いて微笑んだ。
向井康二
そっか。無理はせんときな。来たいならおいで、帰りたいなら帰ってええ
その距離感が優しくて、逆につらくなる。

あなたの下の名前は少し迷ってから、そっと頭を下げた。
あなた
……今日は帰ります
阿部亮平
わかった。気をつけて帰れよ
阿部くんは決して追いかけてこない。
その“優しさ”が、胸の奥の痛みに触れた。

体育館を離れたあと、涙がこぼれそうになった。

みんなが悪いわけじゃない。
本当は、あの場所が大好き。
でも、だからこそ――

“あの輪の中に、本当に私、いていいのかな”

その不安が、消えなかった。
家に帰って部屋に入ると、ようやく涙が落ちた。

胸が苦しくて、息がしづらい。
Snow Manといる時間は楽しいのに、
ふとした瞬間、急に怖くなる。

嫌われたらどうしよう。
迷惑だったらどうしよう。
必要じゃなかったらどうしよう。

そんな言葉ばかりが頭をめぐる。
あなた
助けて、なんて……言えるわけないよ
ぽつりとこぼれた声は震えていた。

言いたいのに、言えない。
言ったら嫌われる気がして。

携帯を見ると、Snow Manのグループからメッセージがきていた。

《あなたの下の名前、無事帰れた?》
《また明日な!》
《おやすみ〜》

その優しさが刺さる。
返事を打とうとして、手が止まった。

――どう返せばいいかわからない。

既読だけがついていく。
胸がまたぎゅっと痛んだ。

その夜、あなたの下の名前はずっと眠れなかった。

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