最近、あなたの下の名前は自分でもわかるくらいに笑うことが増えていた。
放課後、体育館の扉を開けると、
そんな声が当たり前のように飛んでくる。
その“当たり前”が、嬉しかった。
岩本くんがそう言って指差す。
返事をすると、自然と身体が動く。
もう説明はいらない。
自分がこの場所の“一部”になれている気がしていた。
練習はいつも以上に厳しかった。
何度も音を止めて、立ち位置を確認して、動きを揃える。
空気が張り詰める。
あなたの下の名前は壁際で静かに見守りながら、胸の奥が少しだけ苦しくなるのを感じていた。
――この人たちは、本気だ。
遊びじゃなくて、夢を賭けてる。
岩本くんの声で、ようやく空気が緩んだ。
佐久間くんが床に寝転び、
ラウールくんが笑う。
そんなやりとりを見て、あなたの下の名前は思う。
この人たちは、強い。
ぶつかっても、離れない。
――じゃあ私は?
ふと浮かんだ疑問を、慌てて振り払った。
休憩中。
あなたの下の名前がペットボトルを配っていると、渡辺くんがじっとこちらを見ていた。
そう聞くと
短く返ってくる
胸が、きゅっと縮んだ。
そう答えたけれど、自分でもよくわからなかった。
渡辺くんはそれ以上何も言わず、ペットボトルの蓋を開ける。
その沈黙が、やけに重かった。
その日の帰り道。
夕焼けが校舎を赤く染めていた。
声をかけてきたのは向井くんだった。
何気ないトーン。でも、優しい。
そう言いかけて、言葉が止まった。
平気、って何だろう。
笑えていれば?
ここに来られていれば?
答えが出ないまま、あなたの下の名前は視線を落とす。
向井くんはそれ以上踏み込まず、そう言った。
その“踏み込まなさ”が、逆に胸に刺さる。
家に帰って、ベッドに倒れ込む。
スマホには、誰からも連絡は来ていない。
――ここに来る前の私は、どうやって笑ってたっけ。
Snow Manといる時間は楽しい。
でも、ふとした瞬間、置いていかれそうになる。
この人たちの夢の中に、
あなたの下の名前の居場所は、本当にあるのだろうか。
体育館で聞いた音楽が、まだ耳の奥に残っている。
なのに、心は少しだけ冷えていた。
――近づくほど、怖くなる。
失うかもしれないと思うほど、
大切になっている証拠なのに。
あなたの下の名前は胸の前で手を握りしめた。
助けて、なんて。
そんな言葉、まだ言えなかった。
誰に言えばいいのかも、わからないまま。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。