第76話

続き
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2026/02/19 08:19 更新
リョウガside


正直、甘く見ていた。


少しくらい体調が悪くても、俺ならやり切れるだろう。
リーダーなんだから当然だろう。


そんな勝手な判断をして、誰にも言わずにダンスレッスンに参加したことを、今さらながら後悔していた。


今日のナンバーは、今までの中でも特に激しい。
フォーメーション移動も多く、体力を容赦なく削ってくる振り付け。


それなのに一時間近く踊り続けているのに、寒い。
身体の芯が冷えているみたいで、
汗もほとんど出ていない。


この時点で、さすがの俺でも「やばい」と思った。


視界の端がじわりと暗く滲む。
呼吸が浅い。
足が、自分のものじゃないみたいに重い。

りょうが
(倒れる前に……休ませてもらおう)


そう思って、隣にいたタクヤに声をかけようと
身体を向けた。


その瞬間、タクヤがぐらりと俺の方へ倒れ込んできた。

りょうが
……っ!?


咄嗟に両腕で受け止める。
けれど、自分も限界に近かったせいで、
踏ん張りがきかない。
そのまま一緒に床へ崩れ落ちた。


とっさに身体をひねって、自分が下になるようにする。
タクヤを守らなきゃ、という反射だった。
床に背中を打ちつけた鈍い衝撃。
肺の空気が一瞬抜ける。


それでも、そんなことより
目の前にある、タクヤの苦しそうな顔の方がきつかった。
息が荒く、額は熱で赤い。
唇は乾いていて、視線もどこか焦点が合っていない。


リーダーである自分よりも、ドラマや仕事で忙しくしていて。
いろんな現場を掛け持ちしながら、今日のレッスンにも来て。
それでも弱音を吐かず、ずっと踊っていた。
きっと、相当無理をしていたはずだ。

りょうが
……一回止めよう


誰に言うでもなく呟いて、タクヤを背負う。
正直、脚は震えていた。
でもそれを悟られたくなくて、歯を食いしばる。
ゆっくりとソファまで運び、慎重に寝かせた。

タクヤ
すみません……っ


熱のせいか、目を潤ませながら謝るタクヤ。
その周りで、みんなが一斉に動き出す。
水を取りに行く者、タオルを持ってくる者、冷えピタを探す者。

アロハ
タクヤくん、気持ち悪いのとかない?
ユーキ
大丈夫か?


タカシも真剣な顔で様子を見ている。
俺も、何かしなきゃ。
そう思っているのに、身体が言うことをきかない。


さっきのレッスンで、すでに限界だった。
その上、タクヤを背負ったせいで、体力はほとんど残っていない。


視界が揺れる。
耳鳴りがする。
それでも立っていようとした、そのとき。

ハル
リョウガくん、そこいるの少し邪魔かもしれないです


ハルの言葉。
悪気がないのは分かっている。
ただ、スペースを空けた方がいいというだけ。

りょうが
あ、ごめん
タカシ
リョウガ、疲れてんならあっち行っててええよ
カイ
お前も無理すんな


分かってるのに。

「邪魔」
「あっち行ってていい」
「無理すんな」

その言葉が、頭の中で勝手に変換される。


“何もできないなら、ここにいるな”
“リーダーなのに役に立ってない”


そんなふうに聞こえてしまう。
自分で自分を追い詰めているだけだって分かっているのに、
止められない。


胸の奥が、ぎゅっと締めつけられる。
ここにいる資格、あるのか?
リーダーなのに。
その言葉が、何度も何度も頭の中で反響する。

りょうが
……医務室から薬、もらってくる


誰に向けたのか分からないまま、
そう言って楽屋を出た。


正直あのままあそこにいたら、
泣いてしまいそうだった。
みんなの前で、弱いところを見せるわけにはいかない。


だから、理由を作った。
薬を取りに行く、という名目で。
廊下に出た瞬間、張りつめていた糸が少しだけ緩む。


静かな廊下。
さっきまでの喧騒が嘘みたいだ。
一歩踏み出した途端、膝ががくりと揺れた。

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