【橋本将生side】
その一言で、一気に空気が引き締まる。
俺はゴクリと息をのんだ。
こんなに冷たい声色の声を聞いたことがない。
そしてその顔を見た時、俺は悟った。
風磨くんが苛立ちを隠していないことに。
いや、風磨くんだけじゃない。
他のみんなも同じ顔をこちらに向けている。
風磨くんは嗤っていた。
そう吐き捨てられた言葉は、心の奥でミシャリと何かを潰した。
みんなの声も、とても冷たい。
みんな、笑っていない。
代わりに、嗤っている。
何も言えなかった。
メンバーみんなが、いやスタッフさん達も含めその場にいる全員が、色のない眼差しでこちらを見ていた。
俺は息が止まった気がした。
みんなは次々と片付けを済まして席を立つ。
実際に予定時間を30分ほどオーバーしていた。
メンバーもスタッフさん達も、誰も俺の方を向いてはくれなかった。立ち上がっても、誰も反応しない。
とうとう最後の扉の音が鳴った。
誰もいなくなった、空の部屋。
俺はそこでヘタリと座り込む。
みんなのあの表情。
失望やら呆れやらに満ちた表情が忘れられない。
正直言って、無理かもしれないとは思っていた。
でも、世の中は残酷で。
どんなに流行ったものでも、失速した途端に一気にそれは姿を消してしまう。
だからこそ、常に向上しなければならない。
みんなのニーズに応えて、大衆が楽しいと思えるように努力を重ねて、あらゆる人々の心に残ってもらわないといけないのだ。
たとえこの意見が通らなくても、そうなれるようにみんなと真剣に話したかっただけだった。
妥協をしたくなかった。
それだけだった。
それだけだった、はずなのに。
俺は立ち上がった。
地面にあった水滴は、見なかったことにした。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。