第2話

第二話
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2025/08/19 11:00 更新

午後、探偵社にて。

数名の職員が外回りや依頼の解決へ行っており、探偵社室内はとても静かだった。

鏡花はソファに座りながら国木田から渡された依頼の資料を読んでいたが、背後から近づいてきた足音に気づき、資料を机に置く。
中島 敦
…鏡花ちゃん、…あの、ちょっといいかな、

泉 鏡花
…敦。

敦は何処か緊張した面持ちで、鏡花の前に座った。

心なしか顔が赤い。手元には温かいお茶の入ったマグカップをふたつ、机に置く。

一つは鏡花の、もう一つは敦のだろう。
泉 鏡花
…ありがとう。…其れで、どうしたの。
泉 鏡花
何時もと様子が違う。

鏡花は敦の目を真っ直ぐ見て質問した。

敦の態度や様子が、何時もと違う事、然してぎこちない事に気付いていた。

敦は深呼吸をし、彼も真っ直ぐに鏡花の目を見て云った。
中島 敦
僕…赤ちゃんが出来たんだ。

泉 鏡花
………

鏡花の目が、ぱちくりと瞬いた。
泉 鏡花
……あか、…ちゃん、?

少し戸惑った様な声で、敦に質問した鏡花。
中島 敦
…うん、…男なのに、可笑しいって思うよね。

敦は少し緊張しながらも、淡々と言葉を続ける。
中島 敦
でも、あの依頼の時…異能のせいで、一寸…いや、大分複雑な事になっちゃって、…

敦は緊張しながらも、出来るだけ冷静に鏡花に話した。

自分の身体に起こっている事、…ポートマフィア幹部、中原中也との間に"生命いのち"が宿っている事、…
然してそして此から一緒に育てて行く事も。

鏡花は暫く無言だった。

然して――、…不意に、ぽつりと漏らす。
泉 鏡花
――…おめでとう。

鏡花の言葉に驚き、敦は彼女を見た。
中島 敦
…えっ?

驚いている敦を置き去りにし、鏡花は話し始める。
泉 鏡花
…少し、吃驚した。でも、赤ちゃんは喜ぶべきもの。其う教わった。
泉 鏡花
…私にはまだ分からないことが多い。…だけど、

鏡花は敦に小さく微笑む。

少しだけ、口元が照れている様にも見えた。
泉 鏡花
敦が大切にしたいもの、…私も一緒に、大切にしたい。

鏡花の言葉を聞いた敦の目に、涙が浮かぶ。
中島 敦
鏡花ちゃん…ありがとう、…本当に……

泉 鏡花
……其れに

彼女はそっと、敦のお腹に視線を落とした。
泉 鏡花
この子が産まれたら、きっと強くて優しくなる。
泉 鏡花
敦と…中原中也の子、二人の子なら、…守る力が、きっとあると思う。

中島 敦
………

泉 鏡花
…だから、何かあったら私にも云って。
泉 鏡花
敦は独りで抱え込む癖がある。

鏡花の言葉に少し微笑み乍、小さく頷いた。
中島 敦
…うん。頼りにしてるよ、鏡花ちゃん。

其の日、敦が寝落ちした後、そっとマフラーを彼の膝に掛けてくれた。

其れは彼女なりの、照れ隠しと優しさの証だった。

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