(……ダメ。今見られたら、私はもうみんなの「仲間」でいられない)
アルミンの透き通るような瞳に見透かされ、引きずり出されたあの夜の記憶。
脳裏にこびりついて離れない鉄の匂いと、
自分のものとは思えない悍ましい渇き。
鋭い声が鼓膜を叩き、思考の霧が弾け飛ぶ。
焦点の合わない視界がゆっくりと結像し、
そこに映り込んだのは馬を寄せて私の顔を覗き込むジャンの焦燥しきった顔だった。
ジャンの荒い息遣いが、被せられた上着越しに伝わってくる。
彼は私の手首を掴み、人目のない廃屋の影へと強引に引き込んだ。
その時、背後から馬の音が近づいてくる。
心臓が跳ねた。——リヴァイ兵長だ。
私の指先から溢れ出した光が、ジャンの上着を内側から押し上げる。
次の瞬間、ジャンの言葉をかき消すように、空気を震わせる鋭い音が響いた。
彼の肩越しに、純白の巨大な羽が、力強く、残酷なほど美しく解き放たれる。
舞い散る光の粒子と、周囲をなぎ倒すほどの風圧。
目の前で広げられた「人ならざる証」にジャンは言葉を失い、ただ呆然と私を見上げた。
その呟きを背中に受けながら、私はリヴァイ兵長とハンジさんを真っ直ぐに見据える。
もう、隠しごとはおしまいだ。
駆け寄ろうとするハンジを、リヴァイが首根っこを掴んで止める。
ハンジは真剣な瞳に戻り、小さく微笑んだ。
背中が熱いと思った次の瞬間、視界が黒と白が混ざったような羽毛に覆われた。
一番驚いたのは私自身だった。
背中から生えた巨大な二枚の羽が、バサリと大きく空を打つ。
目の前のジャンが、腰を抜かしたように地面に尻もちをつく。
その騒ぎを聞きつけて、アルミンとエレンが血相を変えて駆け寄ってきた。
駆け寄ってきた二人が、私の姿を見た瞬間、石のように固まる。
巨大な羽の風圧に皆が気圧される中、
エレンだけは食い入るようにその背中を見つめていた。
数日前の夜、ハンジさんが机に広げた古びた紙。
そこに描かれていた不気味な黒い紋章。
あの時感じた「この世のものとは思えない禍々しさ」が、今、目の前でレオナの羽として具現化している。
ポツリと零れたエレンの言葉に、隣にいたアルミンが弾かれたように振り向く。
エレンは一歩、また一歩とあなたの下の名前(カタカナ)に近づく。
恐怖に震えるジャンとは対照的に、その瞳には
「自分と同じ、人ならざる力を背負った者」への、共鳴に近い光が宿っていた。
リヴァイ兵長が馬を寄せ、冷ややかな視線を私に投げた。
私の正体がバレてしまったら、きっとすべてが終わる。
誰にも言えず、喉の奥まで出かかっていたその言葉を飲み込んできたのは
いつものように皆と笑い合えなくなるのが怖かったから。
もし、この狭い壁の中に私の居場所が許されないのなら。
……いっそこの羽で壁の外へ飛び去って、あの大地で、
誰にも知られず静かに消えてしまおう。
そんな覚悟を、絶望とともに固めていたのに。
ジャンの震える手。エレンの静かな視線。アルミンの悲しげな微笑み。
誰も私を化け物を見る目で見たりはしなかった。
むしろ、最初からすべてを知っていたかのような……
そんな穏やかな空気さえ流れていた。
言葉にはならなくても、彼らの瞳が真っ直ぐに私に語りかけてくる。
(——いいんだよ、あなたの下の名前(カタカナ)。あなたは、ここにいていいんだ)
その温かさに触れた瞬間、張り詰めていた心の糸が、音を立てて解けていった。
次回…
「番外編 王様ゲーム!!」公開します!!
どんな展開になるでしょうか!アンケート見るとやっぱリヴァイ兵長は人気ですねえ…
重い話ばっかりもあれなんで…ということでお楽しみに〜ᴗ ̫ ᴗ✨️
なこの投稿日時
▶︎基本は17時〜18時に公開できるように心掛けています🍀*゜











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!