帰ってきた
力の限り走り続けたから息が上がる
野薔薇ちゃんの顔を見てほっとして
荒い息のまま涙をこぼす
虎杖くんはそう言って
椅子から立ち上がり部屋の外へ走り出す
ごめんね
と言いたかった
だけど声が出なかった
腕には点滴が刺さっている
身体全体が痛い
痛いけど嬉しかった
涙がこぼれる
頑張って無い声を出して伝えようとする
ぎゅっと握られる手はとても暖かかった
しばらくして色んな人が部屋に入ってくる
病室のような部屋はあっという間にいっぱいになる
みんながみんな心配するように私を気遣ってくれた
嬉しくて涙が止まらない
それでまた皆を心配させた
よりいっそう思う
私の場所はここだ
この暖かい場所を私は守りたい
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。