愛莉side
「三宅ってほんとブスだよな」
「俺があの顔だったらマジ死ぬわ」
「うわこっち見たキッショ」
「えー愛莉ちゃんは可愛くないから
一緒に遊びたくなーい」
顔を見られる度に降りかかる罵詈雑言の雨。
ブス、キモい、死ね、消えろ、こっち見るな。
可愛く生まれなかっただけで生きる価値すらないと無慈悲に押された落印。
私だってなりたくてこんな顔選んだわけじゃない。
得意な勉強も運動もできなくなっていいから、せめて可愛い顔がほしい。
外に出ても恥ずかしくない綺麗な顔がほしい。
なーんて、子供の私じゃ叶えられるわけもない夢をいつも空想していた。
こんなことして何が楽しいのだろうか。
一体どんな徳を得るのだろうか。
今日も職員用のスリッパを履こう、そう考えて歩き出した時だった。
振り向くとポニーテールの可愛い顔つきの女の子が首を傾けて私を見つめていた。
勝手に話を進める女の子の手を反射的に掴んだ。
ハッとして掴んだ手を離した。
「三宅の机に当たったら三宅菌がつくぞ〜!w」
いつか言われた言葉を思い出して心臓がゾクゾクと脈打った。
こんな綺麗な子の手なんて触ったら何言われるか。
温かい手が私の手をぎゅっと握りしめた。
ピンク髪の人はため息をついて階段を登って行ってしまった。
2人の会話を遮り、私はおずおずと2人を見つめた。
こんなブス、一緒にいると恥ずかしいでしょ?
2人は目を合わせた。
そして女の子の方が笑顔でこちらを見た。
そんなふうに人に優しくされたのは初めてだった。
他人の温かい温度に触れたのも初めてだった。
それから2人は本当に休み時間一緒に過ごしてくれるようになった。
あなた先輩と凛くん、そして冴先輩はサッカーが好きらしく、私はあなた先輩と凛くんにサッカーを教えてもらったりもした。
私を虐めていた人達も、この3人には手出しできないらしく、虐めはどんどん減っていった。
人生で初めて褒めてもらえた。
凛くんから褒めてもらえたのも嬉しくて、だから私もサッカーをしたいと思った。
女子サッカークラブだけじゃ飽き足りず、男子のサッカークラブに混ざって、しかも活躍している。
勉強も運動もできて性格もよくて、おまけに顔まで可愛い。
どうして冴先輩を選んだのか分からないけど、ルックスだけだと2人はよくお似合いだ。
…羨ましい。
でも私は凛くんが好き。
例え報われない想いでも凛くんだけを見ていられるだけで幸せだから。
凛くんを見つめれば見つめるほど、その横にいるあなた先輩が羨ましくなる。
凛くんと同じ目線で話せるあなた先輩が羨ましい。
凛くんに心を許されているのが羨ましい。
私もあなた先輩みたいに何一つ欠落部分がなく綺麗に生まれてきたら、きっともっと自分に自信のある強い女の子になれたんだろうな。
そして、凛くんの横にいても恥ずかいなんて感情一つ生まれないのだろう。
助けてくれた人をひがむなんて、私は性格まで可愛くない。
冴先輩がいなくなって数週間が経った時、あなた先輩が過呼吸になって練習中に倒れた時があった。
女子サッカークラブで練習していた時のことだから、凛くんは知らない。
私は家に帰ってこのことをお母さんに話した。
あくまで噂でどこまでが本当かは分からない。
でもお母さんが聞いた話によると、
通訳の仕事をしていたあなた先輩のお母さんはあなた先輩を産んでから仕方なく仕事を辞めたらしく、
会社が倒産してしまってからあなた先輩のお父さんは暴力を振るうようになった。
子育てにも虐待にも疲れたお母さんは自殺、
お父さんは飲酒運転で人を轢き殺し自分も事故で死亡したらしい。
まだ小学生だったあなた先輩を残して。
羨ましい
私はその話を聞いた時、嫉妬と悦楽、二つの感情が浮き上がった。
あなた先輩の過去まで羨ましい。
そんな過去があれば誰だって同情したくなる。
なんて可哀想で哀れな可愛い子、と。
私の顔がブサイクで虐められていたこと、家計が厳しくてなんとか母親に許しを乞いながらサッカークラブを続けていることなんて、誰も同情しないだろう。
100人に聞けば100人があなた先輩が可哀想だと言うだろう。
こんな見た目でこんな貧乏な家に生まれるより、可愛く生まれて虐待された後イケメンな兄弟と仲良くできる人生の方が幸せに決まってるのに。
でも、同時に嬉しかった。
完璧に見えるあなた先輩にもそんな卑しい過去があったのだと。
あなた先輩は犯罪者の娘なんだ。
つまりあなた先輩にも穢らわしい血が流れている。
最低だとは自覚してる。
でもその時私は確かに悦びに浸った。
♡&☆please✨
待っててくれた皆さんありがとう♡

















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。