第9話

・呪いをもう一度
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2025/12/14 12:10 更新

"死ぬな"
まさかこの言葉を俺が言うだなんて想像していなかった。

長引く戦闘。地面に滴る血液。
息をしない人々。
「こっちだ!」
「ゾンビから離れて!」
声が重なる。またあの地獄が、血の味が蘇る。
「助けて!!レグルスプライド!」
そういえば、あの部隊の名前を呼ばれることは二度とないのか。
助けを呼んだ男性が無事に救出されるのを見届けながら、ポケットの中の青薔薇に触れた。
正面からレグルスプライドにやられたゾンビが飛んでくる。思わず片手で受け止めると、ゾンビがこちらを見た。何かに従うようにしか動かないゾンビ。
あの憎たらしい表情をもう一度見せてほしいと望むほど。殺したくなるほど嫌いだが、アイツらを殺したゾンビじゃない。

この戦いが終わったら、もう一度ゾンビと戦おう。
そして生きながら死んで、昔の願いを取り戻して。
彼らに青い薔薇でも、添えに行こう。


凶暴になり、レグルスプライドに群がるゾンビ達は、
糸がぷつりと切れたように、動かなくなった。



それが勝利を告げる鐘の音だった。


「やっと…終わった」
誰かがそう呟くと、各地で拍手喝采が起こった。
助かった。生きて帰れる。
歓喜の声が上がるなか、レグルスプライドは警戒を続けていた。
「まだ何が起きるか分からない!」
隊長らしき人がそう声を上げたが、避難指示や人々の興奮の声にかき消された。人が押し寄せ、レグルスプライドたちは散らばっていく。
(「Ado隊長、分隊長。やっと…!」)
思わずその場にしゃがみ込んだ。握った薔薇を抱きしめる。
そのとき、下を向いて動かなかったゾンビたちが
うめき声をあげた。
「は?」

近くにいた人を一人のゾンビが襲いかけたのをきっかけに、ゾンビたちはゆらゆらとどこかに向かって歩いて行く。
「隊長!!ゾンビたちが!!」
「逃げろ!!」
拍手喝采は一体何だったのか。
こんな結末を誰が望んでいたのか。
また壊されるのか。




『誰の本心にも耳を傾ける人に』




誰もを救う声は、なく

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