"死ぬな"
まさかこの言葉を俺が言うだなんて想像していなかった。
長引く戦闘。地面に滴る血液。
息をしない人々。
「こっちだ!」
「ゾンビから離れて!」
声が重なる。またあの地獄が、血の味が蘇る。
「助けて!!レグルスプライド!」
そういえば、あの部隊の名前を呼ばれることは二度とないのか。
助けを呼んだ男性が無事に救出されるのを見届けながら、ポケットの中の青薔薇に触れた。
正面からレグルスプライドにやられたゾンビが飛んでくる。思わず片手で受け止めると、ゾンビがこちらを見た。何かに従うようにしか動かないゾンビ。
あの憎たらしい表情をもう一度見せてほしいと望むほど。殺したくなるほど嫌いだが、アイツらを殺したゾンビじゃない。
この戦いが終わったら、もう一度ゾンビと戦おう。
そして生きながら死んで、昔の願いを取り戻して。
彼らに青い薔薇でも、添えに行こう。
凶暴になり、レグルスプライドに群がるゾンビ達は、
糸がぷつりと切れたように、動かなくなった。
それが勝利を告げる鐘の音だった。
「やっと…終わった」
誰かがそう呟くと、各地で拍手喝采が起こった。
助かった。生きて帰れる。
歓喜の声が上がるなか、レグルスプライドは警戒を続けていた。
「まだ何が起きるか分からない!」
隊長らしき人がそう声を上げたが、避難指示や人々の興奮の声にかき消された。人が押し寄せ、レグルスプライドたちは散らばっていく。
(「Ado隊長、分隊長。やっと…!」)
思わずその場にしゃがみ込んだ。握った薔薇を抱きしめる。
そのとき、下を向いて動かなかったゾンビたちが
うめき声をあげた。
「は?」
近くにいた人を一人のゾンビが襲いかけたのをきっかけに、ゾンビたちはゆらゆらとどこかに向かって歩いて行く。
「隊長!!ゾンビたちが!!」
「逃げろ!!」
拍手喝采は一体何だったのか。
こんな結末を誰が望んでいたのか。
また壊されるのか。
『誰の本心にも耳を傾ける人に』
誰もを救う声は、なく












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。