海斗と付き合い始めてから、通学の景色が少しだけ変わった。
今までは、当たり前みたいに3人で並んで歩いていた道。
でも今は——隣にいるのは、海斗だけ。
きっかけは、海人の一言だった。
__________日曜日の午後のバイト。
シフトが同じだった海人と休憩が重なって。
ちゃんと断ろうとしたら
すでに海人は気づいていた。
言葉を失うあなたに、海人は眉を下げた。
いつもと変わらない口調で、軽く笑いながら言ったその言葉。
でも、その裏にある優しさに気づかないほど、あなたは鈍くなかった。
本当はちゃんと言いたかった。
でも、言えば言うほど、何かが壊れそうで。
だから今は——受け止めるしかなかった。
家から駅までの道。
海斗は当たり前のように手を繋ぐ。
迷いゼロ。
その一言に、少しだけ照れながらも、あなたは手を重ねる。
ぎゅっと握られる指。
そのまま、自然に恋人繋ぎになる。
さっきから変な鼻歌。
信号で止まると変なリズムを取る。
即答。
嬉しさを隠す気ゼロの笑顔。
その横顔を見て、あなたもつられて笑ってしまう。
歩きながら、何度もちらっとこっちを見る。
目が合うたびに、にこって笑う。
それがくすぐったくて、でも嬉しくて。
さらっと言う。
もう、前みたいに誤魔化したりしない。
そのまっすぐさに、胸がじんわり熱くなる。
学校に着いてからも、距離は変わらない。
むしろ——
講義はもちろん隣だし、
ちょっとした移動も手を繋ぐ。
そんなやり取りをしていると、周りがざわつき始める。
「え、付き合ってるよねあれ」
「絶対そうじゃん」
ひそひそ声が聞こえる。
それに気づいて、あなたは少しだけ恥ずかしくなる。
小さく呟くと、海斗は一瞬だけ周りを見て——
そう言って、当たり前みたいに頭をぽんっと軽く撫でる。
でも、その手はどかない。
むしろ少しだけ優しくなる。
ぼそっと言われて、言葉が詰まる。
ほんとに、こういうのがずるい。















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!