…ドンドンドンドン…
白石「冴島さん、エピ入れて。」
冴島「はい。入れました。…でも白石先生…」
白石「いいから。」
冴島「でも…。」
緋山「どんな感じ?ってなんで白石が心マし
てるの?」
白石「だって、今は私よりも患者を…。」
緋山「その気持ちは分かるけど、白石の体は今一人じゃないの。分かる?白石のお腹には大事な命があるの。」
白石「うん。」
冴島「でも、白石先生患者を前にすると救命の顔になってすぐ頑張りすぎて無理をしますからね…。」
緋山「藍沢~、白石仮眠室で休ませてきて。今、休まないと流産するかもしれない。」
藍沢「また、心マしたんだな。分かった。白石、仮眠室に行くぞ。」
白石「え、でもまだ仕事が…。」
冴島「白石先生の仕事は藤川先生に頼みます。お願いしますよ。藤川先生。」
藤川「おう。任せろ。」
藍沢「じゃあ仮眠室に行くぞ。歩けるか?」
白石「うん。大丈夫。」
…フラッ…
藍沢「おっと…。危ない。」
白石「ごめん。」
緋山「多分、貧血だね。冴島、白石に点滴やってあげて。」
冴島「はい。」
藍沢「白石、恥ずかしいと思うが我慢しろ。」
白石「え…。う、うん。ごめん。」
藍沢「謝るな。よいしょ。…白石、また体重落ちたな。…悪阻なのは分かるがもう少し体重増やさないと…。」
白石「う、うん。」
緋山「白石、食べられないなら悪阻が治まるまで毎日点滴しよう。」
白石「でも、みんなに迷惑だよ…。」
藤川「白石、迷惑じゃないし、冴島の時もだったけど、一人で抱え込まないで辛いときは辛い、苦しいときは苦しいって言って。言えば必ず俺や藍沢、緋山、冴島の誰かしら助けに行くから。」
白石「うん。ありがとう。」
藍沢「じゃあ、仮眠室に運ぶぞ。」
白石「うん。」
それから1ヶ月。
白石先生は悪阻で何も口に出来ず、毎日点滴をしていた。
だが、やっぱり急変した患者が来ると救命の顔になって自分の今の状況を忘れてしまう。
…ドンドンドンドン…
白石「ヤバい、心停止した。冴島さん、エピ入れて。」
冴島「はい。」
緋山「ちょっと、白石。」
白石「ん?」
藍沢「白石、また心マしてたな。」
白石「あ…。」
冴島「藤川先生、白石先生と心マ変わって下さい。」
藤川「おう。白石先生変わる。」
白石「ごめん、藤川先生。」
藤川「俺こそ冴島に言われるまで気づかなくて悪い。」
緋山「白石、ここ座って。」
白石「う、うん。」
緋山「白石、悪阻治まったからって、本当は妊婦は心マしたらダメなんだからね。」
白石「う、うん。」
緋山「今、白石が無理をして頑張りすぎるとね、早産になっちゃうの。……白石、入院したい?」
白石「嫌だ。」
緋山「じゃあ、もう白石が心マをしない。心停止したら私か藍沢、藤川に頼む。……いい?約束だよ?」
白石「うん。分かった。」
藤川「よし、戻った。」
緋山「藍沢、頭の方先にやる?」
藍沢「ああ。」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。