第199話

#198 私は、私のまま
235
2026/08/20 11:09 更新
12月31日。

公開してから。

二日。

朝。

起きて。

最初に。

思った。

「…………」

静か。

隣。

見る。

SANA「…………」

寝てる。

昨日と。

同じ。

一昨日とも。

同じ。

私の腕。

抱えて。

ぐっすり。

「…………」

世界に。

交際を。

公表して。

ニュースになって。

SNSも。

大騒ぎして。

昨日は。

外で。

手まで。

繋いだ。

なのに。

朝は。

普通に。

来る。

SANA「ん……」

「…………」

SANA「あなたの下の名前……」

「ん?」

SANA「おはよ……」

「おはよ」

SANA「ちゅー……」

「朝から?」

SANA「朝やから♡」

「意味分からん🤣」

SANA「彼女やもん」

「その言葉」

「最近めっちゃ使うね🤣」

SANA「使えるようになったから♡」

「前から彼女だけどね」

SANA「でも今は」

目。

開く。

にこ。

SANA「公認♡」

「…………」

「はいはい」

SANA「はいはいちゃう!」

🤣

*

朝ごはん。

食べながら。

スマホ。

見る。

昨日。

ジヒョさんと。

チェヨンに。

あれだけ。

言われたから。

検索は。

してない。

検索は。

「…………」

SANA「あなたの下の名前」

「何」

SANA「何見てるん?」

「Instagram」

SANA「それ検索とほぼ一緒やん」

「違います」

SANA「何が🤣」

「向こうから来てるから」

SANA「言い訳🤣」

「🤣」

でも。

実際。

DM。

コメント。

フォロワー。

今までとは。

桁が。

違う。

「…………」

SANA「大丈夫?」

「うん」

SANA「ほんま?」

「…………」

「ちょっと」

SANA「ん?」

「変な感じ」

SANA「何が?」

「フォロワー」

SANA「増えた?」

「…………」

「めっちゃ」

SANA「どれくらい?」

「言わない」

SANA「なんで🤣」

「怖くなるから」

SANA「🤣」

*

もちろん。

ありがたい。

でも。

少し。

複雑。

私の。

写真を。

見たい人。

なのか。

サナの。

恋人を。

見たい人。

なのか。

分からない。

プロフィール。

開く。

そこには。

昨日までと。

同じ。

私の。

写真。

空。

光。

人。

沖縄。

東京。

何も。

変えてない。

「…………」

SANA「あなたの下の名前」

「ん?」

SANA「考えすぎてる顔」

「…………」

「私さ」

SANA「うん」

「これから」

SANA「うん」

「サナの恋人っていう人に」

「なるのかな」

SANA「…………」

「変な意味じゃないよ」

SANA「うん」

「サナのこと」

「好きだし」

「公表したことも」

「後悔してない」

SANA「うん」

「でも」

「私の写真より」

「サナの恋人ってことで」

「見られるようになるのかなって」

SANA「…………」

サナ。

少し。

考える。

そして。

SANA「なると思う」

「…………」

予想外。

「そこ否定してよ🤣」

SANA「だって」

SANA「なるやろ?」

「まあ……」

SANA「うちのこと好きな人が」

SANA「あなたの下の名前のこと気になって」

SANA「見に来ることもあると思う」

「うん」

SANA「でも」

「うん」

SANA「それでええんちゃう?」

「…………」

SANA「入口が」

SANA「うちでも」

「うん」

SANA「あなたの下の名前の写真見て」

SANA「好きになる人もおるかもしれんやん」

「…………」

SANA「逆に」

SANA「合わん人は」

SANA「見なくなるかもしれんし」

「うん」

SANA「でも」

サナ。

私を見る。

SANA「あなたの下の名前の写真は」

SANA「何も変わってへんやろ?」

「…………」

「うん」

SANA「じゃあ」

SANA「あなたの下の名前は」

SANA「あなたの下の名前のままでええやん」

「…………」

胸。

少し。

軽くなる。

「サナ」

SANA「ん?」

「たまに」

SANA「うん」

「めっちゃいいこと言うね」

SANA「たまに!?」

「🤣🤣🤣」

SANA「もう!」

*

その日。

メール。

確認。

する。

仕事関係。

何件か。

来てる。

中には。

やっぱり。

あった。

『SANAさんとの交際公表を受け――』

「…………」

閉じる。

SANA「何?」

「仕事」

SANA「嫌なやつ?」

「嫌じゃないけど」

「なんか」

「今はいいかな」

SANA「うん」

次。

開く。

『今回の発表を拝見し、ぜひお二人で――』

「…………」

閉じる。

SANA「早いな🤣」

「ね」

もちろん。

仕事。

ありがたい。

でも。

今。

受けたいか。

って言われたら。

違う。

「…………」

次。

開く。

「ん?」

SANA「何?」

「ちょっと待って」

メール。

読む。

そこには。

サナの。

名前。

一度も。

出てこない。

以前。

見てもらった。

展示。

その時に。

私の作品を。

覚えてくれていた。

会社から。

撮影の。

相談。

「…………」

SANA「あなたの下の名前?」

「仕事」

SANA「うん」

「前に」

「展示見てくれた人」

SANA「え?」

「写真」

「覚えてくれてたみたい」

SANA「…………」

文章。

読む。

『以前拝見した、光を捉えた作品がとても印象に残っており――』

「…………」

止まる。

SANA「あなたの下の名前」

「ん?」

SANA「顔」

「何」

SANA「泣きそう」

「泣かない」

SANA「昨日も言うてた🤣」

「今日は泣かない」

SANA「ぎゅーする?」

「…………」

「する」

SANA「するんや🤣」

「うるさい」

ぎゅ。

*

サナの。

肩。

顔。

埋める。

SANA「よかったな」

「うん」

SANA「あなたの下の名前の写真」

「うん」

SANA「ちゃんと見てくれてる人」

SANA「おるやん」

「…………」

「うん」

SANA「うちの恋人になる前から」

「…………」

「うん」

SANA「あなたの下の名前は」

SANA「写真家やったやん」

「…………」

「そうだね」

SANA「今もやで」

「うん」

SANA「これからも」

「…………」

「うん」

SANA「だから大丈夫」

「…………」

「ありがと」

SANA「うん♡」

少し。

離れる。

SANA「でも」

「何?」

SANA「うちの恋人でもある♡」

「台無し🤣」

SANA「なんで!」

「今いい話だったのに!」

SANA「両方やもん!」

「はいはい」

SANA「はいはいちゃう!」

*

午後。

久しぶりに。

一人で。

カメラ。

持って。

出る。

SANA「うちも行く」

「今日は一人」

SANA「…………」

「その顔やめて🤣」

SANA「なんで?」

「写真撮りたいから」

SANA「うちおっても撮れるやん」

「サナいると」

「サナ撮っちゃうじゃん」

SANA「…………」

「何その顔」

SANA「もう一回言って♡」

「嫌」

SANA「あなたの下の名前ー!」

「行ってきます🤣」

SANA「帰ってきてな!」

「帰ってくるわ!」

*

外。

カメラ。

首。

かける。

歩く。

光。

探す。

「…………」

カシャ。

影。

カシャ。

窓。

反射。

カシャ。

誰かの。

足元。

カシャ。

空。

「…………」

楽しい。

やっぱり。

楽しい。

誰と。

付き合っていても。

何人に。

フォローされても。

ニュースに。

名前。

出ても。

ファインダー。

覗いた瞬間。

そんなもの。

全部。

消える。

目の前に。

ある。

光。

だけ。

「…………」

カシャ。

これだ。

私。

これが。

好き。

*

少し。

歩いて。

小さな。

カフェ。

入る。

写真。

確認。

一枚。

一枚。

見る。

「…………」

いい。

今日の。

写真。

好き。

スマホ。

震える。

SANA
『まだ?』

「🤣」

『まだ』

SANA
『何時帰る?』

『分かんない』

SANA
『寂しい』

『数時間でしょ』

SANA
『数時間も』

「…………」

朝と。

同じこと。

言ってる。

『帰ったらぎゅーする』

送信。

「…………」

しまった。

既読。

一瞬。

SANA
『スクショした♡』

「…………」

『消して』

SANA
『嫌♡』

『酔ってないのに何でこんなの送ったんだ私』

SANA
『あなたの下の名前がうちのこと大好きやから♡』

『帰りません』

SANA
『嫌!!!!』

「🤣🤣🤣」

*

夕方。

帰宅。

玄関。

開ける。

「ただい――」

ぎゅっ。

「うわ!」

SANA「おかえり♡」

「待ち伏せ?」

SANA「約束」

「何が」

SANA「ぎゅー」

「…………」

「あ」

SANA「忘れてた?」

「ちょっと」

SANA「あなたの下の名前!」

「🤣」

ぎゅ。

抱きしめ返す。

SANA「ふふ♡」

「満足?」

SANA「うん」

「珍しい」

SANA「あとちゅー」

「増えた」

SANA「セット♡」

「そんなセットない🤣」

*

夜。

今日。

撮った。

写真。

パソコン。

開く。

サナ。

隣。

ぴったり。

「近い」

SANA「見たい」

「見えるでしょ」

SANA「もっと近くで♡」

「写真じゃなくて私に近づいてるじゃん」

SANA「バレた?」

「🤣」

一枚。

一枚。

見る。

SANA「あ」

「ん?」

SANA「これ好き」

「どれ?」

光。

差し込む。

何でもない。

道。

「…………」

「私も」

SANA「あなたの下の名前っぽい」

「そう?」

SANA「うん」

「何が?」

SANA「説明できへんけど」

「写真の感想として最低🤣」

SANA「ちゃうやん!」

SANA「なんか」

SANA「あなたの下の名前が見てる世界って感じ」

「…………」

止まる。

SANA「何?」

「いや」

「それ」

「結構嬉しい」

SANA「…………♡」

SANA「ほんま?」

「うん」

SANA「じゃあ」

SANA「ご褒美」

「何の?」

ちゅ。

「…………」

SANA「♡」

「自分がしたかっただけでしょ」

SANA「バレた♡」

*

その夜。

SNS。

一枚だけ。

写真。

載せる。

今日。

撮った。

光。

文章。

短く。

『今日も、光を探す。』

それだけ。

サナのことは。

書かない。

公表のことも。

書かない。

ただ。

写真。

一枚。

投稿。

スマホ。

置く。

「…………」

少しして。

また。

手。

伸びそうになる。

SANA「ダメ」

「まだ何もしてない」

SANA「コメント見ようとした」

「なんで分かるの🤣」

SANA「分かる♡」

「怖」

SANA「今日はもう終わり」

スマホ。

取られる。

「返して」

SANA「嫌」

「サナ」

SANA「あなたの下の名前」

「何」

SANA「こっち」

「?」

サナ。

両腕。

広げる。

SANA「スマホより」

SANA「こっち♡」

「…………」

「はいはい」

SANA「はいはいちゃう!」

でも。

その腕。

入る。

ぎゅ。

「…………」

SANA「あなたの下の名前」

「ん?」

SANA「今日楽しかった?」

「うん」

SANA「写真?」

「うん」

SANA「よかった」

「…………」

SANA「あなたの下の名前が」

SANA「写真撮ってる時」

SANA「一番あなたの下の名前っぽいから」

「…………」

「何それ」

SANA「好きってこと♡」

「全部そこに着地するね🤣」

SANA「だって好きやもん」

「はいはい」

SANA「また!」

「🤣」

*

公開して。

二日。

世界は。

少し。

変わった。

私を。

見る人が。

増えた。

サナの。

恋人として。

私を。

知った人も。

たくさん。

いる。

これから。

きっと。

もっと。

増える。

それが。

怖くなる日も。

あると思う。

でも。

今日。

分かった。

誰かが。

私を。

何と呼んでも。

私は。

私。

サナの。

恋人。

それも。

私。

写真家。

それも。

私。

どちらかを。

消す必要なんて。

なかった。

「…………」

SANA「あなたの下の名前」

「ん?」

SANA「明日」

「うん」

SANA「みんなでご飯行こって」

「みんな?」

SANA「うん♡」

「TWICE?」

SANA「うん」

「外?」

SANA「外♡」

「…………」

嫌な。

予感。

SANA「何その顔🤣」

「サナ」

SANA「ん?」

「一個だけ」

SANA「何?」

「外だからね」

SANA「うん」

「分かってる?」

SANA「何が?」

「…………」

絶対。

分かってない。

「イチャイチャ禁止」

SANA「…………」

「その間は何?」

SANA「どこからがイチャイチャ?」

「そこから確認する人は絶対やるじゃん!」

SANA「🤣🤣🤣」

「サナ!」

SANA「大丈夫♡」

「信用できない」

SANA「もう隠さんでええんやろ?♡」

「そうだけど!」

SANA「じゃあ大丈夫♡」

「何が大丈夫なの🤣」

SANA「ふふ♡」

「…………」

明日。

たぶん。

大変。

でも。

その時の私は。

まだ。

知らない。

外で。

サナが。

想像以上に。

甘々になることも。

私まで。

それに。

慣れてしまうことも。

そして。

帰り道。

知らない誰かの。

たった一言に。

二人揃って。

どうしようもないくらい。

嬉しくなることも。

まだ。

知らなかった。

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