12月31日。
公開してから。
二日。
朝。
起きて。
最初に。
思った。
「…………」
静か。
隣。
見る。
SANA「…………」
寝てる。
昨日と。
同じ。
一昨日とも。
同じ。
私の腕。
抱えて。
ぐっすり。
「…………」
世界に。
交際を。
公表して。
ニュースになって。
SNSも。
大騒ぎして。
昨日は。
外で。
手まで。
繋いだ。
なのに。
朝は。
普通に。
来る。
SANA「ん……」
「…………」
SANA「あなたの下の名前……」
「ん?」
SANA「おはよ……」
「おはよ」
SANA「ちゅー……」
「朝から?」
SANA「朝やから♡」
「意味分からん🤣」
SANA「彼女やもん」
「その言葉」
「最近めっちゃ使うね🤣」
SANA「使えるようになったから♡」
「前から彼女だけどね」
SANA「でも今は」
目。
開く。
にこ。
SANA「公認♡」
「…………」
「はいはい」
SANA「はいはいちゃう!」
🤣
*
朝ごはん。
食べながら。
スマホ。
見る。
昨日。
ジヒョさんと。
チェヨンに。
あれだけ。
言われたから。
検索は。
してない。
検索は。
「…………」
SANA「あなたの下の名前」
「何」
SANA「何見てるん?」
「Instagram」
SANA「それ検索とほぼ一緒やん」
「違います」
SANA「何が🤣」
「向こうから来てるから」
SANA「言い訳🤣」
「🤣」
でも。
実際。
DM。
コメント。
フォロワー。
今までとは。
桁が。
違う。
「…………」
SANA「大丈夫?」
「うん」
SANA「ほんま?」
「…………」
「ちょっと」
SANA「ん?」
「変な感じ」
SANA「何が?」
「フォロワー」
SANA「増えた?」
「…………」
「めっちゃ」
SANA「どれくらい?」
「言わない」
SANA「なんで🤣」
「怖くなるから」
SANA「🤣」
*
もちろん。
ありがたい。
でも。
少し。
複雑。
私の。
写真を。
見たい人。
なのか。
サナの。
恋人を。
見たい人。
なのか。
分からない。
プロフィール。
開く。
そこには。
昨日までと。
同じ。
私の。
写真。
空。
光。
人。
沖縄。
東京。
何も。
変えてない。
「…………」
SANA「あなたの下の名前」
「ん?」
SANA「考えすぎてる顔」
「…………」
「私さ」
SANA「うん」
「これから」
SANA「うん」
「サナの恋人っていう人に」
「なるのかな」
SANA「…………」
「変な意味じゃないよ」
SANA「うん」
「サナのこと」
「好きだし」
「公表したことも」
「後悔してない」
SANA「うん」
「でも」
「私の写真より」
「サナの恋人ってことで」
「見られるようになるのかなって」
SANA「…………」
サナ。
少し。
考える。
そして。
SANA「なると思う」
「…………」
予想外。
「そこ否定してよ🤣」
SANA「だって」
SANA「なるやろ?」
「まあ……」
SANA「うちのこと好きな人が」
SANA「あなたの下の名前のこと気になって」
SANA「見に来ることもあると思う」
「うん」
SANA「でも」
「うん」
SANA「それでええんちゃう?」
「…………」
SANA「入口が」
SANA「うちでも」
「うん」
SANA「あなたの下の名前の写真見て」
SANA「好きになる人もおるかもしれんやん」
「…………」
SANA「逆に」
SANA「合わん人は」
SANA「見なくなるかもしれんし」
「うん」
SANA「でも」
サナ。
私を見る。
SANA「あなたの下の名前の写真は」
SANA「何も変わってへんやろ?」
「…………」
「うん」
SANA「じゃあ」
SANA「あなたの下の名前は」
SANA「あなたの下の名前のままでええやん」
「…………」
胸。
少し。
軽くなる。
「サナ」
SANA「ん?」
「たまに」
SANA「うん」
「めっちゃいいこと言うね」
SANA「たまに!?」
「🤣🤣🤣」
SANA「もう!」
*
その日。
メール。
確認。
する。
仕事関係。
何件か。
来てる。
中には。
やっぱり。
あった。
『SANAさんとの交際公表を受け――』
「…………」
閉じる。
SANA「何?」
「仕事」
SANA「嫌なやつ?」
「嫌じゃないけど」
「なんか」
「今はいいかな」
SANA「うん」
次。
開く。
『今回の発表を拝見し、ぜひお二人で――』
「…………」
閉じる。
SANA「早いな🤣」
「ね」
もちろん。
仕事。
ありがたい。
でも。
今。
受けたいか。
って言われたら。
違う。
「…………」
次。
開く。
「ん?」
SANA「何?」
「ちょっと待って」
メール。
読む。
そこには。
サナの。
名前。
一度も。
出てこない。
以前。
見てもらった。
展示。
その時に。
私の作品を。
覚えてくれていた。
会社から。
撮影の。
相談。
「…………」
SANA「あなたの下の名前?」
「仕事」
SANA「うん」
「前に」
「展示見てくれた人」
SANA「え?」
「写真」
「覚えてくれてたみたい」
SANA「…………」
文章。
読む。
『以前拝見した、光を捉えた作品がとても印象に残っており――』
「…………」
止まる。
SANA「あなたの下の名前」
「ん?」
SANA「顔」
「何」
SANA「泣きそう」
「泣かない」
SANA「昨日も言うてた🤣」
「今日は泣かない」
SANA「ぎゅーする?」
「…………」
「する」
SANA「するんや🤣」
「うるさい」
ぎゅ。
*
サナの。
肩。
顔。
埋める。
SANA「よかったな」
「うん」
SANA「あなたの下の名前の写真」
「うん」
SANA「ちゃんと見てくれてる人」
SANA「おるやん」
「…………」
「うん」
SANA「うちの恋人になる前から」
「…………」
「うん」
SANA「あなたの下の名前は」
SANA「写真家やったやん」
「…………」
「そうだね」
SANA「今もやで」
「うん」
SANA「これからも」
「…………」
「うん」
SANA「だから大丈夫」
「…………」
「ありがと」
SANA「うん♡」
少し。
離れる。
SANA「でも」
「何?」
SANA「うちの恋人でもある♡」
「台無し🤣」
SANA「なんで!」
「今いい話だったのに!」
SANA「両方やもん!」
「はいはい」
SANA「はいはいちゃう!」
*
午後。
久しぶりに。
一人で。
カメラ。
持って。
出る。
SANA「うちも行く」
「今日は一人」
SANA「…………」
「その顔やめて🤣」
SANA「なんで?」
「写真撮りたいから」
SANA「うちおっても撮れるやん」
「サナいると」
「サナ撮っちゃうじゃん」
SANA「…………」
「何その顔」
SANA「もう一回言って♡」
「嫌」
SANA「あなたの下の名前ー!」
「行ってきます🤣」
SANA「帰ってきてな!」
「帰ってくるわ!」
*
外。
カメラ。
首。
かける。
歩く。
光。
探す。
「…………」
カシャ。
影。
カシャ。
窓。
反射。
カシャ。
誰かの。
足元。
カシャ。
空。
「…………」
楽しい。
やっぱり。
楽しい。
誰と。
付き合っていても。
何人に。
フォローされても。
ニュースに。
名前。
出ても。
ファインダー。
覗いた瞬間。
そんなもの。
全部。
消える。
目の前に。
ある。
光。
だけ。
「…………」
カシャ。
これだ。
私。
これが。
好き。
*
少し。
歩いて。
小さな。
カフェ。
入る。
写真。
確認。
一枚。
一枚。
見る。
「…………」
いい。
今日の。
写真。
好き。
スマホ。
震える。
SANA
『まだ?』
「🤣」
『まだ』
SANA
『何時帰る?』
『分かんない』
SANA
『寂しい』
『数時間でしょ』
SANA
『数時間も』
「…………」
朝と。
同じこと。
言ってる。
『帰ったらぎゅーする』
送信。
「…………」
しまった。
既読。
一瞬。
SANA
『スクショした♡』
「…………」
『消して』
SANA
『嫌♡』
『酔ってないのに何でこんなの送ったんだ私』
SANA
『あなたの下の名前がうちのこと大好きやから♡』
『帰りません』
SANA
『嫌!!!!』
「🤣🤣🤣」
*
夕方。
帰宅。
玄関。
開ける。
「ただい――」
ぎゅっ。
「うわ!」
SANA「おかえり♡」
「待ち伏せ?」
SANA「約束」
「何が」
SANA「ぎゅー」
「…………」
「あ」
SANA「忘れてた?」
「ちょっと」
SANA「あなたの下の名前!」
「🤣」
ぎゅ。
抱きしめ返す。
SANA「ふふ♡」
「満足?」
SANA「うん」
「珍しい」
SANA「あとちゅー」
「増えた」
SANA「セット♡」
「そんなセットない🤣」
*
夜。
今日。
撮った。
写真。
パソコン。
開く。
サナ。
隣。
ぴったり。
「近い」
SANA「見たい」
「見えるでしょ」
SANA「もっと近くで♡」
「写真じゃなくて私に近づいてるじゃん」
SANA「バレた?」
「🤣」
一枚。
一枚。
見る。
SANA「あ」
「ん?」
SANA「これ好き」
「どれ?」
光。
差し込む。
何でもない。
道。
「…………」
「私も」
SANA「あなたの下の名前っぽい」
「そう?」
SANA「うん」
「何が?」
SANA「説明できへんけど」
「写真の感想として最低🤣」
SANA「ちゃうやん!」
SANA「なんか」
SANA「あなたの下の名前が見てる世界って感じ」
「…………」
止まる。
SANA「何?」
「いや」
「それ」
「結構嬉しい」
SANA「…………♡」
SANA「ほんま?」
「うん」
SANA「じゃあ」
SANA「ご褒美」
「何の?」
ちゅ。
「…………」
SANA「♡」
「自分がしたかっただけでしょ」
SANA「バレた♡」
*
その夜。
SNS。
一枚だけ。
写真。
載せる。
今日。
撮った。
光。
文章。
短く。
『今日も、光を探す。』
それだけ。
サナのことは。
書かない。
公表のことも。
書かない。
ただ。
写真。
一枚。
投稿。
スマホ。
置く。
「…………」
少しして。
また。
手。
伸びそうになる。
SANA「ダメ」
「まだ何もしてない」
SANA「コメント見ようとした」
「なんで分かるの🤣」
SANA「分かる♡」
「怖」
SANA「今日はもう終わり」
スマホ。
取られる。
「返して」
SANA「嫌」
「サナ」
SANA「あなたの下の名前」
「何」
SANA「こっち」
「?」
サナ。
両腕。
広げる。
SANA「スマホより」
SANA「こっち♡」
「…………」
「はいはい」
SANA「はいはいちゃう!」
でも。
その腕。
入る。
ぎゅ。
「…………」
SANA「あなたの下の名前」
「ん?」
SANA「今日楽しかった?」
「うん」
SANA「写真?」
「うん」
SANA「よかった」
「…………」
SANA「あなたの下の名前が」
SANA「写真撮ってる時」
SANA「一番あなたの下の名前っぽいから」
「…………」
「何それ」
SANA「好きってこと♡」
「全部そこに着地するね🤣」
SANA「だって好きやもん」
「はいはい」
SANA「また!」
「🤣」
*
公開して。
二日。
世界は。
少し。
変わった。
私を。
見る人が。
増えた。
サナの。
恋人として。
私を。
知った人も。
たくさん。
いる。
これから。
きっと。
もっと。
増える。
それが。
怖くなる日も。
あると思う。
でも。
今日。
分かった。
誰かが。
私を。
何と呼んでも。
私は。
私。
サナの。
恋人。
それも。
私。
写真家。
それも。
私。
どちらかを。
消す必要なんて。
なかった。
「…………」
SANA「あなたの下の名前」
「ん?」
SANA「明日」
「うん」
SANA「みんなでご飯行こって」
「みんな?」
SANA「うん♡」
「TWICE?」
SANA「うん」
「外?」
SANA「外♡」
「…………」
嫌な。
予感。
SANA「何その顔🤣」
「サナ」
SANA「ん?」
「一個だけ」
SANA「何?」
「外だからね」
SANA「うん」
「分かってる?」
SANA「何が?」
「…………」
絶対。
分かってない。
「イチャイチャ禁止」
SANA「…………」
「その間は何?」
SANA「どこからがイチャイチャ?」
「そこから確認する人は絶対やるじゃん!」
SANA「🤣🤣🤣」
「サナ!」
SANA「大丈夫♡」
「信用できない」
SANA「もう隠さんでええんやろ?♡」
「そうだけど!」
SANA「じゃあ大丈夫♡」
「何が大丈夫なの🤣」
SANA「ふふ♡」
「…………」
明日。
たぶん。
大変。
でも。
その時の私は。
まだ。
知らない。
外で。
サナが。
想像以上に。
甘々になることも。
私まで。
それに。
慣れてしまうことも。
そして。
帰り道。
知らない誰かの。
たった一言に。
二人揃って。
どうしようもないくらい。
嬉しくなることも。
まだ。
知らなかった。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!