- HEUNINGKAI Side -
いや、誰がどう見たってご機嫌でしょ。
隣の席でヨンジュニヒョンの愉快な鼻歌を聴きながら、
僕はスマホのゲーム画面をいじる。
車に乗り込んでからというもの、
ヒョンはずっとこの調子だ。
マネージャーのソジュニヒョンは、右折する車の
ハンドルを切りながら僕に聞いてくる。
きっと理由は、さっき会ったあなたさんだ。
ヒョンは…、もちろん僕たちもだけど、自分たちのファンに
会えるのが本当に嬉しい。
僕たちのことを応援してくれるMOAの姿が
メンバー全員大好きだ。
そして、自分たちが演技をしている姿をこんな間近で
見てもらえるなんてステージ以外で初めてのことで、
ヨンジュニヒョンは、相当嬉しかったんだと思う。
だけど…
僕がそう言ったのと同時、別の方に意識が向いていたせいか
僕の指が変なところに当たって、氷河から落ちて
ゲームオーバーになってしまうペンギンのキャラクター。
「はぁ…」と思わず浅いため息をついてしまう。
ヒョンはそう聞き返してくる。
あぁほら。
やっぱりこのヒョンは自分が普段からどんな態度を
とっているか分かってない。
ヨンジュニヒョンの目が泳ぐ。
めっちゃ動揺してんじゃんね。
「かわいい」って言ったことには意識あるんだろうけど、
それを実際にしちゃうことが本当に無意識なんだろうなって
そう思う。
そう…。
ヒョンがただ、女の子たちに対してあんな事を言うだけなら
別になんとも思わないし、注意もしない。
なんなら、アイドルの僕にとってはヒョンみたいに
ほいほい女の子たちを落とせるのが羨ましいくらいだ。
でも、ヒョンのこんな性格のせいで僕らの会社の
女性社員の数がどんどん減っていってるのは紛れもない
事実で…
困ったように頬をぽりぽりとかくヒョンのことを
睨みつけてしまう。
前に男性社員さんたちが話してたのを聞いたことがある。
ヨンジュニヒョンのことを、"女性社員キラー"って
言ってたんだから。
僕らと同年代の女性社員は皆、
ヒョンに落ちちゃう人がほんとに多いんだって。
と、面白そうに笑うソジュニヒョン。
あの撮影の日も確かにヨンジュニヒョン、その新人の
女性社員さんのこと気にかけてたしな。
でも、それと同時に他の新人の
男性社員さんたちのことだって気にかけてた。
ヨンジュニヒョンは面倒見が良くて、優しくて、
頼りになるあたたかい人。
男女誰に対しても平等に接してくれて、
一度会った人のことは忘れない。
…ほんとに憎めない人、悪い男だ。
ヒョンは。
だから、それ故に甘えちゃう人たちだっているし、
こーやってヒョンのこと好きになってく人だっているし。
大体、もう容姿から人を引き付けちゃうんだよ
ヨンジュニヒョン。
ヨンジュニヒョンの綺麗な澄んだ目が
くるっと丸くなる。
僕は、本当にこの目に弱い…。
ムスッとしたまま車の外の景色に目線を移せば、
丁度"HYBE"と大きく書かれた建物に到着する。
運転を終えたソジュニヒョンは、
車のロックを解除してくれる。
ヒョンは、運転席の方ににこっと笑ってそう言うと、
自分の荷物を持って車から降りる。
ねえ、ヨンジュニヒョン…。
僕は、あなたが優しすぎて傷ついてしまうのが怖い。
ヒョンは、僕たちメンバーがどんな想いで
あなたを心配してるか、知らないでしょ…?
ヒョンが、車を降りたところで止まっている僕を見て
不思議そうな顔をする。
僕は方から下げているカバンの紐をぎゅっと握って
ヒョンの元へ走った。













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。