西園寺視点
淡々とした日常にたった一つ色が入った瞬間があった。
娘達が生まれた時だ。
長女の名前は麗花。
私が決めた名ではない。
妻の両親。
あのクソ親父が決めた名だ。
あいつと出会った日から俺の人生が全て狂った。
普通の幸せ。
普通の人生。
そんなもの送ることなんてできなくなった。
ただ俺は普通になりたかっただけだったのに、
愛する妻、愛する娘とただ普通の幸せを送りたかっただけなのに、
娘の名前は不覚にも好きだとおもっていた。
彼女は美しく咲く花のように私の世界に色を持たせてくれた。
2人目の娘であるあおいを出産した時妻は亡くなった。
そしてあおいと麗花は私の元から離されとうとう全て失った。
まだ麗花は6歳、あおいも生まれたばかりなのに、
その時だろう私は本当の意味で人間じゃなくなった。
仕事である噂を耳にした。
私はその時嫌なことを考えた。
感情がないアンドロイドに感情を与えることによってもしかしたら妻の複製を作れるのではないかと、
そして娘達も私の元へきっと戻って来てくれるのではないかと、
私は何も考えてなかった。
ただ体が勝手にその大学へ向かっていた。
アンドロイドを手に入れるのはそう難しいことではなかった。
国家権力を使い何人もの人間を殺した。
でもたった1人、
アンドロイドの目の前で殺した少女。
その子の名は西園寺 麗花と言ったらしい、
私は絶望した。
自分の愚かさに無能さに、
結局私は何もできない愚か者なんだと何度も何度も自分を責めて、
私が取り返しのつかない場所まで来たことに気がつくのはそう遅くなかった。
今日私は防衛大臣直々にお呼び出しがかかった。
ついにバレたのだろう。
やっと、
やっと解放される、
ドンとくる低い声。
威圧感に押しつぶされそうになりながらも私はしっかりとした足取りで立ち大臣の瞳を見つめる。
どうして娘を、?
あおい、麗花、
大臣から言い渡されたのはそれだけで私の心はなぜか悲しみだけでなくほんの少しの安堵、そしてただただ広がる無、
それらの感情がじわじわと胸を支配していた。
私は気がつくと膝から崩れ落ちて泣いていた。
私が望んだのはただ普通の幸せだったのに、
私は一体どこで間違えたのだ、
帰り道、
帰る家などないが、
私の目に入ったのは大きな橋だった。
下には落ちたら間違いなく即死の川。
何も考えず私の体は橋の上に立っていた。
大きく両手を広げる。
上を見上げると美しくひかる星空。
黒くだけどどこか青く光り輝くその姿にいつのまにか
あおいと麗花を重ねてしまっていた。
俺の目はもう涙でいっぱいで飛び降りようとした。
怖いな、
あんだけ殺しておいたのに、
自分が死ぬときに思うことじゃねぇよな、
飛び降りた瞬間誰かに手を掴まれた。
華奢な少女だった。
その子は一生懸命に俺を引き上げて助けようとした。
俺はその姿にますます泣きたくなりつつ少女に言った。
少女は私の娘を知っているようなことを言った。
私はこの少女に興味が湧き死ぬ前に少しだけ話したいと思ってしまった。
そして橋の上まで上がると少女は消耗し切っていてその場に崩れ落ちて「ハァハァ」と荒い呼吸で話し出した。
もちろん忘れるはずのない言葉だった。
俺に言っているものじゃない。
アンドロイドに言って言ったものであったとしても、
え、どうして、
そんなこと言わないでくれ、
麗花、
麗花の声が聞こえたと思って周りを見渡したがやっぱりいないよな、
俺の目からは溢れんばかりの涙が溢れ目の前の少女に慰められながらその腕の中で小一時間は泣いてしまった。
そういうと少女はニコッと笑って立ち去ろうとした。
私は少女の手を掴んで彼女を引き止めた。
少女は少し考えて優しい笑顔を向けて、
そう言うと彼女は去ってしまった。
斎川 あおい か、
ありがとういつか遠くない未来でまた君と出会えることを願ってる、
続く


















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。