その日、空がやけに高かった。
ニュースは淡々としていた。
続報はなく、解説も短い。
「田中樹は姿を消した」
それだけが、事実として残った。
誰も、理由を断定しなかった。
できなかった。
最後に彼を見た人は、口を揃えて言う。
静かだった、
と。
叫びもなく、
怒りもなく、
迷いすらない顔だった。
まるで、
ずっと先に決めていた場所へ向かうみたいに。
「どこへ行くんですか」
そう聞かれた時、
樹は少しだけ空を見上げたという。
答えは、なかった。
ただ、視線が、上にあった。
雲が流れて、
風が強くて、
地上は騒がしかった。
でも、その騒がしさは、
もう彼の世界じゃなかった。
後から、人は意味を探す。
罪とか、罰とか、後悔とか。
救いがあったのか、なかったのか。
でも、どれも憶測だ。
確かなのは、
彼が最後まで、振り返らなかったこと。
壊れた世界を、
正しいと信じきったまま、
それ以上の説明を拒んだこと。
「飛んだんだと思う」
誰かが、そう言った。
比喩なのか、
現実なのか、
もう、どうでもよかった。
ただ、
地上から見上げた空が、
異様なほど、きれいだった。
泣きたかったのかもしれない。
叫びたかったのかもしれない。
でも、彼は選ばなかった。
重力のある世界から、
意味を求められる場所から、
ゆっくり、切り離されていった。
田中樹は、
空に行った。
それ以上でも、
それ以下でもない。
残されたのは、
説明できない静けさと、
見上げるしかない青だけだった。
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ここまで読んでくださって本当にありがとうございました。
切ないお話を作ってみました。
髙地も樹も似てるところがあるなと思った2人だったので2人をペアにしました。
MILE SixTONESきましたね!
YouTubeとかテレビも協力体制がすごくて
最高のデビュー日になりそうです。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。