翌日の夕方。
保科は書類業務終わりに、鳴海は書類業務サボりに、各々あなたの名前の病室へと向かっていた。
ドアの前で鉢合わせて互いにドスの効いた睨みを見せるが、今はそれどころじゃないとやめて病室に入る。
中では、何度も見たいと願い続けた光景があった。
もっもっとりんごを食べているあなたの名前がいた。
数分後。
こっぴどい説教が終わり、満身創痍の三人。
2人とも、あなたの名前を抱きしめる。愛おしい宝物を壊さぬよう、始終丁寧に。
あなたの名前が目覚めたことで二人とも、いつもの調子を取り戻した。
流石宗四郎、こういうところは昔っから抜け目ないわ。
せやけどキスはあかん。一応これでもファーストまだやねん。
いや待て。まだ回避法はあるはずや。
せや!宗四郎と鳴海は犬猿やから…
その後、じゃんけんで勝った方が先ということになった。
宗四郎が見られたくないということで鳴海はすごすごと出て行った。
ドアを閉めた後、こちらに向き直る宗四郎。
ベッドの縁に座り、するりと私の頬を撫でた宗四郎は心底愛おしそうに見つめてきた。
なんやねん、その目。開眼はずるいやろ。
大人しく目を閉じる。
てっきり宗四郎の事やから深い方してくるんちゃうか、なんて身構えていたら。
それは思ったよりずっと浅いキスやった。ただ慈しむように、愛おし気にするキス。
5秒くらいされてから、離された。
宗四郎は部屋から出て行き、鳴海が入ってきた。
鳴海は不満いっぱいといった様子で椅子に座った。
ベッドに乗り、壁に手を突いて私を閉じ込めるような体勢になる。
見下ろされたまま、すんとした顔で見上げる。
ふと、目を細めて目線を合わせられた。
躑躅色の眼光は、怪獣に向けている鋭さはなく。ひどく、恋慕を宿していた。
目を閉じれば、頬に手が添えられ、額を合わせられる。
本当にあの鳴海から発せられた言葉かと耳を疑いたくなるようなセリフと、真剣な顔。
柄にもなく照れてしもたのは内緒。ちゅ、ちゅ、と角度を変えてキスされる。
宗四郎と同じ5秒後に口が離れると、つうと銀の糸が伝った。
またアホなこと言い出す前に病室から蹴っ飛ばしてドアを閉めた。
ドアの向こうから、鳴海の叫び声と長谷川副隊長の声が聞こえた。
そういえば、仕事サボって来た言うとったな。
ドガシャーンと音がした後、引きずられる音が聞こえた。

















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。