前の話
一覧へ
次の話

第1話

#夏の初め、おともだち。
23
2026/02/27 05:47 更新
みんなが夏服を着るようになってきた朝。


わたしは一番廊下側、一番前の席でひとりふてくされていた。


前の席に戻して欲しかった。


なんだってこんな罰ゲームみたいな席に。


伸びた前髪を留めているハートのヘアピンをこねくり回しながら、黄ばんだ壁を見つめる。
B
あ、あの、
A
はい?
B
あ、ごめんなさい、プリント、
A
あ、ごめん
消しカスだらけの色褪せた机にはプリントが5枚置いてあった。


後ろに回さなくちゃいけないやつ。


やばい、いつの間に。


あわててプリントを1枚めくり、残りをその子に渡した。
B
ありがと、


ちょっと気まずい間が空く。
B
ヘ、ヘアピンかわいいね!
A
A
あ、ありがと、?
ちょっとそっけない返事になってしまった。


日頃のコミュニケーション不足がバレてしまう…。
B
あのっ、Aさんさ、
B
前は窓側の席だったでしょ、?
B
頬杖ついて外見てるの、かっこいいな、って思ってた、!!
A
!?






A
ぅえぁ、
上手く言葉が出ない。


予想外の褒め言葉に気恥ずかしさが限界を超えていた。
B
…だっ、だからっ、!
B
近くの席になれて嬉しい!!
A
…ありがと、、(?)
なにかわたしも「こちらこそ近くの席で嬉しい!」的な反応をしなければ…。
A
わたしも、
A
A
プリント来てないよって言ってくれてよかった、!
あれ?


なんかこれは自分でも
A
一番前の席、、初めてだから、忘れてたらまた言ってくれると嬉しいな、、?
何かがズレてしまったような、、




B
うん!
B
わ、わたし、話すの苦手なのに、っ、おしゃべりだから、迷惑かけちゃうかもしれないけど、
B
いっぱい、い、話しかけるから、んっ、迷惑だったら、言ってね、!!
A
…うん!
ちょっと嬉しくなった。


少し鈍感そうな子だが、気が合いそうだ。


クラスでどういう立ち位置にいる子なのか、興味がなかったのか全然分からないのが申し訳ない。


友達、なれるかな。
朝のHR


この時間苦手なんだよな。


早く帰りたい、! ってなっちゃう。
担任
今日は、先週から話していた通り、このクラスに新しい生徒がやってきます
つまり、転校生と。


先生の隣には、カッチリうちの制服を身にまとった女の子がいる。


しかし近眼のせいで顔は良く見えない。


ってか、そんなの聞いてたっけ?


ダメだな。最近ボーッとしてるみたいだ。





B
っび、Bと言います!
B
〇〇中学から来ました!
B
よろしくお願いします!
担任
Bさんの席は、気づいた人もいるかもしれないが、今回の席替えに組み込んでありますのでー
担任
そこね
B
は、はい!
Bさんはおもむろにこちらにやってきて、にっこりと微笑んだ。



こわ。


担任
はい!
担任
じゃあ今日のHRはここまでで!
担任
帰りのときに連絡事項あるから、日直さん呼びに来てねー
A
…ねえ、Bさん、
B
A
なんでわたしが窓側の席にいたって知ってたの?
B
…聞きたい?
A
うん
B
ふふ、窓の外が見たいなーって顔してたからね、!
A
簡単に手の内を見せるわけにはいかないか。
B
それと、机の片側にしか荷物が掛かってなかったから?
B
あとは、単純に考えてこの教室って席が8列あるから、1/8の確率で一番窓側の席だったことになるじゃん?
A
……、
ごもっともだが、それだけか?


前の席を担任に知らされていたのかと思ったが、そうじゃないのか?
B
これからよろしくね!、Aさん
A
…よろしく
B
あ、トイレってどこ?
A
えっと、廊下を…右に行ったところの突き当たり
朝の連れショングループに声をかけに行くのだろう。


人脈作りには最適そうな感じがする。
B
あっ、ありがとう!
B
緊張しちゃって、っ、授業の前に行っときたいなって、思って!
スイッチ入ったな。


確かに今は一軍の視線がこちらに向いている。


いや、それをそんなに気にするか?
A
うん、
Bさんは少しキョロキョロしながらトイレに行った。


トイレの場所は知らなかったのかな。


なおさら分からない。


なぜ、知っていたのか。


なぜ、わたしにわざわざ言ったのか。


…とりあえず、「いっぱい話しかけるね!」と言われてしまったのは確かだ。


さて、これからの生活、どうなることやら。

プリ小説オーディオドラマ