
3組に来たの、はじめてかも。
なんか涼しくていいっすね!
返事できない系だった。
Bいないのかな?
あ、いた。
あたしは1枚。
父親なんていない。
いや、死に別れたとか離婚した人には失礼だけど、わが家の収入の6割が母親なのに、父親はめったに帰ってこなくて休日も家事さえしないなんてもういないってことじゃん?
なんで知ってんのかって?
夜中にケンカしてる声が聞こえてくるからね。聞きたくないと思えば思うほど、内容まで覚えちゃうもんで。
母親に味方しすぎじゃないのかって?
知ってるよそんなこと。
このごまかし方が1番効く(個人調べ)
前田裕也という教師だ。
関西弁の謎多き数学教師☆
授業を受けているうちにビビッときてしまった。
そう、恋です♡
ガチで好きすぎて死ねる😇
「え、ヤバっ」「執念エグいて」などと言いながら、周りのヤツらが近づいてくる。
どこかで会話を交わしたことがあるのかもしれないが、知り合いと認識している人間はひとりたりとていない。
有名人はツラいぜ…
人と話すのあんま好きじゃないんよ
常に一方的なんでね👍
まぁまたさそってくださいよ、なんて言うもんか。
毎回行かないのにさそってくるのいいかげんやめい、としか思わん。
カラオケには、誘われて一度だけ行ってみたことがあるのだが、これまた地味に大変だ。
人間は分類される。
まずは知り合いかそれ以外か。さらに知り合いのなかで、カラオケに一緒に行ける人と行けない人に分かれたり。
これは昼飯をともにするよりハードルが高い。
それに、歌ってるやつが音痴だったときのドリンク合戦と言ったら。選曲やらトイレのタイミングやら、気をつかうところが多すぎる。
あ、こう見えて結構繊細なんですわ、あたし。
前田か。
好きなんだ、Aさん。目ぇつけてたんだけどな。
ちなみにわたしは秘密のエピソードを持っている。
もちろん前田の。
数ヶ月前、偶然英語の授業を図書室でしていたとき、
去年数学の担当だった宮田と、前田がホワイトボードを借りにきた。
「えくすきゅーずみー、きゃないゆーずでぃす、、ほわいとぼー?」と言ったのは宮田。「ハイコッチミテ~」「Excuse me~‼︎」とかいう先生を尻目にしっかり見てしまったのだ、わたしは。
宮田が生徒たちに手を振っているあいだに、手際よく張り紙を外し、さらには自分が進行方向と逆になるようにホワイトボードを持ち出していった前田を。
あと完全に憶測だが、宮田の「Can I use…」を聞く限り宮田が使いたかったのを前田に手伝ってもらっていた可能性がある。
紳士すぎる!!!!
それでいて無口。しかし会話をしていると結構笑ってくれる(自身が会話をしたことはなし)。
無敵か!!??
好きすぎて滅だわチクショー。
…いやしかしあのAさんが。
でも冗談って感じでもなかったしな。
てっきりああいうひとはもっと見目麗しい感じのが好きなのかとばかり思っていたのに。
厚ぼったい一重+セットしてない髪+毎日同じような服の前田に興味があるとは。
いや、まあそういうところもひとつ魅力だと思うけど。
…やっぱり、結ばれたいとか思うのかな。手が届きそうな感じがいい、みたいな?いやいやいや。
学生を相手にするような教師だったら好きになどなれない。
それにまあまあ彼女とかいそう。
…でもやっぱり手とか繋ぎたい?
………。
ああああとんでもないものを想像してしまった、。
うーん、学生のジレンマだな。わたしにはまだ難しい。
でも、好き?…いや。
ちょっとだけ心が弾んでいる。
職員室にいったら前田がいるかもしれないから、かな?
まあ、居ても話しかけないけど。
階段を降りて、降りて、降りる。
職員室の前ではすでに、漢字テストの補習をやっている人たちがいた。
奥の方に国語の先生もいる。名前は忘れた。
思い出した。
そっけないで有名なあの先生だ。
…あれ?名前は覚えてないな。テヘペロ☆
まあとりあえず渡されたプリントやりまして。
あ、元のテストより問題数少ないやつだ!!
ラッキー👍
なんて思いながら…
!!
いた!!
前田!!
いた、じゃない、いる!!
こっち来る!!
………え?
立ち止まったんですけど、となりで!!
何!?
ああ、なんかとなりの人を覗き込んでいる…。
かわいいよぉ!
授業中と違って声張ってないからちょっと声低い!!!
メロい、、ありがとう(涙)
まずい。となりにいるだけで顔が熱い。
体がこわばって動かせなくて、耳が火照っているのをはっきりと感じる。
想定よりあたしの体が恋に落ちている、というか。
赤いかな?バレる?
隠しきれてない関西弁、、
すき。
数学のワーク出してないんか!?
最悪だこいつ。
あたしは毎日コツコツやって期限の1週間前に出したっていうのに。
笑 っ て い る ! ! !
かわいいよぉ。
かっこいいよぉ。
心拍数が。。
トキメキが致死量です、先生。
あ、行っちゃった。
あいつ最近調子乗ってるよな。
いや。別に陰キャでいてほしいわけではないけれども。
空気読めないから向いてないぞと、思う。
次数学なんだよな。
うーん。今日の数学は落書きしないことにするか。
せっかく前田の授業だし、?
うわAさん、うっさ
え、キモ
マジか
せ、性癖。
やっぱりちょっと野蛮だよな。
ポケモン…。
解釈一致すぎる、!!
好きなんだ、、。
キーンコーンカーンコーン
キーンコーンカーンコーン
ガラッ
コツ、コツ
お辞儀かわいい
ガタ、ガタガタッ
ねむい。
われながら昼寝にもちょうど良すぎる室温だ。
こっそりクラスの空調をつかさどっているので、温度と酸素濃度はもちろん、節電にも気を使っている。
冷暖房を使うときは窓を閉め、使っていないときは思いっきり開ける。これ大事。
今回は前の授業で涼しくしておいて、今は送風にしている。
計画通り。快適そのもの。
でも。
めっちゃカレーの匂いがする。
誰か早弁しただろ!!
最悪!!
くさいクラスだと思われちゃうかもしれないじゃん!
あ、腕の血管。…。
!!??
いや、何も言ってない。
何も言ってない。大丈夫。
ああチョーク、、
赤で書くときも置かないんだ。
なんで全然手が汚れてないんだろ。
濃い筆圧も、整然と並ぶ文字も、黒板の下の方の字を書きにくそうにしているのも、全部見てしまう。
見たくないのに。いや、見たいのかな?
見ちゃダメ?…いや。
Aさんみたいにチョークがほしい、ってくらい言えたらいい?
自分の気持ちに素直になったらいい?
いや、最初っからダメだから。
全部ダメだから。
なんで、好きになっちゃったんだろう。
この気持ちが、さっさとなくなってくれればいい。
Aさんより早く冷めてしまえばいい。
そしたらきっと一切合切興味がなくなって、わたしの学校生活はもっと穏やかになる。
分かってるのに。
ちょっとだけ、捨ててしまったらもったいないと思う自分がいる。
今、世界が終わってしまったらいい。
苦しいのに満足で、不安なのに安心する。
プラスマイナス0?いや。
なんならプラス、??
もう、なんにも分からない。
でも、分からなくていい。
なにもかも、終わってしまえばいい。
やっちまった!!!!
せっかくの授業が、、。
……。
神様、いや。
先生、あのね。
世界はまだまだ終わらないみたいです。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。