春の終わりごろだった。
3年B組のドアが開く前から、教室の中はいつも通り騒がしかった。
「ハァーッ!!!俺様が今日も ____ 」
爆音。
ロケットランチャーの白煙が晴れると、床に転がる金ピカの影。
「……静かになったな」
Mr.バナナが煙を払いながら言った。
「いや静かにする方法が物騒すぎるだろ」
工具箱を抱えたMr.銀さんがため息をつく。
「被害は机二つと床材の一部ですかね」
仮面の奥から声が落ちた。
当たり前かのようにMr.マネーは被害側に含まれていない。
その時だった。
ガラッ、とドアが開いた。
青い服の教師が入ってくる。
「みんな、今日は転校生が来ているんだ」
「すまない!廊下の壁を一部壊してしまって遅れた!」
教室の横の壁が粉々だった。
銀さんが頭を抱えた。
「またですかすまない先生 …… 」
先生の後ろから、小柄な女の子が入ってきた。
金髪のショートカット。
灰色の目。
少し大きめのシャツ。
袖が余っている。
どこか眠そうで、ぼんやりした顔。
教室のざわめきが少し止まった。
「自己紹介してくれるかな?」
先生が優しく言った。
少女は少し考えてから言った。
「…… あなたです。」
それだけだった。
沈黙。
「以上かい?」
「……うん」
後ろの席が椅子ごと倒れた。
「ハァーッ!!転校生よ!俺が歓迎してやろう!」
跳ね起きたのはMr.マネーだった。
「俺は世界一の _____ 」
爆音。
煙。
床に沈むマネー。
バナナが銃口を下げた。
あなたはぼんやりその光景を見ていた。
少しだけ首を傾げた。
「……いつもこんな感じ?」
「まあな」
銀さんが言った。
「大丈夫だ、そのうち慣れるぞ」
慣れるのか、と思った。
すまない先生が言った。
「あなたは窓際の席に座ってくれ」
一番後ろ。
光が差し込む席だった。
あなたは歩いていって座った。
授業が始まった。
黒板になにかを書く音。
先生の声。
普通だった。
不思議なくらい普通だった。
昼休み。
あなたは屋上にいた。
フェンスにもたれて空を見ていた。
ポケットから細い箱を出す。
一本取り出す。
火をつける。
煙が上にのぼる。
風が少し冷たい。
「それは身体に良くありませんね」
後ろから声がした。
振り向くとMr.ブラックがいた。
いつの間にかいた。
「……先生に言う?」
「言いません」
仮面の奥の声は静かだった。
「ただ、興味があるだけです」
変な人だと思った。
煙が風に流れた。
しばらくしてブラックが言った。
「このクラスは騒がしいでしょう」
「……うん」
「ですが」
少し間があいた。
「悪くはないと思いますよ」
ブラックは去っていった。
あなたはもう一本吸った。
放課後
窓の外が赤くなっていた
帰ろうと思い立ち上がる。
その時だった
「あなた!」
振り向く
すまない先生が立っていた。
「困ったことがあったら言ってくれ」
真っ直ぐな目だった。
「君はもうこのクラスの一員だからね」
その言葉は妙にまっすぐだった
あなたは少しだけ考えた
「……うん」
小さく答え、校舎を出た
夕方の風が吹いていた
今日からここなんだと思った。
変な学校だった。
変なクラスだった。
でも
少しだけ
ほんの少しだけ
居てもいい気がした。











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。