第2話

初めましての日
37
2026/03/01 04:48 更新
春の終わりごろだった。

3年B組のドアが開く前から、教室の中はいつも通り騒がしかった。


「ハァーッ!!!俺様が今日も ____ 」


爆音。

ロケットランチャーの白煙が晴れると、床に転がる金ピカの影。


「……静かになったな」


Mr.バナナが煙を払いながら言った。


「いや静かにする方法が物騒すぎるだろ」


工具箱を抱えたMr.銀さんがため息をつく。


「被害は机二つと床材の一部ですかね」


仮面の奥から声が落ちた。

当たり前かのようにMr.マネーは被害側に含まれていない。

その時だった。

ガラッ、とドアが開いた。

青い服の教師が入ってくる。


「みんな、今日は転校生が来ているんだ」

「すまない!廊下の壁を一部壊してしまって遅れた!」


教室の横の壁が粉々だった。

銀さんが頭を抱えた。


「またですかすまない先生 …… 」


先生の後ろから、小柄な女の子が入ってきた。

金髪のショートカット。

灰色の目。

少し大きめのシャツ。

袖が余っている。

どこか眠そうで、ぼんやりした顔。

教室のざわめきが少し止まった。


「自己紹介してくれるかな?」


先生が優しく言った。

少女は少し考えてから言った。


「…… あなたです。」


それだけだった。

沈黙。


「以上かい?」

「……うん」


後ろの席が椅子ごと倒れた。


「ハァーッ!!転校生よ!俺が歓迎してやろう!」


跳ね起きたのはMr.マネーだった。


「俺は世界一の _____ 」


爆音。

煙。

床に沈むマネー。

バナナが銃口を下げた。

あなたはぼんやりその光景を見ていた。

少しだけ首を傾げた。


「……いつもこんな感じ?」

「まあな」


銀さんが言った。


「大丈夫だ、そのうち慣れるぞ」


慣れるのか、と思った。

すまない先生が言った。


「あなたは窓際の席に座ってくれ」


一番後ろ。

光が差し込む席だった。

あなたは歩いていって座った。

授業が始まった。

黒板になにかを書く音。

先生の声。

普通だった。

不思議なくらい普通だった。
昼休み。

あなたは屋上にいた。

フェンスにもたれて空を見ていた。

ポケットから細い箱を出す。

一本取り出す。

火をつける。

煙が上にのぼる。

風が少し冷たい。


「それは身体に良くありませんね」


後ろから声がした。

振り向くとMr.ブラックがいた。

いつの間にかいた。


「……先生に言う?」

「言いません」


仮面の奥の声は静かだった。


「ただ、興味があるだけです」


変な人だと思った。

煙が風に流れた。

しばらくしてブラックが言った。


「このクラスは騒がしいでしょう」

「……うん」

「ですが」


少し間があいた。


「悪くはないと思いますよ」


ブラックは去っていった。

あなたはもう一本吸った。
放課後

窓の外が赤くなっていた

帰ろうと思い立ち上がる。

その時だった


「あなた!」


振り向く

すまない先生が立っていた。


「困ったことがあったら言ってくれ」


真っ直ぐな目だった。


「君はもうこのクラスの一員だからね」


その言葉は妙にまっすぐだった

あなたは少しだけ考えた


「……うん」


小さく答え、校舎を出た

夕方の風が吹いていた

今日からここなんだと思った。

変な学校だった。

変なクラスだった。

でも

少しだけ

ほんの少しだけ

居てもいい気がした。

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