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第1話

1🎀強制連行
488
2026/01/05 19:32 更新
六本木の夜


ネオンがうるさくて、人の声も多くて、なのに――居場所がない。

あなたはスマホも見ずに歩いてた。

迷ってる自覚はあるけど、戻る気もない。
フードを深く被って、誰とも目を合わせない。

深入りしない。

期待しない。

大切にしない。

関わらない。


そう決めてきた。

大切にした人は、消えた。
敬愛してた“あの人”も、気づいたらいなくなっていた。
それが世界のルールだと、もう知ってる。

だから冷たくなる。
だから距離を取る。

――それでいいはずだった。
そんなとき






「ねぇ、そこのお嬢ちゃん♡」







軽すぎる声。
後ろから、やたら余裕のある気配がする
振り返ると、派手なスーツの男。紫がかった髪に七三分け





「こんな時間にひとり?迷子〜♡」
あなた
ん、べつに
そっけなく返して、そのまま歩こうとする。




灰谷蘭
灰谷蘭
あ、待って♡ その反応かわいくないね
一歩、距離を詰められる。

逃げ道を塞ぐ立ち位置。
あなた
(うわ、めんどくさい)
あなた
ナンパなら他あたって
灰谷蘭
灰谷蘭
残念、ちょっと違う♡
男は楽しそうに首を傾げた。
灰谷蘭
灰谷蘭
君さ、雰囲気が一般人じゃないんだよね〜♡
あなたは一瞬だけ黙って――


小さく、舌打ち。
あなた
…… 梵天か
ポロッと出た、その一言。
空気が変わった。
男の笑みが、ほんの一瞬だけ消える。
灰谷蘭
灰谷蘭
……へぇ
次の瞬間、にっこり。
灰谷蘭
灰谷蘭
それ、どこで聞いたの♡
あなた
さぁ
灰谷蘭
灰谷蘭
ふ〜ん

______ガシッ
手首を掴まれる
あなた
ちょ、はなして!!!
灰谷蘭
灰谷蘭
ちょっと一緒に来よっか♡
あなた
は?!
灰谷蘭
灰谷蘭
拒否権なーし♡
強くはない。
でも、逆らえない力。
灰谷蘭
灰谷蘭
安心して♡ 殺しはしないから 多分ね
さらっと言われて、逆に怖い。
車に押し込まれながら、あなたは思った。
あなた
(……やっぱり、こうなる)
走り出す車内。
隣で男がスマホを弄りながら言う。
灰谷蘭
灰谷蘭
首領に挨拶だね♡
あなた
首領、?
あなたは窓の外を見たまま、何も言わない。
灰谷蘭
灰谷蘭
名前は?
あなた
いわない
灰谷蘭
灰谷蘭
かわいくないなぁ♡
男は笑って、

「ま、いっか♡ そのうち全部聞くし」
なんて呟く










アジトに着く頃には、
胸の奥が、嫌な感じにざわついてた。



(まただ)








――
あの人の声が、頭の奥で響く。
あなたは、ぎゅっと拳を握った。
(今度は、何を失うんだろ)













梵天アジト





重たい扉が開いた瞬間、
空気が一段階、下がる。
コツ、コツ、と靴音を響かせながら
あなたを連れて中へ入る。
灰谷蘭
灰谷蘭
ただいま〜♡
その声に、奥から即ツッコミ。
灰谷竜胆
灰谷竜胆
……また女拾ってきたのかよ
呆れた声で現れ、腕組みして、あなたを一瞥。
灰谷竜胆
灰谷竜胆
兄貴さぁ、さすがに頻度考えろって。
ここ、保護施設じゃねぇんだけど
灰谷蘭
灰谷蘭
ひどー♡ ちゃんと理由あるもん
灰谷竜胆
灰谷竜胆
どうせ“かわいかったから”だろ
灰谷蘭
灰谷蘭
正解♡
次の瞬間。













「――ふざけんなよ」



低くて、刺すような声。
ズカズカとピンク髪の男が歩いてくる
目が合った瞬間、あなたは反射的に一歩引く。
三途春千夜
三途春千夜
おいクソ谷!!
何のつもりだ
灰谷蘭
灰谷蘭
え〜?そんな怒んなって♡
三途春千夜
三途春千夜
怒るに決まってんだろ。
一般人をアジトに連れてくるなっつってんだ
視線が、あなたに向く。
三途春千夜
三途春千夜
……お前
値踏みするみたいな目。
三途春千夜
三途春千夜
名前は
あなた
……
無言。
一瞬、空気が凍る。
三途春千夜
三途春千夜
チッ、ナメてんのか
一歩、近づかれる。
その圧に、
心臓が嫌な音を立てる。

(だいじょうぶ、慣れてる)
灰谷蘭
灰谷蘭
待って待って♡
灰谷蘭
灰谷蘭
この子さ、梵天のこと知ってた♡
だから放っとけないでしょ〜










――その一言で。
三途春千夜
三途春千夜
……は?
ピンク髪の顔色が変わる。
クラゲ頭も眉をひそめた。
三途春千夜
三途春千夜
知ってた、って……
どこまでだ
あなたは視線を逸らして、ぼそっと。
あなた
……組織。
首領が、佐野万次郎









三途春千夜
三途春千夜
――ッ
三途春千夜
三途春千夜
誰から聞いた
三途春千夜
三途春千夜
答えろ
あなた
いわない
三途春千夜
三途春千夜
……クソが
ピンク頭は舌打ちして、拳を握る。
灰谷竜胆
灰谷竜胆
兄貴、これマジでやばくね?
灰谷蘭
灰谷蘭
うん、やばいね♡
灰谷竜胆
灰谷竜胆
軽いんだよ!!
そのとき。





奥の扉が、静かに開いた。

誰も音を立ててないのに、

全員の意識がそっちに向く。




――首領。













闇に溶けるみたいに立つ、マイキー。
佐野万次郎
佐野万次郎
……その子?
一言だけで、場が完全に静まる。



紫髪が一歩前に出て、にこっと笑う。
灰谷蘭
灰谷蘭
そ♡
首領に会わせたほうがいいと思って♡
首領の視線が、あなたに刺さる。
佐野万次郎
佐野万次郎
知ってるなら――















佐野万次郎
佐野万次郎
入るか、消えるか。

どっち?
あなた
……入る
灰谷竜胆
灰谷竜胆
即決かよ
三途春千夜
三途春千夜
……チッ
三途春千夜
三途春千夜
……俺は信用しねぇからな
不機嫌そうに目を逸らして、
そう言い捨てた。

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