第32話

【鈴の神隠し】 (終)
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2019/07/23 03:02
お母さんの話によると、私とお兄ちゃんは山の中で倒れていたよう。
たまたま見つけた人がいて私たちは病院に運ばられたらしい。


お母さんは、私が行方不明になってからずっと探していたと言われた。

ニュースでは、『神隠しでは無いか。』となったぐらいだったからね!とざんざん怒られた。

何故、怒られるのだろうか。私は、謎に思いながらとりあえず謝っておいた。


しかも、行方不明だったお兄ちゃんも一緒だったのでお母さんは、パニック状態になったと看護師から聞いた。

お兄ちゃんの方が先に目を覚ましたらしい。覚まして直ぐに、お母さんからビンタをくらったらしい。
だけど、その後…強く抱きしめたと。

心配で心配で…たまらなかったんだろう。
迷惑をかける困ったお兄ちゃんでごめんね。

でも、私は知っている。行方不明になってまでお兄ちゃんが見つけたかったものを。会いたかった人を。





どこに行ってたの?と聞かれたが…私は、記憶にない。と答えた。

お母さんは、その以上なんも言わなかった。
お母さん
飲み物買ってくるわね。
朝倉 沙耶
うん。
お母さんが病室から居なくなったのを確認すると、私は早速リュウから受け取った封筒を開いた。
朝倉 沙耶
わぁ……!!し、写真だ…!
そこには、向こうで撮った写真とメッセージが入っていた。
写真の中にいるみんなの顔は笑顔だった。

ラリーナお母さんは精一杯の笑顔だった。
白い歯を見せて今でも「いひひっ!」と意地悪そうな声が聞こえてきそうだ。

そして、お兄ちゃんの頭をくしゃくしゃしていた。

お兄ちゃんは、嫌そうで…だけど嬉しそうな顔だった。


恥ずかしそうにピースしているキョーナ様にそれをレアで見つめているリュウ。

豚の変顔をしているナナと、鼻から手を出し…変顔をする私。



見ているだけで笑顔がこぼれた。

朝倉 沙耶
ははっ…いい写真。
後でお兄ちゃんも見せてやろう。
続けて、一緒に入っていたメッセージを開く。

それぞれからのメッセージが埋まっていた。
その人らしい言葉だった。

私は時間をかけて1文字1文字じっくりと眺めた。
そして、最後に……、
「また鈴の音がしたら、会いにおいで。」
と書いてあった。私は、微笑みながら頷いた。
朝倉 沙耶
うん、鈴の音がするのを待っている。


《 それから3年経った。》
私は、高校を卒業し、大学生になった。

お兄ちゃんも真面目に勉強しながらも仕事に取り組んでいる。地球にいなかった分…。



あの封筒は、大切に身近に置いてある。
封筒をお守りとして入れて出かけたりもしていた。

時々写真を見ては、お兄ちゃんと笑い話にして語り合ったもんだ。


ちょっとした大冒険。けれど私の人生を大きく変えた冒険。

拓也兄
またポテト食べているか?太るぞ
朝倉 沙耶
美味しいのが悪いし…!
拓也兄
はぁ?ポテトのせいにすんな
朝倉 沙耶
でも、タナヒの方が美味しかったかも
拓也兄
ん?あったっけ?
朝倉 沙耶
レオとナナの店にあったよぉ(ドヤッ)
拓也兄
あー、また行きてぇなぁ…
朝倉 沙耶
ま、いつか会えるよ。だってメッセージに書いてあったもん。
私は、最後のポテトを口に入れる。そして、指についた塩を舌でなめて綺麗にする。

周りは、ビルばかりだ。ちょっとは、タナヒみたいに自然を入れた方がいいと思うんだが…。

時々、ラリーナお母さんとかみんなとか…タナヒという世界が愛おしくなる。


私とお兄ちゃんの《ふるさと》。


チリン…チリンーー。

朝倉 沙耶
…ん?お兄ちゃん。
い、……今の聞こえた?
チリン…チリンチリンー。
拓也兄
あぁ、ちゃんと聞こえた。
朝倉 沙耶
来たよ!鈴の神隠し!
拓也兄
よォし!待ったれ!行くぞぉ!
朝倉 沙耶
あー!待ってや!
私達は、それを地球に帰ってきたあの日から《鈴の神隠し》と名付けた。

【鈴の音】がすれば私達は、消える。誰もが知らない私達2人だけが知っている所に行く。

周りから見たら、あらまぁ不思議。神隠しみたいだ。




だから、《鈴の神隠し》と名付けた。
先に走り出したお兄ちゃんを追いかけて私も走った。


また大きくなって…久しぶりに《ふるさと》に帰ろうじゃないか。

みんなにまた一つ成長した姿をみせてやろうじゃないか。
そして、『久しぶり。』と笑顔で言って抱きしめるんだ。






微かにタナヒの匂いがした。












色んな知っている人が、私とお兄ちゃんの名前を呼ぶ声がした。

大好きな人の優しい声がした。





私とお兄ちゃんは、元気よくあの時みたいに…子供みたいに走りながら…大きな声で答えた。









「「はぁぁぁぁああい!!!」」









〜 お ・ わ ・ り 〜

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