春の気配が忍術学園の空気にうっすらと混じり始めたある日の朝。
朝露がまだ草の上でキラキラと光っていて、鳥のさえずりさえまだどこか眠そうに響いている。
そんな時間に、あなたの下の名前はひとり訓練場の裏手にいた。
いつもなら生徒たちの元気な声が聞こえる場所も、今はまだ静まり返っている。
あなたの下の名前は、手のひらに収めた小さなお守りを見つめた。
手縫いで夜な夜な作ったそれは、少しだけ縫い目が歪んでいるけれど、どこよりも想いがこもっていた。
つぶやいた声は風にさらわれ、木々の葉のざわめきに紛れて消えた。
やがて、足音が一つ、二つ。軽やかに近づいてくる。
振り返ると、竹谷が任務の支度を済ませてこちらに向かってきていた。
いつもの笑顔、だけどどこかキリッとしていて、少しだけ、距離を感じる。
今日、彼は外の任務に出る。危険が伴うやつだ。
あなたの下の名前は俯いたまま、なかなか言葉を続けられない。
竹谷は首を傾げる。
袖からそっと、お守りを取り出した。
桜の刺繍と、ふわっと香るほのかな匂い。
それをそっと差し出すと、竹谷は目を丸くした。
竹谷は受け取ったお守りを見つめて、そっと親指で布をなぞる。
少し顔が赤い。
竹谷は顔を上げて、真っ直ぐ夢主を見た。
その目はいつもより真剣だった。
あなたの下の名前はうなずいた。
竹谷は頷いて、ポケットにそっとお守りをしまいながら、背を向ける。
でも、その背中はどこか名残惜しそうで、少し歩いたところでふと振り返った。
笑顔を交わし、竹谷は行った。
あなたの下の名前は、その背中が見えなくなるまでずっと立ち尽くしていた。
風が通り過ぎていく。彼の胸の中で、お守りが小さく揺れた。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。