前の話
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こんにちは
私は明鳴あなたです。山奥の小さな村の村長の養子です。この明鳴あなた、という名前も今の両親が付けてくれた名前です。私は親に売られた身で偶然そこにいた今の両親が買ってくれました。ここの生活は楽しくてみんな貧しいながらも幸せに暮らしていました。
私は今村の市場に来ています。
この村はみな親切で新参者の私にも親切でした。
その様な感じで暮らしていました。
…あの日までは…
ある熱帯夜、私は慌しい足音で目が覚めました。
母の焦った様な声に寝ぼけた声でそう返事をしました。
鬼――
たしか…主食が人間で、身体能力が極めて高い。
それが…今ここにいるの…?
幸い私が寝ていた部屋は一階の窓際だったためすぐに外に出られた。
とりあえず町まで逃げようとした。無我夢中で走った。
しかし、ここは山奥の村。いくら急いでも一時間半はかかる。
夏の暑さのせいで体力は凄まじい速さで減っていきます。
その時、後ろからザッザッと足音がしました。振り返ると美しい臙脂色の瞳に、真っ赤な着物を着た女性が立っていました。そう、まるで、返り血の様に…
その時、空から…まさに蝶のように女性が舞い降りてきました。そして先ほどの鬼に目にもとまらぬ速さで切りかかりました。
そう言って亞浬紗は高く飛んで見えなくなった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!