遥ちゃんはこの場所を、「山奥の地下室」と
言っていた。
だが、冷静に考えて山奥にある地下室が
ここまで綺麗に管理出来るものだろうか?
もし作れたとして、地下室ならば
もう少し小汚くなってもおかしくはないはずだ。
なのに…なぜここまで、
綺麗に保てているのだろう?
なぜ…ここまで監禁するのに都合のいい場所が
あったのだろう?
…その時。
扉の方向とは反対の方向から、やけに響く足音が
近づいてきているのが分かった。
…動悸が激しくなり、汗がダラダラと出てくる。
この状態で、遥ちゃんに見つかってしまえば…
なにも言い訳することはできないだろう。
そしたら、またわたしは──!
わたしが隠れられるような場所を探すが、あまりにも開けた空間なせいでそんな場所は存在しない。
…そうしている内にも、足音はどんどん近くに
近づいてきている。
…今は一番聞きたくなかった声が聞こえた。
足の震えが、止まらない。
もう、タイムリミットなんだ。
逃げるのは、間に合わなかった。
わたしは、せめてもの悪足掻きにまるで
何もしようとしていなかったかのように取り繕う。
ひたすら…黙り込む。
ただ…この扉の前にいる時点で、
そんな悪足掻きは通用しない。
その事は、わたしも理解していた。
遥ちゃんは、鋭い目つきで
わたしの事をじぃっと見てくる。
まるで…全てが見透かされてるような感覚だった。
遥ちゃんからの愛が、重い。
アイドルなんかより、わたし。
そう言ってもらえるのは
嬉しいようで全く嬉しくはなかった。
だって…それは、遥ちゃんが「夢を諦めちゃった」
ってことだから。
そう言うと遥ちゃんは、
コップ一杯の水をわたしに差し出してきた。
…遥ちゃんはそう言っているが、このタイミングで
水を差し出してくるなんて明らかに怪しい。
ただ、わたしが一歩後退りすると遥ちゃんは
確実にこちらへ距離を詰めてくる。
…逃げ場が、ない。
そんなわたしの悲痛な叫びも無視し、
遥ちゃんは私の口の中に強引に水を入れ込んだ。
そうしてわたしの意識は、
そこで途絶える事になるのだった…。
















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。