ずっと遠くから声が聞こえる。はっとして目を覚ますと目の前に心配そうな先生の顔があった。
どうやら図書室で倒れていたようだ。
なぜ生きている?おかしい。僕はあいつに殺されたはずなのに。心臓がどくどくと跳ね、体中に響く。あれは、夢だった…?いや、そんなはずはない。
体の中に刃物が入ったときの燃えるような感覚はまだ腹に残っている。はっとして服をめくると痩せた傷のない体がそこにはあった。
床の吐瀉物もきれいに無くなっていて掃除の跡もない。まるであの時間が全て消されたようになっている。
先生の方ではどうやら図書室で居眠りしていたことになっているらしい。
先生に急かされるまま帰路についた。
夜道は冷たい風が吹き、しんとしていた。時に揺れる森の影が不気味に見える。
統はまだ夢の中のような気分で、流れる景色も、自分の体の感覚さえも他人事のように感じられていた。
義博に殺されるまでの一連が何度も脳内で繰り返される。
こちらを見下ろしている少年。ふっと腰を落として統の目を真っ直ぐに見つめるその瞳。突き刺される右手。そして、気を失う前に見た焦ったような顔…
義博が最後に言っていた言葉。どういう意味だろうか。きっとその何かによって統は助けられたのだろう。
明日も学校はある。義博はいるのだろうか。
僕はどうすればいい?
僕はどんな顔をすればいい?
冷や汗が背筋を伝う。
明日が来るのが怖い。
しかし不思議と、学校に行きたくないとは思わなかった。
義博が何者なのか知りたかった。
義博がなぜ僕を生かしたのか、知りたかった。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。