森坂 佑麻。
高校に入学して3度目の春を迎えましたー!
いやー、留年しなくて良かった!
数学のせいで危うかったよー。
あ、ちなみに”南くん”に恋をしてから3度目の春です。
今、私の隣には────。
どんなに追いかけても届くことはない、そう思ってた大好きで仕方ない”南くん”がいる。
呆れたような声と眼差しに、私の言葉はどんどん小さくなって消えていく。
あー!なるほどね!言われてみれば!…と、南くんのツッコミに全力で頷いた私には見向きもせずスタスタと生徒玄関へ進んでいくのは、南 瀬那。
私の彼氏です。
教室までの道、スタスタと先を歩いていく南くんの後ろを必死に小走りで追いかけて教室に着いた私は、なぜか眉間にしわを寄せた茉央ちゃんによって取り調べを受けている。
朝は、今日みたいにたまに一緒に登校してくれるし、部活がない日は一緒に帰ってくれるし、メッセージも送ったらちゃんと返信くれるし、話しかけてもシカトされない。
”哀れだ”とでも言いたそうな茉央ちゃんは盛大なため息と共に爆弾を投下した。
”佑麻ちゃんは、我慢しすぎ”
そう付け足した茉央ちゃんに、静かに頷いたあと、チラッと瀬那へと視線を向ける。
言われてみれば、デートなんてした事ないな。
いや、付き合う前の誕生日の日をデートとカウントするなら…1回?
付き合ってからはそれだけで満足しちゃったって言うか、傍にいられるだけでありがたくて幸せだったって言うか……。
色々 わがまま言って、瀬那が離れていくのが嫌だったんだよね。
瀬那と付き合ってもうすぐ5ヶ月。未だにキス以上の事なんて……うわぁぁぁ!!!
(※想像して自滅しました)
手を繋いで歩く事だってほぼ無いし、キスだって瀬那の甘々スイッチ(日常的にはオフ)が、何かの拍子でオンになった時以外…してくれない。
そのスイッチがどこにあるのか、私には分からなくて…私がして欲しい時は、どうしたらいいのかな。
……頼む?
いや、無理!そんな女 キモい!無理!
自分の席に着き、早々と溜息を零していたらしい私は、
3年生になって初めての席替えで嶋中くんの隣になった。
嶋中くんとは、あれからも良き友達…って感じで、何だかんだ私たちの事も温かく見守ってくれてる…かな。
あ、ちなみに工藤くんは…押されて押されて押されまくったみたいで、1個下の彼女が出来たみたい。
自分の事みたいに喜んだ私に
「ちょっと、複雑なんだけど」
って、工藤くんは苦笑いしてたけど…きっと、彼女のこと大事に思ってると思うんだよね。
だって、耳まで真っ赤だったもん。
工藤くんの彼女かぁ。
甘々ライフなのかなぁ?…なんて。
真剣な声色で告げられたその言葉に、私は思わずフリーズしてしまう。
私を見つめながら頬杖をついている嶋中くんに慌てて私が口を開いた時には、担任にまんまと邪魔されてしまい、結局…それが本気なのか、それとも軽い冗談なのか…聞けなかった。
…ま、まさか…嶋中くんまだ私のこと想ってくれてる?
いやいや、もう5ヶ月が経つんだよ?いくらなんでも……ないか。
結局、あれから嶋中くんには何も聞けず…。
いや「もしかして、まだ私のこと想ってくれてますか?」ってどこの図々しい女だよ!
しかも、勘違いだった場合 考えてみて?最強に恥ずかしいじゃん!!
よって、瀬那にも…何も言ってない。
挙句、HR終わりに嶋中くんが近寄ってくる気配を感じてとっさに身構えちゃって…
『俺、いきなり襲ったりしないよ。』
って、笑われた挙句
『髪にゴミ、ついてる。』
って、丁寧にゴミとってくれたし。
ほんと、自意識過剰なのかもしれない私。
あー、やだやだ。
1人で葛藤を繰り広げていた私は、いきなり聞こえてきた愛しい人の声で我に返った。
ジュース買ってきて欲しかったのか!お安い御用です!
喜んで行くもんね〜♪♪
だって、今までは…「買って来て」って事が多くて一緒に…なんて初めてなんだもん。
手を引かれるがままに歩く私と、真っすぐ前だけ見据える瀬那。
自販機についた瀬那は、サッと私の手を離した。
かと思えばその手は、そのまま私の頭へと伸びて今までにないくらい優しく触れた。
そう言いながらもその手は私の頭を優しく撫でたまま。
出たよ、『ばか』と『あほ』のダブルパンチ。
油断してるつもりはないのに。
これっぽっちも…ないのに。
途中で言うのをやめた瀬那を不思議に思い首を傾げれば”何でもない”と、自販機へとお金を入れ始める。
気になるじゃん、ばか。
…なんて、強くは出れないんですけどね?えぇ。
”付き合ってんのに…”
なんだろう?
も、もしかして、もう付き合ってることに疲れた…
とか?!あ、あ、ありえる…ありえすぎる!!!
いつ愛想尽かされてもおかしくないもん。何の取り柄もない私ですから。
え?!私今 声に出てたりとかした?!
心の声…漏れてた?!
そんな言葉と一緒に、優しい顔を向けるのはズルいよ。
腹立つくらいかっこいいじゃん。
それに私のこと、理解してくれてるような…
そんな気がして嬉しくて仕方ない。
そしたら、表情だけじゃ分かりにくい瀬那の色んな面を知ることが出来るのに。
え!待って待って!!辛いって何?!
辛い。それは、辛い。
”めんどい”とか”別れたい”とか…そんなことが聞こえた日には…。
あー、立ち直る自信ない…かも。
私の顔を覗き込みながら真剣な眼差しで私を見下ろす瀬那に、胸がときめいてどうしようもないのはきっと、長い付き合いだしみんな分かってくれてると思うんだけど…。
”俺の嫉妬ばっか聞く羽目になんぞ”
それって、それって!!!
嬉しくて仕方ないじゃん。
もう、鼻の下が伸びようが垂れ下がろうが…なんなら鼻がもげたって構わない。
ジュース買いに来たんじゃないの?
私を残してスタスタと教室方向へと戻っていく瀬那の後ろ姿を必死に追いかけながら、それでも私のニヤニヤは止まらない。
そんな状態の私には、赤面しながらボソッと呟いた瀬那の言葉は聞こえてません。
さっきも一緒に自販機に行ったんだよ!って報告した私は、なぜか茉央ちゃんと黒崎ちゃんから哀れみの眼差しを向けられています。
なんで?!
何がいけないって言うんだ?!
瞬時に顔は真っ赤に染まって、言葉を発する機能は停止。
そんな私を見て”やっぱ、まだか”と、なぜか納得している2人。
な、ななななななんだって?!
キ、キス以上のことって、その…ほら…!!
当たり前とでも言わんばかりの茉央ちゃんと、恥ずかしそうな黒崎ちゃんを見て察した。
あー、私たち…キス以上のことどころか、デートもしなければ一緒に帰れる日だって手も繋がない。
キスだって、最後にしたの…いつだっけ。
もしかして、本当にラブラブとはかけ離れてたりする?
もしかして、付き合ってても私の一方通行だったりする?
……宮坂くんはともかく、山田…中々やり手じゃんか!!
…南くん…なんで?!もうすぐ5ヶ月が経とうとしてるけど、今まで一度もそんな素振りなかったよ?!
私に魅力がない、とか。あり得る。
いや、それしかない。
私の身体じゃ南くんをその気にはさせられないって事?
悲しい。いきなり現実が悲しすぎる。
脳内お花畑だった私には辛すぎる。
受け止めきれませんけどぉぉお!!!
どうしたらいいの?
どうしたら両思いになれるの?
付き合ってても片想いなんて、そんなパターン想像もしてなかった……。
そう言う2人の顔は、引きつっていて無理してる事がビシビシ伝わってくるんですが。
もう、勝手な被害妄想だろうと何だろうと関係ない!!
もし瀬那が私に微塵の魅力も感じないとしても、もし瀬那が実はお情けで私と付き合ってくれてるんだとしても、もし、もし、もし、考えたらキリがないけど。
うおぉぉおおおぉおお!!!!
頑張れ、森坂佑麻。
南 瀬那の側に居られるならば、努力は惜しみません!
𝓽𝓸 𝓫𝓮 𝓬𝓸𝓷𝓽𝓲𝓷𝓾𝓮𝓭ꕀ♡












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!