爽やかな朝です。
ケータイに瀬那から《ごめん、寝落ちした。》ってメッセージ。
たったそれだけなのに、嬉しくて仕方ないのはどうしてでしょうか。
ニヤニヤが止まらない。
電話しながら寝ちゃうなんて、可愛いところもあるんだな〜。
学校までの足取りも軽く、今日はいい事ありそう。
私よりも先に登校していた茉央ちゃんと黒崎ちゃんに挨拶をすれば、2人からも挨拶が返ってくる。
ちなみに2人の席は前後斜めで、私だけ少し離れた席なんだよね。
辛い。
ま、お昼は一緒に食べるし…移動教室も一緒だから別にいいんだけど。
隣の席は安定の嶋中くん。
授業で分からないことがあっても、すかさず教えてくれるし…悪くないかも!この席。
そう思いながら斜め右前へと視線を向ける。そこには…
瀬那の席の前にヤンキー座りでダベっている宮坂くんと、席に頬杖を付いて眠そうな瀬那。
……本当は、瀬那の隣 熱烈希望です。
見つめすぎたせいか、不意に瀬那が振り向いて目が合う。
ど、どうしよう!!
今日もすごいかっこいい!!
椅子の背もたれに顎を乗せ抱きつくような姿勢のまま、振り返った瀬那は静かに私の名前を呼んで私の挨拶に返したかと思えば、椅子から立ち上がった。
どんどん縮まる距離に、瀬那が私の席へ向かってるってやっと理解した。
そして、私の席まで来た瀬那は淡々と言葉を紡ぐ。
これでもかってくらい頷く私を見て、ふぅと一呼吸置いたあとどこか緊張したように、それでいて不機嫌そうに眉間にシワを寄せる瀬那が見えた。
瀬那の表情はとても柔らかいとは言えないのに"会える?"って言葉に、心臓が踊ってしまう。
だって!!
だって、だってそれって!!
瀬那からの初めてのお誘いなんだもん!!舞い上がるでしょ?!
……"会える?"
脳内でエンドレス再生される瀬那の声。
もし予定があったって、そんなのそっちのけで瀬那に会いに行くわ!!
ふっと笑う瀬那の余裕に魅せられて、私の顔は朝から着火ファイヤー。いや、いろんな意味で。
怒ってるとかじゃなくてただ単に赤いだけです。失敬。
ポケットに手を突っ込んだまま、軽く首を傾げる瀬那はいつもの意地悪な雰囲気をあまり感じさせない。
それどころか、なんか甘々スイッチがバッチリオンになってるような気さえする。
毎日 こうだといいのに…って、意地悪な瀬那も好きなんだけど。緩む頬と、上がる口角。
名前を呼ぶなり、私の頭へと手を伸ばし自分へと少し引き寄せた瀬那に心臓はMAXバクバク。
口から胃が出る!!胃がーー!!!(なんで胃?)
この感じはあれだよ、瀬那の甘々スイッチオンの時に発動するキス魔!!
絶対…キスされるんだよ!
でも、教室だし…着々と人集まってるし…。
それに隣 嶋中くんだし、バッチリ見てるし!
は、恥ずかしい〜!
でも、嬉しい。
もう!瀬那ってばぁ!…いいよ、私 覚悟決めた!
私は勢いよく目をつぶって瀬那からのキスを待つ。
瀬那の声がして、フワッ瀬那の匂いがした。
……あれ?!
瀬那の声で閉じていた目を開ければ、そこには涼しい顔した瀬那がいて。
キス…されなかった。
嘘…絶対キスされると思ったのに!
1人で舞い上がって目閉じたりして…恥ずかしい!恥ずかしすぎる!
何が着火ファイヤーだよ、これこそ着火ファイヤーだっつーの!!!
くないですぅぅう……
恥ずかしいぃ。
ニヤッと口角をあげる瀬那に、どうしようもないほど胸はときめいてそれと同時に、激しく恥ずかしくて。
あー、もう声にならない。
そんな私の頭をポンポンと軽く撫でた瀬那はやはり意地悪く笑ってる。
タイミング良く入って来た担任を横目で確認した瀬那はそれだけ告げると、自分の席へと早足に戻ってしまった。
顔の火照りが治まらない。
あー、きっと熱だわ。これは熱だわ。
でも、楽しみで仕方ない。
デート。瀬那と初めてのデート!!
やっふぅぅう~〜〜い!
顔文字で例えるなら
°˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖°今こんな感じ。
───────夜、
《リクエストとかないの?》
ケータイの画面とにらめっこする私が見つめるのは、珍しく瀬那から送って来たメッセージ。
最近は、私からメッセージを送って数回やり取りして寝る。
そんな感じだったから、一応 毎日 メッセージのやり取りはしてたんだけど瀬那からメッセージをくれるのは、付き合って5ヶ月経とうとしてる今でもやっぱり滅多にない。
あー、嬉しいな。
"南くん"と登録してあった名前も"瀬那"に変えた。
届く度に表示される名前に、まだ胸がドギマギする。どうしたらいいんだろう。私 慣れる日なんてずっと来ないかもしれない。
毎日 毎日 瀬那に恋をしてる。
《瀬那が楽しめる事がしたい(*´³`*) 》
行きたいところが無いわけじゃない。
ベタだけど、瀬那と遊園地にだって行きたいし、ショッピングだってしたい。
それに、お弁当持って2人でピクニックにも行きたいし…公園で体動かしたりもしたい。
ほら、ゲーセンにも!
…って、言えばキリがないんだけどさ。
でも、敢えてそれをしないのは、私に合わせてくれる瀬那じゃなくて…瀬那の行きたい場所とか好きな場所…私とやりたいこと見たいもの…
それを知りたいって思うから。
瀬那は、私とどんな事をしたいのかな?って考えただけで日曜日のデートが2倍も3倍も楽しみになるでしょ?!
《なら、俺が決めていいんだな。》
《楽しみにしてます(゚v゚*)☆》
だから、初めてのデートは瀬那におまかせします。
ふふふ、1年前は考えもしなかったけど、こうして今 瀬那の彼女でいられること…改めて幸せに思う。
はよ来い!!!日曜日〜〜〜〜!
日曜日、ついに瀬那とのデートの日。
楽しみすぎて寝られない!なんて気持ちを押し殺して、前回の反省(映画中爆睡)も踏まえて早めに就寝した昨日。
おかげで早く起きることにも成功し、気合い入れてメイクにヘアメイクも施した。
服も家を出る寸前まで悩み倒した挙句、アクティブなデートにも対応出来るように…と、今日はロゴTに膝丈の薄いビックシャツを羽織って、レースアップショートパンツを合わせた。
足元は涼しげに小花柄のサンダル。
もうすぐ初夏を感じさせる今日この頃、梅雨の時期に差し掛かってるけど、朝カーテンを開けて一番に"晴れて良かった〜!"って叫んだのは私です。
待ち合わせ場所に10分前に着いた私が見つけたのは、デニムシャツにVネックの白カットソーを合わせ、タイトめなブラックのパンツを着こなしている瀬那が建物の日陰でケータイをいじる姿。
私より先に来て、どんな気持ちで待っててくれたの?
って、もう!サイコー!
会えた喜びにプラスアルファ瀬那が私より先に待ち合わせ場所に来てくれてたなんて!
【速報】瀬那が待ち合わせ場所に私より早く到着。
って、全世界の人に通知したいくらい!
やっほぉ〜〜〜〜!
少しご立腹な様子の瀬那。いや、この顔いつものあれだ…呆れ顔!
かっこいいなぁ。
髪の毛をミニーちゃん風お団子ヘアにしている私に、そう言って、軽く突っついて遊んだ瀬那はそのまま"行くぞ"なんて歩き出すけど。
ねぇ、待って?!
これ!!ミニーちゃん風なんだよ?!パンダって!!
しかも、せめてクマちゃんとかにしてよ、パンダって…
え?!もしかして、アイメイク濃い?!
嘘……確かにいつもよりガッツリメイクだけど、そんなに濃くしたつもりないよ?
普段ほぼすっぴんだから…余計 濃く見えちゃったのかな。
デート…なのに、甘い雰囲気は一切感じられないままスタートした私たちの日曜日。
でも、やっぱり…こうして隣を歩いてる今がサイコーに幸せだから。
安い幸せと言われようと、緩む頬に嘘はつけないです。
私の歩幅に合わせて歩き出した瀬那は、私に視線を向けることもなく淡々と呟いた。
なにそれ!すごい気になるんですけど!
って、瀬那が楽しめそうな場所をどんなに必死に考えてみても…ダメだ1つも思いつかないダメな彼女でごめんなさい!!!←全力謝罪
私の声…届いてますかぁ?!って言いたくなるくらい華麗なスルーを決め込まれたのに、これっぽっちも悲しくないのはすごく気になってるのも事実だけど、着いてからのお楽しみ〜!
なーんてのも、ワクワクするじゃん?
やっぱりデートでも手も繋いで貰えない私だけど、それでもこうして隣を歩けてることがそりゃもう死ぬほど幸せで、高鳴るマイハート((
電車に揺られてもうすぐ20分。この時間も無駄にしたくない私はひたすら瀬那にウザ絡み。
そんな私を、付き合う前とほぼ変わらない冷めた眼差しで見つめ返してきた瀬那に、少しだけめげそうになるけれど。
私、元々 すごくかまってちゃんだと思うんだよね。
でも、瀬那 相手にはそんな部分を出せずに我慢ばっかりして過ごしてきたわけで。
こうして、素直にかまって欲しいと伝えたのはこれが初めてのこと。
きっと、瀬那のことだから"そういうの面倒くさい"とか言うに決まってる!
ほらね?!大正解でしょ?!
瀬那が楽しめる場所なんて思いつかないけど、瀬那の言動はほぼ読めるもんね〜!だ。
あー、ほぼ読めるなんて嘘です。
調子乗りましたごめんなさい。
そうでした、時たまこんな甘々振りかざして余裕そうな顔で微笑むのが。
ウルトラスーパーデラックスかっこいいけど、時として悪魔のような私の彼氏様です。
あれから、電車を降りた私たちは15分ほど歩いて白い綺麗な建物の中へと入った。
瀬那は私を置いて何やら受付へと行ってしまって、ここは何処だろうと辺りを見回すしかなかった私に、戻ってきた瀬那は"お前が好きなやつ。"
そう告げて、近くのドアから中庭らしきところへと出てしまった。
慌てて追いかけた私が目にしたのは、たくさん並ぶビニールハウス。
そう、私が大好きないちごが所狭しと大量に実ってました♡
どこに行くのか、どんなに聞いても教えてもらえなかった私。
なんだよ!いちご狩りかよ!
可愛い、可愛すぎる。
あー、もう!しかも、私がいちご大好きって情報も何度かサラッと話題にのぼっただけなのに、覚えててくれたなんて!!
もうかれこれ20個は食べたであろう私とは打って変わって、いちごを3個ほど口へ運んでから、何故か私の観察を始めてしまった瀬那。
そう言って、瀬那の口元へもいちごを運べば、思いのほか素直に口を開けた瀬那に笑みが零れる。
なんだ、瀬那ってばやっぱりいちご好きなんじゃん。
ニヤリと口元を緩ませた私は…。
指ごといちごを食べられ、悲鳴にも近い声をあげた。
バクバクと、高鳴る心臓を抑えながらそれでも艶っぽく笑う瀬那に、一本取られてしまった。
く、悔しい。
また私ばっかりドキドキしてる。
瀬那といちごと、私♡
絶対、待受にする!
なんなら、瀬那もお揃いで待受にしようよ!って言っちゃおうかな。
なーんて、思ってたのに。
違う違う。そうじゃ、そうじゃない。
待て待て、瀬那くん。
驚きすぎて某有名ネタ曲出てきちゃったから。
私が良くないのに、写メくらいいいじゃないか。
全然 写メに写ってくれないから、お陰様で修学旅行の時の写メが未だにロック画面なんですけど?
いいよ、今日も虚しくいちごと私♡
ショット撮ってやる。
ガキ…ガキですか、私。
嘘だけど、ここは譲らない。
私の瀬那への気持ちがいちごに負けるわけがない。
でも、いちごだって、私の中では果てしなく順位は高い。
けれど、揺るがない一番はやっぱり、間違いなく
【南 瀬那】なのである。
頬を膨らませて怒ってますアピールの私を見て、眉を下げて珍しく悲しそうな顔をする瀬那に殺されそう!!
悲しそうな顔は演技ですか!
またか!また私を無駄にときめかせた挙句、止めにそんな甘い言葉を!!!
そして、分かって聞いているその顔にまた胸は高鳴る。
でも、ニヤニヤしちゃう私に向かって『キモイ』って真顔で言うあたり、付き合う前と何も変わらない。
いや、むしろキレが増してるよね。
え?そこもいいんだけどさ?
って、今の発言はちょっとまずいか。
イタイ子みたいだ。
瀬那が好きで好きで仕方ない私と、まぁ…他の女子に比べたら好き。程度の瀬那。
そんな私たちが今こうして一緒に居られるのは紛れもなく奇跡に近い。
ずっとずっと、この幸せにどっぷりどっぷり浸かっていたいものだ。
あ、そっか。
今 心の中で話してたんだった。
なんて考えてたら、いきなり私の顔を見て、プッて吹き出した瀬那。不思議に思って顔を上げれば。
屈託のない笑顔で笑う瀬那にもう骨抜きにされる始末。
そんなにかっこいい笑顔を人前で披露しないで!瀬那のことみんな好きになっちゃう!
って言う気持ちと、
この笑顔の先にいるのは、私だもんね!
って言う優越感の狭間で…ただひたすら、瀬那に酔しれるのは私です。
思ってたんだけど、最近私を適当にあしらう技術にも磨きがかかったよね?
いや、言っちゃえば?最初から?かなり?上手で?
…あー、どうにか瀬那に勝てるものを見つけたい。それで瀬那をギャフンと言わせたい。
私の事死ぬほど好きだって言わせたい!
まぁ、そんなひがくることはないんですけどね!
気づけば、少し離れたところに瀬那の背中を見つけて自分がどんだけ妄想の世界に浸っていたかを思い知る。
大きめの声で瀬那に名前を呼ばれて、嬉しさでまた顔がほころぶ。
上手いなぁ、瀬那は。私のツボが分かってるもんね!!いよっ、日本一!
え?古い?
ジェネレーションギャップ?
やめてあげなよ、作者の歳が怪しまれるでしょ((
駆け寄った私に、瀬那が見せたのは真っ赤に色付いた形の良い綺麗ないちご。
きっと、絶対、甘いんだろうなぁ〜って思わせるソレを瀬那は親指と人差し指でつまんでいる。
そう言って、ズイッと私へと近づけた瀬那は、"どうぞ"とでも言いたげに口角を上げるから私はまたときめく。
これは、持てって事かな?それとも…このままパクッと行っちゃっていいのかな?
迷ってる私に、これでもかってくらいイチゴを勧めてくる瀬那は、心無しか楽しそう。
私は意を決してパクッと行っちゃう事にします!
どうしよう、カレカノっぽいんですけど!
イチゴめがけて1歩近づいた私の視界から、いきなりイチゴは消えて…代わりに、意地悪な顔した瀬那が現れたと思った時には。
もう瀬那は離れていた。
今起きたことを整理出来るほどの余裕も脳みそもない私と。
いつもの様に、ただ楽しそうで余裕綽綽な瀬那。
クスクスッと笑う瀬那は完全に私をからかって遊んでいる。
やっぱり現実?!
あ、また呆れた時にするため息が聞こえてきた。
だって、基本冷たい瀬那様だよ?
今 キス魔スイッチ入るポイントなんてなかったし…
パクッと唇でくわえてしまった瀬那に、思わず"ずるい!"と大声が出てしまった。
くれるって言ったくせに。
かと思えば、口を突き出してまるでそれを食べろ…とでも言うような素振りに赤くなる顔を隠しきれない。
うわぁぁぁあーー!!!瀬那があぁあ!!!積極的すぎる、甘い!おかしい!
いや、瀬那が至って落ち着いていることは言うまでもないんだけど。何ていうか…ね?!
てか今、瀬那からブチッて何か切れる音が聞こえなかった?…気の所為?
いきなり腰をグイッと抱き寄せられたかと思えば、当たり前とでも言うように重なる唇。
そして、口の中に広がるのは甘酸っぱいイチゴ。
平然と私に味の感想を求めてくる瀬那に、何も返せない。いや、サイコーでしたけど。
そのサイコーが何に対してのサイコーなのか、自分でもよく分からなくなってるからそっとしてて欲しい。
バカ。
イチゴなんて見なくても…って言うか、瀬那の事 思い出す日なんてないし!
だって、忘れたことないもん。
常に、日常の中心が瀬那だもん。
私の世界は瀬那で動いてるんだから。
何それ、何なのそれ。憎たらしい返事だな、おい。いや…本人には言えないんだけどね?
でも、そんな返事でさえ、全部 全部 宝物だもん。
あー、もう!!大好き!!!
瀬那が大好きです!神様ありがとう〜〜〜!
甘いものが苦手なくせに、いちごが好きなんて可愛い。甘酸っぱいものは好き…とか?
あー。
やっぱり、全然 勝てない。
この人を好きになってから、今まで1度も勝てた試しがない。
何も考えてないふりして、私のこといっぱいいっぱい考えてくれてて、私が楽しそうに笑ってれば、自分も楽しいなんて。
そんなの、
そんなの、好きが溢れて仕方ないじゃん………。
𝓽𝓸 𝓫𝓮 𝓬𝓸𝓷𝓽𝓲𝓷𝓾𝓮𝓭ꕀ♡
今回ちょっと長くなりましたね………。
私は外でイチャイチャするのそんな好きじゃないんですけど、皆さんは好きですか…?( ̄▽ ̄;)












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!