第69話

きっかけ
155
2023/03/26 10:00
帰るとまず飯を食べてから、自由に過ごしていた。
湊斗
なぁ、拓
風峰
ん〜?
ソファに座って録画していたアニメを観ている拓の隣に座る。
湊斗
話していいか...?
そう聞けば拓はテレビの電源を切った。
風峰
うん。いいよ
湊斗
じゃあ...
1つ深呼吸をする。あの時のことを思い出しながら話し始めた。
♦︎中学2年
中学に入って2年間の間、俺は特に拓のことを意識していなかった。「よく話しかけてくる有名な女好き」。そんな認識。
でも、2年の夏休み明け。
🚹
おい!留沼!!
湊斗
あ?
拓とは別のよく話しかけてくる奴、新川。新川は拓の仲良くしたいというような話しかけではなく、俺を嵌めたいというような感じで話しかけてくる。
新川
昨日、お前男と居たよな?
湊斗
はぁ?
教室の真ん中で周りに聞こえる声で言う。周りから視線が集まった。
新川
知らねぇオッサン。もしかして、男が好きなの?
新川のその言葉で、周りが騒がしくなる。本人である新川は、一瞬ニヤッと口角を上げていた。
風峰
おっとっと!
新川
うわっ!
新川にぶつかるように転んできたのが、拓だった。
新川
風峰!?
風峰
ごめんごめん。携帯取ろうとして
新川
いや、別にいいけど...
新川から離れた拓と目があって、何かが落ちた音が頭の中でする。
湊斗
...?......?
風峰
ていうか、知らないオッサンだっけ?
新川
き、聞いてたのか...。そうだよ。歳離れたオッサンと歩いてたんだよ。違反者じゃねぇの?w
笑っている新川を真顔で見つめて、拓は言った。
風峰
それ、親とか親戚の可能性あるじゃん
新川
そ、それは...
風峰
ま、俺達じゃ分かんないけど。本人に聞かないとな
湊斗
えっ?あっ...父親だよ
🚺
なーんだ。新川の勘違いか
🚹
騒がせやがってぇ!このこの!
新川
あ、あはは...俺の勘違いか〜...
新川は小さく舌打ちをした後、別の奴らと話していた。
湊斗
あっ...の...
風峰
ん?
歩いて行こうとする拓を引き止める。嫌がるわけでもなく振り向く。
湊斗
あり、がとう...
風峰
...?俺は思ったこと言っただけだよ☆
その時の笑顔で俺は拓に惚れたんだって気付いた。
湊斗
っていうこと
風峰
え?その時?
湊斗
うん。まぁ、人が恋するきっかけなんて些細なことだろ
風峰
うーん...まぁ、そうか。そういえば湊斗って、ちゃんと俺のこと認識はしてくれてたんだな
湊斗
そりゃあ、あんなに話しかけられたら...
風峰
俺も覚えてるよ〜。俺が話しかけて、全然会話しないの湊斗ぐらいだったもん。だから、なんとしても友達になってやる!って思ってた
湊斗
...お前ってナルシストの一面もあったんだな
風峰
えぇ!?違う違う!
顔の前で大きく手を振り否定する拓。でも、しばらくして俺の話を思い出したのか「そっかそっか...」と1人で頷いていた。
湊斗
ちなみに拓は?
ソファの上で三角座りをして、膝の上に頭を乗せ拓の方に向ける。
風峰
俺?俺は...いつの間にか?あっ!でも、きっかけは拓が酔ってた時!
湊斗
は!?
風峰
可愛いなって思ったのがきっかけ!...だと思う。って、湊斗!?
顔を下に向けていると拓が驚いた声を上げた。
あの時かよっ...
湊斗
はぁ...結局、お前の中で俺は「可愛い」なんだな
風峰
みたいだね〜
もう一度溜息を吐いてから、拓の膝に寝転がる。
風峰
ん〜?どうしたの?
湊斗
話したから疲れた。意外と力が削られた。寝る
風峰
お風呂は?
湊斗
後で
風峰
じゃあ、俺も今日は泊まりかな〜
湊斗
拓に撫でられながら、意識を手放した。

プリ小説オーディオドラマ